お財布と買い物アクションを見直せば、おのずとムダ遣いのポイントが見えてきます。もらったクーポンは大事にとってある。買い物には思いたったときに行く。財布には何でも詰め込み、入れっぱなし……こんな行動が貯まらない原因。見直すだけで、あなたも貯め体質に!

イラスト/赤松かおり

 お金を大切にしている人は、お財布の使い方にルールがあり、収納物の量が少なく一定しているのが共通点。逆に、貯まらない人は中身の管理ができておらずいわゆる“ブタ財布”になりがち。無計画にお金を使ってしまう傾向がある。

 「財布を見ればその人のお金への考え方がわかります。長財布、ミニ財布といった形ではなくどう使っているかが大切なんです」と話すのは、年間約200人の家計相談に乗るファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さん。

 財布の使い方を見直したいときは、まずは中身を全部出してみる、リセット法をおすすめする。

自分の価値観を知って無理なく貯める

 貯まらない原因は、計画なしに、お金を“なんとなく”使っているから。そこから脱するためにはまず、2、3か月分の支出を記録してみよう。そのうえで何にいくらまで使えるのかの「予算」を立てる。

「“予算”と聞くとつい他人の家計を参考にしがちですが、これは絶対にNG。“外食が息抜き”“旅行だけは豪華に、ほかは質素でOK”など、価値観は人それぞれ。自分に合った予算でなければ長く続きません。貯まる人は“自分が大切にしたいもの”や“やりたいこと”がわかっているのです」

 予算立てした結果、収入をオーバーする場合は見直しを。

「数千円の細かな努力より、まずはスマホ代や保険といった、固定費の大きい枠から削ることが鉄則です」

 どうしても予算以上のお金を使ってしまうなら、現金管理にしてみること。

「“お財布に入れた以上のお金を使わない”と決めて、1度現金主義に変えてみると、お金の減る速度がわかります。守るべき予算がお財布の中だけで完結するので、シンプルですよね」

 まずお財布から、お金が貯まる新習慣を始めてみよう。

『貯まる人のお財布ルール&ルーティン』

●自分のその日の行動と財布の中身を把握する
 貯まる人の財布に入っているのは、予算内の現金やよく使うカード、ポイントカードだけ。レシートはためずに取り出してチェックを。

●現金かキャッシュレスかのすみ分けをする
 予算枠をしっかり決めて、その金額だけをお財布に入れれば管理がしやすい。キャッシュレス決済の欠点は、使ってすぐに銀行残高から減らないこと。貯まる人は、残金がわかるチャージ型のキャッシュレス決済を選ぶなど、出費を把握できている。

●貯める目的を視覚でイメージする
 貯まる人は“何のためにお金を貯めているか”を常に意識できている。マイホームのためなら理想の家の写真など、「貯金の目的」を財布に入れておくと、衝動買いのストッパーに。

●思い入れのある好きな財布を使う
 財布の扱い方は、お金への向き合い方の表れ。財布を大事にしているということは、お金を大事にしているということ。気に入った財布なら、自然と大切にできる。

『貯まる人のお買い物ルーティン』

 貯まる人のお買い物習慣には、節約効果だけではなく、“家事ラク”効果も。見逃せません!

(1)曜日でメニューを決める……あらかじめ「月曜は魚、火曜日は肉、水曜日は麺類」などざっくり料理ジャンルを決めておくと、買い物に必要なものもわかりやすく、献立作りもラク。
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(2)買い物は週に1回……買い物は回数が少ないほど出費は減る。買い物回数を減らせるなら、多少商品単価が高くても、ネットスーパーを使ったほうがお得なことも。
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 (3)メモは必ず!……なんとなく買い物に行くのは買いすぎのもと。できる範囲で献立を決め、必要なものをメモして買い物に行くと、ムダ買いを防げる。
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(4)空腹時は行かない……お腹がすいていると、「今、自分が食べたいもの」をカゴに入れてしまう。「食べなくていいもの」を買ってムダ遣いをし、さらにはダイエットにも悪影響が……。
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(5)高いものから買っていく……野菜売り場から回ると「あれもこれも安い」と手に取りがち。単価が高い肉を先にカゴに入れると、後で安い野菜を見ても買いすぎなくなる。
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(6)旬のものを買う……野菜や魚は、旬のものがいちばん安く、美味しい。健康的な食生活を送りつつ、食費を無理なく減らす秘訣。
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(7)会計でもらったクーポンは捨てる……クーポンはたいてい使わないか、使うために余計な買い物をしがち。思い切ってその場で捨てよう。
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(8)買い足しのときはカゴを持たない……牛乳や卵が切れて、予定外の買い物へ。そんなときは、カゴは持たずに目標の商品へ直行! 手に持てなければ余計なものは買わない。

