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 地域ごとに人の性質や行動に傾向が出る県民性。お金についても意外だったり、納得できる県民性がハッキリ! 人気のお金ランキングを発表します!

ランキングを比較すると、今の県民性だけでなく、産業や歴史に基づく地域の特色などが読み取れます」と語るのは都道府県別ランキングを運営している久保さん。

 単なる数字ではなく、人口比と相関係数、このふたつの切り口からあらゆるジャンルのランキングを分析している久保さん。彼ならではの解説とともにランキングを見てみると、新たな県民性の発見がある。

教えてくれたのは……●久保哲朗さん●統計ジャーナリスト。東京大学卒業。統計とデータベースを組み合わせて新たな情報を発信しつつ雑誌やwebにも寄稿。統計に関する単行本も多数出版。都道府県別統計とランキングで見る県民性「とどラン」、市区町村統計ランキングなどのサイトも運営している。

年収1千万以上が多いのは……

1位→東京都……8.75世帯
2位→神奈川県……8.00世帯
3位→福井県……7.02世帯
4位→愛知県……6.88世帯
5位→富山県……6.79世帯
※100世帯あたり
〈住宅・土地統計調査2013〉

 富裕層家庭などを語るときに指標とされる年収1千万円の壁。やはり大都市東京がいちばん多い。一方、最も少ないのは沖縄県で1・96世帯。次いで鹿児島県、宮崎県、青森県、北海道。

「年収が高い原因は、2つあります。まず、東京や神奈川など都会は単純に賃金が高い企業が多い。また、名古屋から北陸にかけては第2次産業(工場など製造業)が盛んで雇用が安定。同じく共働きも多いので世帯年収が高くなります」(久保さん、以下同)

 したがって、相関ランキングでは正社員の数と正比例の相関が高い結果になった。

高卒・大卒初任給が高いのは……

■高卒初任給■
1位→東京都……178,100円
2位→大阪府……176,100円
3位→神奈川県……175,600円
4位→滋賀県……174,500円
5位→千葉県……174,200円
〈賃金構造基本調査2019〉

 まず、大卒と高卒の初任給の順位が異なることに驚き!

「地方と都市部では開きが大きい傾向にあります。地方で高卒ですと手取りが一ケタという人もいますから」

 高卒の場合、1位から5位までも3900円しか差がなく、東京・大阪とその周辺地域が高い傾向がある。

■大卒初任給■
1位→東京都……220,500円
2位→千葉県……211,700円
3位→神奈川県……210,800円
4位→埼玉県……210,400円
5位→愛知県……210,100円
5位→大阪府……210,100円
〈賃金構造基本調査2019〉

 一方、大卒初任給が高い上位4位は関東の1都3県が独占。これは、大都市に若者が集中してしまう原因のひとつ。

「大企業が多い都会が上位にくるのは当然でしょう。最低賃金などもそうですが、賃金は物価とも関係しますから、物価が高い地域は賃金も高い傾向があります」

 都市部は家賃なども高く生活コストもかかるので、一概に都市部で働く=裕福な生活ができるとはならない。また、こちらのデータは「初任給」なので、あくまで正規雇用者のデータ。大企業が集中している地域が高くなるという結果にも納得。

最低賃金ランキング

■最低賃金■
1位→東京都……1,013円
2位→神奈川県……1,012円
3位→大阪府……964円
4位→埼玉県……928円
5位→愛知県……927円
〈厚生労働省2020〉

 最低賃金とは最低賃金法により定められた賃金で地域別と産業別とが設定されている。今回は地域別最低賃金を比較。最低賃金の全国平均は902円。最低賃金が最も高いのは東京都、最も低いのは秋田県で792円。

「人口が多く、年収や家賃が高い都市部で最低賃金が高く、農業就業者が多い地方で最低賃金が低めです。都市と地方を分ける典型的な指標といえるでしょう

労働時間と収入は比例しない!?

