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「紀州のドンファン」と呼ばれた和歌山県の資産家・野崎幸助さん(当時77)が急性覚せい剤中毒で亡くなった事件で、その元妻である須藤早貴容疑者(25)が逮捕されたことは記憶に新しい。逮捕直後、彼女が「月に100万円お小遣いをもらっていた」という話も出回り、須藤容疑者の狡猾さを指摘するような意見もSNS界隈では多く見られた。

 50歳も年の差のあったふたりはいわゆる「パパ活関係」にあり、金銭ありきで成り立っていた夫婦だったわけだ。今回はそんな「パパ活」の実態に迫りたい──

 そもそも「パパ活」という言葉が世に広まったのは、2014年ごろから流行しはじめた「港区女子」の出現がきっかけだ。

 この港区女子とは、カネと権力を持った男性たちとの「ギャラ飲み」などに参加する若い女性を指す。当然ながら「ギャラ飲み」では“タクシー代”という名目で金銭的なやりとりがある。

 筆者の知るかぎり、富裕層と若い一般人女性をマッチングさせる飲み会は、2014年より前から行われ続けているものではあったが、SNSでこうした内情を発信する人々が出現したことで、世に広く認知されるようになった。飲み会の後、定期的に肉体関係を持ったり、交際に発展することが、のちのち「パパ活」と呼ばれるようになっていった。

お金のためなら「避妊なし」も厭わない

 今でこそ場所を問わず行われているパパ活だが、やはり創生のきっかけとなった港区では、他所とはレベルの違う交際関係が行われている。

 港区で行われているパパ活・ギャラ飲みはコロナ禍においてこそ特別で、そこに通うことができるのは大金や社会的地位を持つ男性と、選りすぐりの美しい女性に限られている。現在もそういった社交場に通う港区女子に話を聞くと。

今はギャラ飲み仲介業者を利用すれば、誰でもギャラ飲みに参加できるようになりました。でも、港区で起業家や資産家などのお金持ちと出会えるクオリティの高いギャラ飲みは、簡単には参加できない。そういった会に参加している女性は若くて美人の一握りしかいなくて、モデルや芸能人の卵、元ミスキャンの子たちがほとんどですね

 肩書きのない女性たちは、クオリティの低いギャラ飲みに、仲介業者などを通じて参加することから始まり、そこでルックスや会話術などを見極められる。仲介業者から認められるとクオリティの高いギャラ飲みに参加できるようになるという仕組みだ。

もとの顔が可愛くない子でも、まずは仲介業者経由のギャラ飲みで整形費用を貯めてる、という話もよく聞きます。相手の男性によって、もらえる金額も段違いなので、港区のギャラ飲みで高みを目指すなら、外見磨きは最低条件。財力のある男性に気に入られればパパ活相手として港区内にマンションを買ってもらえたり、デート代として大金をもらえますからね」

 こうして、港区のギャラ飲みでは厳選された女性だけが生き残り、それ以外はすぐに淘汰されていく構図が生まれていったようだ。

 ギャラ飲みで生き残った女性は、そこで知り合った男性の中からパパ活相手を探しはじめるわけだが、実際にギャラ飲みに通い詰め、今はパパ活だけで生計を立てている前出・港区女子はこう語る。

「仲介業者の知り合いがいるんですけど、その子のSNSを見ていると、このご時世でも変わらずギャラ飲みが行われてますよ。インスタではマスクもせずに飲み会を楽しんでる様子がアップされたりしてるので、あんまりコロナ禍の危機感みたいなものはないと思う。

 私の周りはギャラ飲みの頻度が減ったので、今はパパ活メインで生計を立てる子が多いですね。いま住んでいるマンションはパパに購入してもらったものですし、コスメや洋服もパパに買ってもらうので、自分でお金を出すものといえば、エステや整形にかける費用くらい。

 私は2人の太p(太いパパ)がいて、1人は愛人として月に30万円ほど出してもらっています。もう1人はたまにデートに行って、一晩で50万円くれる。高額なかわりに、避妊はしないのが条件。一晩50万円だと思えば、アフターピル代くらいは安いものですよ。パパの中にも“避妊ナシでOKなら、金額上乗せ”って人は珍しくないですね

 取材をする筆者に対し、悪びれもせず「逆に1日で50万円、コンスタントに稼ぐ方法がほかにありますか?」と笑顔で語る彼女。お相手はあくまで家庭を持つ男性ということで、恋人関係ではなく割り切った愛人関係なのだそう。

 お金が手に入れば、整形やエステで自分を磨く。美しくなることで、より金払いの良いパパをパトロンにつけることができる。こうして、港区女子たちはどんどん資金を増やし美貌を蓄えていくのだ。

