飼い主の男性にヘビが大きなエサを丸のみするメカニズムを尋ねると、口を開けたヘビが下アゴ部分を左右に広げて取り込む様子を両手を使って丁寧に説明してくれた。

 報道陣に囲まれた飼い主の20代男性は、

「ホッとしています」

 と小声を絞り出す一方、ヘビが逃げてからの17日間を振り返り、次のように話した。

「見つけたいという気持ちと、自分がやってしまったことの大きさを反省していました。ヘビがだれかにケガをさせてしまうことがあってはいけない。そうなる前に絶対捕まえたい気持ちがありました」

 横浜市戸塚区のアパートで飼育中のアミメニシキヘビ(体長約3・2メートル、体重約10キロ超)の行方がわからなくなった騒動は、発生から17日目に飼われていた部屋の屋根裏で発見、無事捕獲され、飼い主が自ら招いた“非日常”はひと区切りついた。

 逃げ出した当初から飼い主は会社を休んで捜索に参加。マスコミに囲まれたり、ヤジ馬が自宅に押しかけるなど対応に追われるはめになった。周辺住民によると、逃走間もないころに飼い主が訪ねてきて「ヘビがいないか敷地内を探させてください」と申し出たことも。苦境を知ったヘビマニア仲間が捜索協力に駆けつけると、

「本当にありがたい気持ちでいっぱいです」

 と胸の内を明かした。

 ペット禁止のアパートを出る前後から、飼い主がヘビを探す姿を見かけなくなった住民からはその姿勢をいぶかしむ声もあった。

「自宅から出ると追いかけられてしまう状況になり、なかなか自宅の周りは探せなかった。山(雑木林)に入って探していました」

 と飼い主は話す。

 本当に山中を捜索していたのかどうかはわからないが、飼い主はヘッドライトを片手にこう取材に答えたことがあった。

「夜間に探すときに使うんです。仲間が来てくれると、夜間でも山(雑木林)に入れるので助かります。それと、晴れている日の明け方と夕方を重点的に探しています。太陽が出てきて体を温めるため姿を見せるのではないかと思い、また寒くなる夜が来る前に隠れるため移動するのではないかと思いまして」

 日中に目立つ場所では、独自捜索がままならない状況になっていたことは間違いない。

 飼い主は少なくとも取材に対しては、近隣住民に不安を与えている反省の言葉を発し、捜索する警察、消防を含めた関係者に迷惑をかけていることを自覚していた。飼っていたほかのヘビなどを手放し、このたび捕獲されたアミメニシキヘビについても従前から「私が飼い続けるわけにはいかない」と、しかるべき機関に譲渡する考えを示していた。

 それでも賃貸物件の居住ルールを破り、巨大ヘビ飼育のルールを守らなかった責任は大きいと言わざるを得ない。実際、ヘビが見つかるまでネット上のコメントは飼い主に対する批判が大勢を占めていた。

 しかし、週刊女性PRIMEがヘビ捕獲を報じた配信記事には次のようなコメントが寄せられた。

一件落着後、飼い主に対する意見に変化が

《飼い主は確かにやらかしたよ
だけど逃げも隠れもせず、マスゴミの前に姿をさらし、追い出され、仕事を休み
そしてそれでも最後まで探し続けていた

十分に償ったと思う
俺は責める気にはならないね

とりあえず、ゆっくり寝てくれ》

《私も同感です。初めは飼い主さんに少し厳しめの感情を抱きましたが、謝罪し取材にも答え、仕事を休んで連日捜索に加わり、かわいがっていたペット達も手放し、それらが当然という意見もあるようですが私は十分誠意を感じました》

《飼い主は悪意があってやらかしたわけでもないだろし、十分に反省していますよ。
長い人生の中でたまたま失敗しただけのことです》

《うん 寛容な意見があるのは社会全体としてはよいことかも。
ただペット禁止明記の賃貸で大蛇複数持ち込んで飼育、はバレたら契約違反で追い出されるのは当然で自業自得だけどね。次はOKなとこでやってほしいね》

(※コメントはすべてYahoo!ニュース コメントより)

 飼い主が「十分に」責任をとったかどうかは即断できないだろう。しかし、ヘビ逃走中は責任を痛感しているように見え、体調を心配されても「寝ている場合じゃない。疲れている場合じゃないなと」などと自分を鼓舞するように話したほど。

 騒動を招いたのはまずかった。しかし、そのあと取った行動は飼い主なりに責任を持とうとしているように感じた。

 飼い主は本誌の取材には真摯に答え、ヘビの生態について尋ねたときも、一般人がわかるよう丁寧に話した。エサの大きな冷凍ラットをどう口に入れるのか質問すると、両手でヘビの頭部をつくって口の動きを説明してくれた(冒頭の写真)。本当にヘビが好きなのだろう。

 ヘビの購入価格を質問したとき、飼い主は少しためらってからこう述べた。

「それは報じないでいただけませんか。私みたいなヘビマニアからすると、法改正によって個人では新たに飼えないので、手に入れたくても手に入らない種です。生き物の価値というのもイヤな話なんですが、そういう意味では価値の高い生き物なのかもしれません」

 さらに飼い主が必ずといっていいほど口にしてきたのは「ヘビに対しても申し訳ない状況をつくってしまった」ということ。

 本誌の取材に対し、ヘビの飼育は「子どもの頃からの憧れだった」と話した飼い主。一件落着後のネットの反応は思いのほか、飼い主に温かいものだった。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する