ファミリーマート「お母さん食堂」のキャラクター・慎吾ママ、妻で小雪のことを「嫁」と表現した松山ケンイチ、「はだいろ」はベージュやペールオレンジに変更

 大手コンビニチェーンの「ファミリーマート」から「はだいろ」の下着が回収され、大手化粧品メーカーの花王からは「美白」表現が禁止。東京ディズニーのアナウンスは男女関係なく「ハローエブリワン」に変更。反応が過敏すぎる気がするけれど──。そこで週刊女性は最近問題視された表現規制について男女1000人に意見を聞きました!

「言葉狩り」とは?

「お母さん食堂に文句をつけている人はどうしたいんでしょうか。性別をなくすのが目的ですか?」(20代・会社員・女性)

 昨今の表現規制についてのアンケートで「問題なし」と答えた女性の回答だ。

 表現の過剰規制が浮き彫りになっている。

 約70年の歴史があるおもちゃ「ミスター・ポテトヘッド」から「ミスター」をはずすと発売元が発表。ファミリーマートは女性用下着から「はだいろ」表記を排除。俳優の松山ケンイチは妻で女優の小雪のことを「嫁」と呼び炎上。これらはすべて今年の3月に起きた出来事である。

 そこで週刊女性は16歳から80歳までの男女1000人を対象に、表現規制についてアンケートを行い、実際に問題になった表現について話を聞いた。

Q1.配偶者の呼び方、理想は?

→→→「夫・妻」が圧倒的1位

「嫁」呼びされた小雪だが、年下夫の松ケンのことを立てて大切にしているとか

 俳優の松山ケンイチが『火曜サプライズ』(日本テレビ系)に出演した際に「髪が伸びたときには自分で切ったり、嫁に切ってもらっている」と発言したところ、批判の声が寄せられたことがニュースになった。では一体どう呼ぶのが理想なの? 

 1位だったのは、「夫」、「妻」呼び。

「普通に夫、妻でよくないですか? 奥さんっていうのは引っ込んでいる感じがするし、旦那っていうのも下品な感じで」(50代・主婦)、「自分は妻と呼びます。嫁というのは関西芸人のイメージが強いので使いたくない」(30代・会社員男性)

「嫁」呼びは関西芸人の文化という意見が多く、嫌悪の声が寄せられた。

 一方で松山ケンイチに関しては擁護の声が多く、「自分は嫁呼びしませんけど、よその家庭に口を出す気はない。松山さんの嫁呼びを非難できるのは小雪さんだけ。お2人が幸せならいいじゃないですか」(30代・男性会社員)、「松ケンに嫁呼びされても何も思わない。松山さんの嫁呼びからは小雪さんを下に見ている感じもしないし」(30代・主婦)

 どう呼ぼうが、発言者と呼ばれた本人が差別と思わなければ他人がどうこう言うことではない、との意見が圧倒的だった。

 とりあえず夫、妻と呼ぶのが無難かも。

1000人に聞きました
配偶者の呼び方、理想は?

〜男性への呼び方〜
1位    夫    479人
2位    旦那    211人
3位    主人    184人
4位    その他    126人

〜女性への呼び方〜
1位    妻    384人
2位    奥さん    292人
3位    その他    182人
4位    嫁    142人

Q2.「はだいろ」は差別?

→→→「差別」回答が多数!

 大手コンビニチェーンの『ファミリーマート』が3月から全国で販売を始めたプライベートブランドの女性用下着で、色の表記に不適切な表現があったとして、自主回収した。

 不適切な表現とは「はだいろ」のこと。人種や個人などで肌の色が異なるのに、特定の色を「はだいろ」とすることは不適切という声が寄せられたことからだった。結局「ベージュ」に変更したという。

大手文具メーカーでは'00年には「はだいろ」表記をなくし、「ペールオレンジ」か「うすだいだいいろ」に変更している

 このニュースを1000人はどう見た? 差別だと思うと答えた人は548人。

「10年以上前からクレヨンなどのはだいろは《ペールオレンジ》に変わっています。なんで今更ぶり返すのか。私は純日本人ですが褐色肌で小さいころにからかわれていたので」(50代・主婦)、「今の子どもたちにはだいろが浸透していないのに、なぜまたはだいろを復活させるんですか?」(30代・主婦)

 と、「子どもに多角的な目線でものを見てほしい」との理由からはだいろ排除の声が多かった。

 一方で差別ではないという人たちの意見は、「はだいろの何が悪いんですか? 日本人の黄色人種という肌の色を誇りに思ってほしい」(50代・会社員男性)、「はだいろで覚えているし、普通に言ってしまう。ペールオレンジなんて面倒な言い方を定着させるのはエゴ」(60代・無職男性)

 肌の色は十人十色。それによって差別が起きることは言語道断。

Q3.「美白」はダメ?

→→→「ダメじゃない」が過半数

 大手化粧品メーカーの花王は、米国で起こった黒人差別への抗議運動を受け、外資メーカーが肌の色による優劣を連想させる「ホワイトニング」などの表記を取りやめた。

 これに対して美白は差別じゃないと考える人が多く、「美白目指して頑張っているのに今更取り上げる?」(20代・会社員女性)、「さんざん美白をあおっておいて今更。そもそも中間色の日本人だからこそできる表現では?」(40代・主婦)

 一方で差別を感じる人の意見は、「美の基準は自分で決めたい。美白といわれても」(30代・主婦)、「自分は茶色っぽい肌の女性が好みなので美白推しは嫌でした」(40代・会社員男性)

 みなそれぞれの好みがあるから一方的な押しつけはNGということ?