パパの財力に寄生する港区女子

 ありあまる富の一部を使って、中年になっても疑似恋愛を楽しむ男性と、若さと美しさを切り売りし、悠々自適な生活を手に入れる女性。パパと港区女子の間には、需要と供給の一致があるようにも見える。

 しかし、取材した女性のパパのように、妻子ある家庭を持つ人の場合、当人同士だけが同意していればいいというわけにもいかない。なかには、社会的地位を持つ相手であることを逆手に取って、必要以上の支援をのぞむパパ活女子もいるという。

「Aさんは経営者仲間の中でも特に優秀で、複数の会社を経営しながら事業売却で儲けている敏腕経営者でした。結婚して長い奥さんと、子どもは3人。でも最近、飲み会に顔を出さないと思ったら、港区女子とこじらせちゃったらしいんです。

 Aさんは数年前から、愛人関係と引き換えにその女性の生活を全面的にサポートしていました。港区内の高級マンションの家賃やブランド品、そして生活費を出してあげていた。その愛人女性が先日、Aさんとの子どもを産んだらしいんです。ピルを飲んでいると言っていたので、避妊せず関係を持っていたようなんですが──。実際はピルを飲まずに関係を重ねてたようで、要は策略妊娠だったそうです。

 Aさんの方はさすがに自分の家庭を考えて、堕ろしてほしいと頼んだようですが、女性側が“絶対に産む”との一点張り。Aさんは認知しないと主張するも、結局シングルマザーになった愛人女性のために、これまで以上の生活費を支払っているみたいですよ。Aさんとしても、かなり稼いでいるので危機感もないんだと思います。はたから見れば大失敗ですけど(笑)」(パパ活界隈に詳しい企業経営者)

 愛人関係もパパ活関係も、より社会的地位がある方が「バレて困る」と考えるだろう。そうした関係性を利用し、身体を張って相手の手綱を取る寄生型のパパ活女子もいる。そんな彼女の現在を知人女性はこう話す。

地元から家族を召喚し、一緒に生活

「(愛人女性は)今まで通り港区の高級マンションの家賃をAさんに出してもらいながら、母親や家族を地元から呼んで一緒に住んでるみたいです。子育てはほぼ母親に任せて、彼女は本業であるゴルフのインストラクターを続けてます。Aさんの近くにいれば、家族全員を面倒見てもらえると考えてるんでしょうね」

 そう話す知人女性は、彼女にゾッとしたことがあると続ける。

不倫がAさんの奥さんにバレたとき、普通なら身を引くと思うんですけど、今の生活をやめたくないからか“絶対妊娠してやる”って意気込んでいて、さすがに周りの友人たちも引いてましたね。子どもの命よりも今の優雅な生活をっていう歪んだ価値観の子なんだなって思いました

 そんな寄生型パパ活女子のインスタグラムを見せてもらうと、特段妊娠しているような画像はなく、妊娠していると思われる時期にはネイルやブランド品などの画像が並んでいた。

パパとは結婚したくないけど、子どもを作るのはアリと考える港区女子もいます。相手が不祥事をバラされたくないような立場の人なら、その人が社会から完全にドロップアウトするまでの間、全面的に面倒を見てもらえますから。

 もちろん、そこまですると地雷女子として、ギャラ飲みの方では干されちゃいますけどね。そういった飲み会で需要が少なくなってくる年齢の女性だと、今後も働かずに生きていけるなら、と考える人はいますね」(前出・港区女子)

 最初は小金持ちを相手に地道に努力していたパパ活女子たちも、一夜でもらえる額が増えるほど、金銭感覚をこじらせていく。しかし、パパ活界隈で最も需要が高いのは若い女性。パパ活で生計を立てる生活も数年続くと、自分の市場価値に焦りを感じはじめるのだろう。

 父親に認知されない子どもを産んでも、一生養ってもらえる保証はない。それでも、彼女たちが不相応な生活水準を保つためには、生殖能力すら武器にして、身体を張ってパパを脅すことも珍しくはないようだ。

 港区女子たちは、若く美しい。社会的地位のある富裕層と交流し、マナーやリテラシーも深まっていく。美しいだけで儲かってしまう「港区」のるつぼの中で、パパと身体を重ねては高みを目指していくのだろう。しかし、その寿命は長いとは言えない。

 いつどこでやめればいいのか? 何歳まで続けられるのか? そんなことを考えるころには、上げた生活水準を下げられなくなっているのだ。美しいその顔の裏には、カネにまみれた私利私欲が渦巻いている。

(取材・文/久留米あぽろ)