島田容疑者が逮捕された現場の焼け跡。民家からは少し離れている

「“火事だ! 逃げろ!”という声で飛び起きました。夜中の1時半、外には警察や消防車がたくさんいて……」

 放火現場の近隣住民が、事件当時を回想する――。

 埼玉県ときがわ町の山林に火をつけたとして、島田初夫容疑者(60)は2月13日、森林法違反の容疑で現行犯逮捕された。

「容疑者は13日午前1時半ごろ、自宅付近の山林で枯れ葉などに火をつけ、約1000平方メートルを焼きました。ときがわ町周辺では2月から不審な山林火災がほかにも6件相次いでいて、警察は現場付近を警戒していたところの犯行です」(テレビ局記者)

 調べに対し、「ライターで火をつけた」と容疑を認めており、6件中4件の放火についても関与をほのめかしている。

 容疑者の住む集落は深い山奥にあり、夜になると辺りは暗闇に包まれ、虫や鳥の鳴き声が響き渡る。

 逮捕現場となった付近は、村落はずれの高台にある神社のすぐそばで、一帯の樹木や雑草は黒く焼け焦げていた。坂を下ったところにも2月に起きた不審火による同様の燃え跡があり、容疑者の犯行と考えられている。

 冒頭の近隣住民、Aさんによると、

「夜中にもかかわらず防災無線で避難が呼びかけられて、近くの公民館に駆け込んだ人もいました。足場の悪い山の斜面なので、鎮火に手間どったのかも。おさまるまで、1時間以上かかったと思います」

自然に囲まれて育った子ども時代

 のどかな集落で突然起きた放火事件。引き起こした島田容疑者はどんな人物なのか。

 埼玉県ときがわ町で生まれ育った容疑者は、先祖代々の残した土地でずっと暮らしてきた。容疑者の幼少時代を知るBさんによると、

「小さいころはよく近所の子と鳥を捕まえたり、竹とんぼを作ったりして遊んでいました。父親は伐採などを請け負う山師で、ガンコ者でしたが20年ほど前にがんで亡くなり、母親は3年ほど前から寝たきり生活。弟もいて離れて暮らしていますが、よく実家に戻っているようです」

 昔は普通の子どもだったが、大人になると、少しずつ異変が……。

「初夫は中学を卒業してすぐ、近くの木工所に就職しました」

 そう語るのは、当時の同僚。

「彼は身長180センチほどの大柄で、力仕事は向いているはず。仲間と一緒にドライブに行ったこともありました。ただ、継続性のないやつで、仕事も2~3年で辞めてしまった。事前に相談もなく、いつの間にかいなくなっていましたね

 その後はたまに短期のアルバイトをするものの、40年間、1度も定職に就くことなく暮らしていたという容疑者。家の庭ではときがわ町の名物である柚子を栽培するなどしているが、畑仕事を手伝ったこともなく、引きこもりのような生活を送っていた。

 最近の様子はどうだったか。近所に住むCさんによると、

「買い物をしに、よく自転車を押して歩いているのを見かけました。近所の人の悪口や、“ぶっ殺してやる!”なんてひとり言をブツブツ言っていたので、怖かったです。挨拶しても返事はくれませんでした

 そのほかにも、

なぜかわかりませんが、道路の排水溝にティッシュを大量に捨てたり、ガードレールを芝刈り機でガンガン叩きつけてるのを何度か見かけた。20年くらい前に突然、行方不明になって、警察に捜索願が出されたことも。2~3日で帰ってきましたが、理由もどこへ行っていたかも謎で、とにかく奇行が目立っていましたね」(Cさん)

 怒りっぽい面もあり、

自宅から寝たきりのお母さんを怒鳴りつける声はよく聞こえていました。半年くらい前には、地域の集まりで突然キレだして、近所の人に罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけたことも。

 回覧板を渡すときや地域の清掃に参加するときなどはいたって普通なのですが、急に性格が変わってしまうので、みんな怖がっています」(同)

お寺の戸を夜中に破壊した

 さらには、物騒なエピソードも……。別の近隣住民、Dさんが明かす。

20年前に島田容疑者が戸を破壊した寺。茶色いテープで修復した跡が

20年ほど前、近所の寺の戸を木の棒で夜中に叩きつけて、ベコベコに破壊したことがあります。なんであんなことをしたのか……。

 3年ほど前には、近所に暮らす80代のおばあさんを芝刈り機を持って追いかけまわしたことも。すぐに通報されて逮捕されましたが、殺す気だったのかも……。ただ、すぐに釈放されて1週間くらいで戻ってきましたね」

 それまで近所で大きなトラブルがあったわけではなく、理由は不明。追いかけられたおばあさんは、1年前に病気で亡くなった。

島田容疑者の自宅近所には山火事予防を喚起するポスターが

容疑者の実家を尋ねると

 逮捕後には「恨みがあってやった」などと供述している容疑者だが、

ずっと引きこもって近所付き合いも皆無で、友人もいないはず。何をしたいのかわけがわかりません」(Dさん)

 と、容疑者の数々の奇行にため息をつく。

 なぜこのような事件を起こしたのか、実家にいた弟に心当たりがないか尋ねたが、

「申し訳ありません。帰ってください……」

 と繰り返すのみ。事件について寝たきりの母親は、病気のため理解できる状態ではないという。

 容疑者の家の前には、島田家の墓石が置かれている。 代々守り抜かれてきた山を燃やそうとした愚行に、先祖はきっと怒っているはずだ。