“ラク”になるルールで我慢しない家計管理

 「貯まる人は、買い物でも行動が違います」と塚越さん。

 例えば、上記のルーティンにあげた「高いものから買っていく」。これは、単価が安いものを最初に買い物カゴに入れていくと、最終的に買いすぎてしまうから。百円均一で予定外のものを買ってしまうのと同じ心理だ。

 一方、先に値段が高いものを手に取ると、「もうこんな高いものを買ったのだから」と、後の買い物が自然と抑制されるという。これには家事ラク効果も。

普段の献立の中で値段の高いものは肉。肉の種類で主菜が決まることが多いので、この買い物順だと、副菜のイメージがしやすく、献立も決めやすいんです

 同じ曜日に買い物に行き、「保存がきかないものから使う」ルールで、週の献立が立てやすくなる。

「例えば、わが家は日曜にまとめ買いをしますが、そうすると月曜はお魚メニューになるんです。その次に肉、そして麺の日などを組み合わせています。こういったルーティンがあると、無駄な買い物が減ります。予算感覚も身につければ、細かい家計簿なしで貯まる家計になり、管理がラクになりますよ

【今すぐできる! FP塚越流】
貯め財布のつくり方

〜まずは全部出してみよう〜

「家計改善のために、手っ取り早くできるアクション」として塚越さんがおすすめするのが、財布に入っているものを全部出すことだ。中身を出したら観察してみよう。「ここがすり切れているから、これが主力のカード」「ここは出しにくいから見ない」など、気づくことがあるはず。 

 たくさんあるポイントカードの断捨離は、ポイントのお得度を見える化すると取捨選択が楽になる。

「貯まったポイントを家計簿の『収入』に書くと、お得度を実感できます」

 左の『整理すべきもの』をチェックして“1軍”だけを、再びお財布へ。

 気負わず、1度やめてみるといったお試し精神も大切。なくて困ったら戻せばいいと思うとハードルが下がる。そして使用頻度が高いものを、いちばん出しやすい位置に。

「管理しやすく使いやすいことが大事。お金の管理は、何事もおっくうにしないことが大事です」

●ポイントカード
持つのは、よく行く店だけ。ポイントはおまけであると考え、無理な買い物をせず、自然に貯まるものを厳選。
●クレジットカード
「本当にこのカードでないといけないか」を再考。解約時は、作ったときの自分を責めず、「このカードはもう私にふさわしくない」と考えて。
●古いお守りetc.
お札や小銭は、多くの人の手を巡るもの。そのお金が出入りする場所にお守りなどを入れておくと、汚れてしまう。基本はお財布の外で管理を。
●小遣い
生活費を妻が管理している場合、妻の小遣いを決めていない人も多い。「食費枠にして意外と使っているケースがあり、まずは把握を」

塚越菜々子さん●ファイナンシャルプランナー。自身も働く2児の母であり、「働くママのお金の不安を解消したい」と、お金の教養教室「ママスマ・マネー」を主宰。公式サイトやYouTubeで情報を発信。著書に『書けば貯まる! 共働きにピッタリな一生モノの家計管理』(翔泳社)。https://mamasuma.com/

2000万円貯めた!
りさぱんさんの財布とは

診察券などは、必要な日だけ、出かける前に財布にイン。ポイントカードは必要以上作らない。レシートは支出を記録し、2週に1回は捨てる。買い物の回数が少ないのであまりたまらない。

 結婚後に貯蓄を始めて5年目、30代半ばで2000万円に達したりさぱんさん。

 使っている長財布には日常の中でよく使うものを厳選して入れている。支払いはキャッシュレス派で、支出はレシートを必ずもらうことで把握。家計簿は細かくつけず、費目は「食費」「日用品」「子育て費」「外食費」「ガソリン代」の5つ、金額だけを記載。

「予算は5つの費目あわせて4万5千円。それぞれ週割りにせず、1か月その予算内に収まればOKとしています」

 “ざっくり管理”でも毎月予算内に収まる秘訣は、買い方にある。

「買い物に行くのは、週1回。行く前には必ず欲しいものだけをメモします。そのうえで、子どもを連れて、歩いてスーパーに向かい、手で持って帰れるだけの量を買うことをルールにしています」

 予算を守らなきゃとストレスがたまらない?