Q4.「お母さん食堂」問題アリ?

→→→圧倒的に「問題なし!」

'00年の流行語大賞をとるなど大人気キャラだった「慎吾ママ」。20年の時を経てお母さんとなり戻ってきた姿に感動した視聴者も多いのだが、まさか騒動になるとは

 兵庫、京都、岡山の女子高校生が、ファミリーマートの『お母さん食堂』というブランド名に疑問を抱き、オンライン署名を呼びかけた。

「お母さん食堂という名前は、誰もが料理をするのはお母さんという印象を与え、女性=家事・育児という固定観念を払拭する妨げになる。男女双方にとって生きやすい社会にならない」と主張。

 お母さん食堂のイメージキャラクターは男性の香取慎吾さん。大人気キャラクターだった慎吾ママも批判の対象なのだろうか。

「あのー、これ香取慎吾さんがお母さんやっているんですけど。男性芸能人がお母さんの役割を演じている、十分すぎる配慮がされています」(40代・会社員女性)

「これを批判する人は慎吾ママも批判したんですか? 慎吾ちゃんが演じているんだから男でも女でもお母さん、ってことをファミマさんは言ってることがわからないのですか?」(30代・主婦)

このCMで不快になる人が信じられません。慎吾ママが年月を経てお母さんになって、って歴史を感じる素晴らしい演出でした。抗議をした女子高生たちはお父さん食堂なら満足したんですか? 差別を訴える人が差別をしている構図に気づいていない」(50代・主婦)

 お母さん食堂は香取慎吾さんのキャラクターもあって、ジェンダーを超えた評価を得ていた。少数派の問題ありと答えた人の意見を聞くと、

「お母さんがいない人だっているのに、お母さんを温かい象徴としてあがめるのはどうかと思います」(20代・パート男性)

「慎吾ママとは違って、お母さんにプラスされて食堂がついているのがいかがなものかと」(10代・女子学生)

 過剰な気がするけれど──。

かにもあった! 行きすぎ? 表現規制

CASE(1)
「レディース エンド ジェントルメン」排除(東京ディズニーランド・シー)
 
 オリエンタルランドは3月、園内アナウンスを改めた。それまでの「レディース・エンド・ジェントルメン、ボーイズ・エンド・ガールズ」から「ハロー・エブリワン」と性別を特定しないようにした(日本航空は’20年10月から機内や空港で同様に呼びかけている)。

CASE(2)
「主人」、「旦那」排除
(育児雑誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』(ベネッセコーポレーション)(育児雑誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』(ベネッセコーポレーション)

 '16年ごろから「主人」「旦那」は親の上下関係を想起させるため、原則として使わないという方針を定めた。また、子連れの再婚家族や同性カップルなど、家族の多様性を反映し、「配偶者」や「パートナー」と表記しているという。

「表現規制」の背景

 性差別の問題に詳しい作家の伏見憲明さんは、過剰な表現規制の背景を解説する。

ジェンダー問題に詳しい作家の伏見憲明さん

フェミニストやポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)の声が大きくなった背景には、日本が経済的な繁栄を失いつつある状況が影響していると思います。

 パイの実が小さくなれば、平等な分け前を求める政治が前景化してきます。

 ジェンダーギャップ指数(世界男女格差指数)において日本は120位と低い位置にあって、当然、改善すべき点は多いわけです。

 ただ、これまで女性の社会進出が進まなかった理由は、因循な男社会の問題だけでなく、女性たちも必ずしもそれを望まなかったことにもあると思う。

 つまり女性たちの選択もそこに反映しているといえなくもない」

 行きすぎた言葉狩りについて伏見さんは「お母さん食堂」の例を挙げる。

女性に母親の役割だけを求めるのは問題かもしれませんが、別に家事労働や育児が劣った役割だということはありません。

 本当に差別のない社会を実現するには、女性がお母さんの役割を担うこと自体を否定するのではなく、それ以外のありようを応援し、多様な生き方を肯定的に表現していくことしかありません。

 じゃないと、例えば、映画で専業主婦を描くことも、母として一生をまっとうした女性を小説の主人公にすることも、差別だー! と禁じなければならなくなってしまう。

 それに『お母さん食堂』は男性の香取慎吾さんをお母さん役にして、母親っていうのは男が担ってもいい『役割』なんだ、というメッセージまで込めているんだから、まったくもって素晴らしいじゃないですか

 と、伏見さんは「お母さん食堂」を擁護する。

「男女差別がなくなったら女性は社会進出するはずだ、というのも疑わしいところがあってね、企業で活躍したり、政治の世界で力をもったりすることを好まない人だって少なくないんじゃないですか。

 女性だけでなく、男性だって。ぼくなんてね、お金があったら、そもそも働きたくないし、家事とかはお手伝いさんを雇ってお願いしたいもの。もし金持ちの家のお嬢様に生まれていれば、子育てだって、昔みたいに乳母にお願いしてしまうかもしれない(笑)。

 みんなが社会で働きたいはずだという考えは、エリート男性や勉強が得意な女性たちの感受性が反映された『思想』かもしれないよね

 差別をなくすために差別が生まれることがあってはならない。