中森明菜

 デビュー40周年を記念して、中森明菜のスペシャルサイトが5月1日に開設された。サイトは明菜がワーナーミュージック時代にリリースしたシングルやアルバムの解説や各ストリーミングサイトへのアクセス、YouTube上に公開されている動画、さらに「再生回数順ランキング」や「隠れ名曲」のプレイリストなど充実の内容だ。

 6月9日には、ワーナーから発売された7インチシングル(28枚)と12インチシングル(1枚)、カセットテープ(1本)を収録した全30枚のボックスセットが発売予定で、40周年を機に、中森明菜の魅力があらためて再認識されそうな雰囲気も漂う。

松田聖子とは好対照な存在

「何度も休止と再開を繰り返しながら活動する明菜ですが、2014年『紅白歌合戦』にサプライズ出場し、その後も何枚か新作をリリースしましたが、2017年の全国ディナーショー以来、表立った芸能活動は行っていません。しかし、今も根強い人気を保っているため、第2のちあきなおみ('92年に夫と死別して以降、活動休止をし事実上引退)になりつつある状態です」

 と、ある芸能ジャーナリストは言う。

 表舞台に立たなくなったいまでも作品は作られ、売れ続けている。また、以前交際していた近藤真彦が話題にあがるたびに明菜の存在も注目され、同情の声とともに歌唱力が賞賛されるという、不思議な“露出”を繰り返す。それは明菜にはいまでも魅力がある証拠とも言える。では、多くの人を惹きつけてやまないその魅力とは何なのか。

「なんといっても数々のヒット曲、その多彩な曲調と世界観、そしてそれらを歌いこなす表現力と存在感ですね。ヤンキーブームの中、初期の山口百恵を彷彿させるようなセカンドシングルの『少女A』の衝撃、その直後に出した3枚目は、一転してバラードの名曲『セカンド・ラブ』をリリースし、現在のアラフィフ世代を中心に多くの人の心をつかみました。

 キラキラした永遠の王道アイドル・松田聖子と好対照な存在となったことも大きいですね。当時の十代は男女問わず『聖子派』『明菜派』でその魅力を競い合ったりもしました」(同ジャーナリスト)

『北ウイング』『十戒』『飾りじゃないのよ涙は』『ミ・アモーレ〔Meu amor e・・・〕』『DESIRE-情熱-』『難破船』……多くの人に愛された中森明菜のヒット曲は数多い。

「2000年代に入ってからは松田聖子や山口百恵の曲をカバーし、歌手としての実力を再認識されました。それらを収録したアルバムはシリーズ化されヒット。その後には、パチンコ台にも採用され、これがヒットしたことも、息長く、幅広い層に知られるひとつの理由にもなります」(同前)

 また、あるアイドルウォッチャーは同期である「82年デビュー組」を見わたして、明菜の魅力を力説する。

「小泉今日子やシブがき隊、早見優、堀ちえみ、石川秀美など、中森明菜と同じ82年デビューのアイドルは、その活躍ぶりから“花の82年組”と呼ばれました。明菜はその中でも当時から実力が認められ、ひとつ飛び抜けた存在でした。実際に仲のいい同期のアイドルはいたものの、どこか孤高の存在のように見えたところがあるように感じました」

“悲劇なヒロイン”的な面も魅力的

 明菜の特異性は、歌手としての評価以外にも見受けられた。昨年11月、25歳年下の女性との不倫の末に活動自粛をし、そのまま40年以上在籍していたジャニーズ事務所を退所した近藤真彦との過去の交際だ。

「その交際は常に注目されていました。その後に起こった数々の騒動の衝撃の大きさは、今もなお語り継がれるほどです。その大きさゆえに、自由奔放な芸能活動を送ることができなくなってしまったところもあるかもしれません。しかし、“悲劇のヒロイン”的な面に魅力を感じる人も少なくないと思います」(同前)

1985年公開の映画『愛・旅立ち』で共演した近藤真彦と中森明菜

 実際、近藤真彦の話題が上がるたびに、明菜をあらためて扱うニュース記事も複数見受けられた。やはり明菜の注目度は今もなお、高いと言える。前出の芸能ジャーナリストが言う。

「いまでも明菜の復活、また歌う姿を実際に見たいというファンはたくさんいると思います。この40周年を機に、配信でもいいから大きなサプライズを期待したいところです」

 明菜の数々のヒット曲に浸り、まずはその魅力に再び触れてみたい。 

〈取材・文/渋谷恭太郎〉