休業支援金、給付金はパートの人も受け取れるので申請を忘れずに!(画像はイメージです)

「コロナで大幅にシフトが減らされたパート・アルバイトの女性は103万人にのぼります。その中で休業支援金の存在を知っている方はわずか1割(「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の申請・受給状況調べ)。多くの人がもらえるお金を受け取っていないのです。試食販売員だった女性はそれで100万円を手にしました。一部の申請期間の締め切りは7月いっぱい。今からでも遅くありません。急いでください!」

 と、立憲民主党の山井和則議員が注意喚起をする。

 コロナ禍で女性の非正規雇用が厳しくなる《女性不況》が鮮明になっている。野村総合研究所は、パート・アルバイト従業員のうち、《シフト勤務が5割以上減少》かつ《休業手当を受け取れていない》人を《実質失業者》と呼び、調査したところ2月時点で103万人と昨年の90万人から13万人増えていると推計している。

立憲民主党の山井和則議員「ひとりでも多くの女性が救われますように!」

「これがどういうことかわかりますか? 困窮している家庭がこれだけ多いということです。今は共働きで家計を支える世帯が主流です。お母さんが働けなくなったら? 女性不況は消費や経済全体の停滞につながるおそれがあるんです! みなさん、ぜひ申請してください!」(山井議員)

 山井議員が言及した「休業支援金」というのは、新型コロナウイルス感染が広がっている中で、勤務先が休業した場合の賃金補償で、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(以下、コロナ給付金)のことだ。

 会社が休業して働けなかった人だけでなく、時短営業などで勤務時間が短くなった人やシフトに入る日数が減少した人も対象だ。企業が休業手当を支払えない場合、国が支援金として支給し、1日1万1千円が上限となる。

調べるのは大変、でもあきらめないで

 ただ、申請といってもどこに? 会社に? 国に? 必要な書類は?など、面倒な手続きが浮かんで二の足を踏んでしまっていませんか?

「休業支援金の説明は本当にわかりづらく書かれています。自分は調べごとが好きなので、たどり着けましたが、ホームページを見て断念してしまう人は多いと思います。それが狙いなのかなと思ってしまいます」

 そう話すのは、たったひとりで制度を変え、大企業の非正規雇用労働者にも休業支援金の権利を勝ち取った町田洋子さん(30代・仮名)。

 当初、大企業と中小企業では支給条件が違っており、国から支給されるコロナ給付金の対象として、大企業の非正規雇用でシフト制の労働者ははずれていた。

 しかし、町田さんがストライキをするなど、問題提起をしてきた。たったひとりの女性の行動が、制度を変えたのだ。

時短要請や休業などで飲食店は従業員の稼働人数を大きく減らすところも(画像はイメージです)

社員には休業時でも給与が支払われていた

 町田さんは、大手外食チェーン店のパート従業員。週4~5日、5時間勤務で月給10万円。夫と2人の未就学児との4人家族だ。

「私の給与は生活費に充てていたので、この10万円がなくなるのは家計にとって大きな痛手でした。子どもに習い事をさせる余裕はもともとないような暮らしで、私の給与は食費、靴、本などの購入に充てていました」(町田さん)

 勤務は3年目になるところだった。コロナで昨年4月、5月の2か月間がまるまる休業に。しかし、勤務先は「店舗が入っている商業施設が閉まったことが理由の休業について責任は会社にない」と説明されたという。

「社員は休業時の給与の満額が支払われました。会社からの補償は諦めて、国が支払うコロナ給付金を調べましたが、中小企業が対象で、経済的に余力のある大企業は適用されない(現在は大企業も適用している)と知り、途方に暮れましたね」

 そこから町田さんは、労働系のユニオンに連絡し、自ら動いた。

「以来、会社と個人で連絡をとっていないので、会社の担当者に暴言を吐かれたりというようなことはなかったです」

 1月26日、大企業のシフト制となっている非正規の労働者は支給対象外だった点は衆議院予算委員会でも問題となり、首都圏青年ユニオンの飲食業分会「飲食店ユニオン」が菅義偉総理、田村憲久厚労大臣と面会。改善を要請した。その結果、厚生労働省は2月26日、プレスリリースを公表。大企業のシフト制の非正規雇用の労働者も、支給対象となるとした。