「時には家族で外食を楽しんだり息抜きはしています。コロナ禍で外食が難しかったときは、コンビニで大好きなケーキを買うなど自分へのご褒美も。また、大きな買い物をするときは、必ずネットで値段をじっくり比較します。比較している間に1年以上たってしまうことも(笑)」 将来の目標は、50歳までに9000万円貯めての“FIRE(ファイア)”。資産運用と節約で経済的に自立した早期リタイアの形で、欧米を中心に人気の将来設計。明確な夢こそが貯蓄の原動力だ。

〜やっぱり貯まる財布・買い物アクション〜
思い入れのある財布
新婚旅行のときに夫が買ってくれた財布を大切に使っている。思い出のある財布だから手入れも行き届いて、5年使ってもピカピカ!
財布の中身を把握
クレジットカードやポイントカードは、持っている目的や理由が明確。レシートの整理は2週に1度だが、買い物が週1回なので、最大でも4~5枚程度。
買い物は週1回
週1回の買い物以外に、牛乳や卵など切らしたものを買うときは、それ以外のものを買わないよう、あえてコンビニへ行くことも。


【PROFILE】りさぱんさん 30代前半。夫、3歳の子どもと暮らすフルタイム勤務のワーママ。“テキトー家計管理”で結婚から5年で貯金0から資産2000万円を達成。そのやりくり術やお金についての情報をインスタで発信している。インスタアカウントは@risapan_money

年100万円貯まった!
eriさんの財布とは

イオンのクレジットカードはポイント用。支払いには使わない。クーポンは、よく行くスーパーに併設されているドラッグストアのもの。dポイントは貯まる店が多いので財布にイン。

 年100万円を貯めるeriさんのミニ財布には、週予算8000円の現金、クレジットカード1枚、クーポン1枚、ポイントカード1枚のみ。この状態は、実は過去の失敗からたどりついたもの。

「出産前は、アパレル関連企業で働いていたこともあり、服飾費が多めに。『定期積立をしているからいいか』と油断して、ついつい買いすぎていました」

 さらに、独身時代にクレジットカードを使いすぎて支払いが大変になったことも。その経験から、今では現金派に。“クレジットカードのポイントで得られる1%、3%”よりも、カードを使いすぎて失うお金のほうが大きいと実感している。

 1か月分をまとめておろして週ごとに分けて管理。キャッシュカードは財布に入れない。これも衝動買い防止策。

「欲しいものがあっても、いったん帰宅しなければならない。その間に冷静になって、結局買わないほうが多いです」

 eriさんが貯金に目覚めたのは、第2子妊娠中のこと。

「夫が転職し、収入が下がって手取り月16万円になったことがきっかけです。当時、計算したところ、食費に使える金額は月2万円。夫婦と子ども1人ではとても足りる額でなく、削れるものを考え、予算を調整していきました」

 eriさんが削ったのは、あまり使っていなかった家のWi-Fi。「固定回線はあるのが当たり前」と思っていたが、その考えを見直した。加えて、携帯プランも安いものに変更。その経験から、eriさんは、節約に大切なのは、「いくら使えるか」の枠、つまり予算を決めることだと話す。

「そのやりくりをインスタで公開したところ、フォロワーが増加して、副業&収入アップにもつながりました。夫の年収はアップしたものの、生活水準をあげないままにして、収入が増えた分、貯蓄に回しています」 経験や失敗から自分のクセを知り、年収低下のピンチにも前向きに取り組む。柔軟な対応力は“貯め体質”になる秘訣なのかもしれない。

〜やっぱり貯まる 財布・買い物アクション〜
●中身を整理し、ミニ財布に
家計管理を始めてから財布を整理し、長財布からミニ財布に。レシートは次の買い物までに家計簿につけ、必ず捨てる。
●超現金主義
「現金管理が向いている」と強く自覚しているeriさん。目で見て増減がわかるのが、現金の強み。
●ざっくり買い物リストを作る
だいたい献立を考え、ざっくりと買い物リストを作るものの、買う予定のものが予想以上に高かったらその場で変更。ここでも柔軟性が大切。


【PROFILE】eriさん●30代半ば。夫、6歳、4歳の子どもと暮らす。手取り26万円で年100万円貯蓄するやりくり術に加え、持ちすぎない暮らしを発信するインスタアカウントはフォロワー数6.1万人。インスタアカウントは@ie__y

取材・文/仲川僚子 イラスト/赤松かおり