主演の永山瑛太と北川景子

「マル、ヨン、マル、マル起床。おはようございます!」

 ラッパ音で朝4時に起床し、大声で挨拶する夫・緒原紘一(永山瑛太)の行動に驚く北川景子演じる妻……。ドラマ『リコカツ』(TBS系)で描かれる自衛官の生活ぶりにSNS上などでは、

《自衛隊のイメージをかなり盛ってるような感じw》

 といった声が上がっている。

「雪山で遭難したファッション誌編集者が、救助してくれた自衛官に運命を感じて交際ゼロ日で結婚。しかし真逆に近い生活スタイルや考え方のため、すれ違いが起きて結婚直後に離婚活動を始める……というラブコメディーです」(スポーツ紙記者)

 普通に生活しているとあまり接点のない自衛隊の人たち。やはり瑛太演じる自衛官の行動は、ドラマ上での演出なのか? そんな疑問から取材を進めていくと、あながち嘘でもないようで……。

現実離れしている自衛隊の“リアル”

「駐屯地では実際に起床ラッパが放送され、一斉にベッドから起きて着替え。廊下に出てすぐに朝の点呼を行います。そのため、ラッパ音を聞くと身体が反応して目覚めるという元自衛隊の人も多いですね(笑)」(自衛隊OB)

ドラマにも出演した、陸上自衛隊に勤務経験のあるピン芸人のやす子

 2年間陸上自衛隊で勤務経験があり、同ドラマにも出演したピン芸人のやす子(22)も「自衛隊員の“あるある”が詰まっている」と絶賛する。

「第1話の浅草デートのシーンで、瑛太さん演じる緒原さんが、“11時の方向です”と言うシーンがありましたが、私生活でも右や左などの方向を“3時”や“9時”と言うのは自衛官あるある(笑)。時間を“ヒト、ヨン、マル、マル”と言うのも同じで、任務中のクセはなかなか抜けませんね。自衛官から見ると緒原さんの言動はリアルです」

 第1話では「任務について詳しいことは語れない。国家機密だ」というセリフがあったが……。

○○県で演習があったとか、今日は降下訓練をしたぐらいは話していましたけど(笑)。さすがに国家機密である暗号などは家族にも漏らしません。ネットは誰が見ているかわからないし、悪用されるかもしれないので、最近はSNSなどの投稿については厳しく指導されると聞きます」(前出・自衛隊OB)

ドラマ第1話のような、雪山での救助活動も航空救難団の役目のひとつ(航空自衛隊公式HPより)

 劇中で“自由に海外旅行ができない”という説明もあったが、これも本当だという。

海外旅行は行ってはいけない国があり、OKな国でもかなり煩雑な手続き・作業が必要になります。また駐屯地から外出する際は、必ず“行き先”“電話番号”“出る時間・戻る時間”などを報告する決まりになっていて、行き先についても30分~1時間ほどですぐに帰ってこられる近辺に限られていました」(やす子)

 海外渡航承認申請が必要になるのは、渡航先でトラブルに巻き込まれていないかを把握するためなんだとか。

「過去には無断渡航を複数回行った隊員が懲戒処分(停職)になったケースもありますよ」(前出・自衛隊OB)

筋トレに励むと給料が上がる!?

 役づくりで肉体改造を行い、劇中で鍛えられた筋肉美を披露している瑛太。妻を待つ時間に逆立ちをして筋トレをするシーンもあったが、こちらも“あるある”なんだとか。

自衛官は、体力検定や射撃の検定が給料やボーナスに影響してくるんです。体力があったほうがお金を稼げるということもあり、常に鍛えている人が多いですね。私も自衛官だったころはひたすら走っていました(笑)」(やす子)

自衛隊“No.1マッチョ”を決める「自衛隊プレミアムボディ」という大会が'17年から毎年開催されている(公式HPより)

 ファッション誌の編集者である妻が、ファッションに無頓着な夫に、どこで服を購入しているか聞くと「基地の売店」と答えるシーンも。実際、基地の売店ではさまざまなものが売っているそう。

駐屯地にある独身寮は“営舎”と呼ばれ、そこに住む隊員“営内者”が生活するうえで困らないよう、売店の品ぞろえは豊富ですね。食料品や日用品はもちろん、下着やちょっとした衣服も取り扱っています。でもほとんどの自衛官は休日になれば近くの繁華街に出かけるので、私服まで基地の売店で買いそろえる隊員はまれでしょう(笑)」(前出・自衛隊OB)

 一方で、ドラマならではのファンタジーな部分も。

「緒原さんのように、救助活動で出会った一般の方と結婚……というのはさすがに聞いたことがないですね(笑)。

『MAMOR(マモル)』という自衛隊のオフィシャルマガジンに婚活コーナーがあり、そこをきっかけにモデルさんと交際に発展したという話は聞いたことがあります。でもいちばん多いのは自衛官同士の結婚だと思いますよ」(やす子)

 自衛官同士の結婚が多い理由を、前出のOBはこう分析する。

自衛官は演習で家を空けることも多く、海上自衛隊であれば何か月も自宅に戻れないことも。そういう生活スタイルに理解があるパートナーでないと、結婚生活もうまくいかない。そのため、仕事に理解のある自衛官同士で結婚するケースが多いんでしょう」

“恋愛ベタ”な男性自衛官たち

 緒原のように、恋愛に不器用な男性自衛官も多いとか。

入隊すると自衛官以外の女性と関わる機会がほとんどないですからね。知り合いの自衛官は、初デートでいきなりサバイバルゲームに連れて行っていましたし(笑)。そういう私も、男性の気持ちはわからないですけど」(やす子)

男性自衛隊員専用の婚活サイトもある

 予想以上にリアルに描いていた『リコカツ』。説得力を持たせているのは、演技の分析を怠らない瑛太の努力によるところが大きいという。

現場でご一緒した際、わざわざ瑛太さんのほうから挨拶に来てくださって。“自衛官は怒られたとき、どういうふうに返事をしますか?”と、私のようなペーペーの芸人に質問してくださったので、自衛官の返事や挨拶、口調などについてお答えさせていただきました。こんな若手にも真摯に対応してくれてビックリしました。丁寧で礼儀正しくて、すごく素敵な方でしたね」(やす子)

 事実を知れば、ドラマが今まで以上に楽しめるかも。