「おかしいことはおかしいと言おう。コロナ禍でそう思うようになりました」(町田さん)

申請の流れと必要なもの

支給要件確認書をインターネットからダウンロードする方法。なお、ハローワークでも用紙がもらえる

 申請方法はオンラインと郵送の2種類がある。ネットでの申請方法はわかりにくいのも事実だ。首都圏青年ユニオンの尾林哲矢事務局次長は「休業支援金は基本的には、会社による休業手当の最低限の水準よりも高いものになっています。ぜひ利用してほしいです。その際に会社の協力が必要になります。協力が得られない場合でも、給与明細などを集めて申請すれば、支給対象になる可能性があります。諦めずに申請してほしい」と話す。

 申請は個人で行うものだが、会社に協力を求めるという形だ。そして、最低限必要なものを用意しなければならない。

「制度上は、会社が労働者分をまとめて申請することもできますが、ほとんどの企業はしていません。そのため、労働者が個別に申請することになります。まずは『支給要件確認書』を用意します。厚労省のHPからダウンロードをします。もしくは、ハローワークの窓口で用紙をもらってください。『確認書』は労使で協力して作る必要があります。会社には『事業主記載欄』の箇所を書いてほしいとお願いする必要があります。

 労働者側が用意するものは、休業前6か月の給与明細と休業した期間の給与明細です」(尾林氏、以下同)

シフト削減は「休業と同じ」と国が認めています

 会社側が協力的なら、書類を書いて提出すればよい。一方、会社側が協力的ではない場合もある。

「事務的に大変ということで会社側が協力しない場合があります。例えば、シフト制の場合、シフトを減らしただけで休業ではないと考えて、『休業と認めて確認書を書くことはできない』という場合もあるようです。

 もし、労働者が申請をすると、会社が『休業手当を払っていないんじゃないか』と指導を受けるのでは?と誤解しているケースもあります。ハラスメントとして協力しないケースはまだ報告はありませんが、今後は考えうるのではないでしょうか」

 会社が誤解している場合、まず、労働者側が説明をする必要がある。

「厚労省のHPにある『10月30日公表リーフレット』が参考になります。シフト削減の場合も「休業」にあたると書いています。それを見せるといいです」

厚生労働省が公表している『10月30日公表リーフレット』シフト削減も休業と記載が

 それでも会社が書類を書いてくれない場合はどうしたらいいの?

「どうしても会社から協力を得られない場合は、その旨を「確認書」に書きます。もしくは、会社の対応を書きます。そのまま労働局に提出します。協力を得られた場合はすぐに支給決定となりますが、協力を得られない場合は労働局が会社を説得します。その分、時間がかかってしまいます」

申請は7月いっぱい、早めに動きましょう

 ただし、個人で交渉するとなると、苦手な場合はどうすればいいか。

「会社内の労働組合か、組合に入っていない場合は(首都圏青年ユニオンの飲食業分会である)『飲食店ユニオン』などを頼っていただきたい。相談のうえ、書類作成のアドバイス、会社への交渉をすることもできます。団体交渉となった場合は、企業は断ることができません。個人で交渉するよりは効果があります。ただ、個人での交渉がいちばん早いですね」

 申請の際に気をつけることはあるのか。

「金額は、休業前の8割が支給されます。休業前6か月のうち、給与の設定が高い3か月分を労働者側が選び、全部足して、3か月間の出勤日数で割り、日額を出します。休業月の休業期間の日数分が支払われます。労働日ではなく、出勤日数ごとに支払われます。単純に休業前3か月分としてしまうと、支給額が減ってしまうことがあるので気をつけましょう」

 休業支援金・給付金の申請は7月いっぱい。早めに会社と交渉をすることだ。新型コロナ感染拡大で生活に不安が生じている人も多いだろうが、その1つが解消できるだけでも安心だ。