■労働時間■
1位→神奈川県……501.5分
2位→千葉県……499.5分
3位→福岡県……496.0分
4位→奈良県……494.0分
5位→北海道……493.5分
5位→東京都……493.5分
〈社会生活基本調査2016〉

 ここでは15歳以上の男女有業者の週全体の労働平均時間を比較。有業者とは収入を得ることを目的とした仕事を持っている者のことで、サラリーマンのほか、パートタイマーやアルバイトも含まれる。

労働時間が長いというのは第3次産業(サービス業)の多い都会型の特徴です。愛知や岐阜など第2次産業が盛んなところは労働時間が短いというデータがあります。これは工場などは機械の稼働時間が決まっていて個人の都合で残業できないからでしょう」

 単純に長時間働けばそれだけ賃金が入ってお金持ちになるような気もするけれど……。年収1千万円以上の世帯数が1位の東京は意外に5位。残業代の出ないサービス残業が他の上位県のサラリーマンに多いと推測される結果に。

仕送りが多い都道府県は?

■仕送り額■
1位→徳島県……160,566円
2位→鳥取県……144,834円
3位→福島県……141,775円
4位→高知県……140,271円
5位→大分県……129,351円
〈家計調査2016〉

 1世帯あたり年間仕送り額の全国平均は6万8990円。ただし、これは仕送りをしていない世帯も含んだ世帯数からの平均値。年間仕送り額が最も多いのは徳島県で16万566円。

「地方から都市部の大学へ子どもを入れると、4年間で1千万円は必要といわれていますからね。このランキングは大学生の数と反比例の相関があるのです。大学がないから他府県の大学へ行くことになる

 若い人が進学で都会へ出てしまい、そのまま就職してしまうことを懸念して「地元に大学を!」と頑張っている地方の行政も増えている。

エンゲル係数が高いのは……

■エンゲル係数■
1位→京都府……30.54%
2位→兵庫県……30.11%
3位→大阪府……30.03%
4位→青森県……29.74%
5位→和歌山県……28.93%
〈家計調査2018〉

 家計の消費支出に占める飲食費の割合を見てみると面白い結果に。飲食費には外食費用やアルコール購入費も含まれているが、関西を筆頭に3大都市圏とその周辺部や東北地方でエンゲル係数が高い。

 3大都市圏は物価が高いことも考えられるが、そのぶん最低賃金や各種年収が高い地域。単純に食料品価格だけが原因とはいえない。

「都会が高くなりがちですが、関西が多いのは外食も含まれますので食い倒れの街だからでしょうか。あとエンゲル係数は割合ですから、所得が低いとそのぶん高くなります」

 こちらはまだコロナ禍になる前のランキングなので、生活様式が大きく変化した今後は大幅な順位入れ替えが出てくるかもしれない。

おしゃれにお金を使うのは……

■購入費■
1位→徳島県……71,886円
2位→東京都……67,759円
3位→奈良県……61,748円
4位→埼玉県……59,846円
5位→神奈川県……58,058円
〈家計調査2019〉

 スカート、ブラウスなど、女性用洋服の年間購入費も見てみよう。ここには靴や帽子、アクセサリー、下着、および制服や小学生以下の洋服は含んでいない。

 女性用洋服購入費の全国平均は4万9434円でこれは男性用洋服購入費2万5694円の約1・9倍。そして購入費が最も多いのは何と徳島県で7万1886円。これには久保さんも驚いている。

「都市部が上位なのは納得ですが、徳島県が1位の理由は、『阿波の着倒れ、伊予の食い倒れ』ということわざどおりなのでしょうね」

家賃収入で暮らすひとが多いのは……

1位→沖縄県……23.23人
2位→東京都……21.38人
3位→神奈川県……14.67人
4位→愛知県……14.00人
5位→静岡県……13.80人
※人口1000人あたり
〈家計調査2019〉

 東京都を抑えて沖縄県が1位になっているのが目を引くが、これは米軍など軍用地の借地料があるため。次いで東京、神奈川の都市部が上位に。

「家賃収入で暮らす方は人口密度と比例します。反対に持ち家率とは反比例の相関があります。したがって、持ち家率が全国1位の富山県は、不動産収入生活者は少なく、最下位です」

 不動産収入で生活できるなんてうらやましすぎる〜!

(取材・文/アリス美々絵)