1979年、17歳で劇作家・寺山修司氏に見い出されて女優デビュー。その翌年、ドラマ初出演した『ふぞろいの林檎たち』に黒髪ボブカットのミステリアスな美少女役で登場し、その存在を私たちに鮮烈に印象づけた、女優・高橋ひとみさん。女優生活42年目を迎え、常に第一線で活躍する一方、飾らないおおらかな人柄が愛されて、近年はバラエティー番組でも大活躍。

 50歳から激変したという高橋さんの人生に迫るロングインタビュー【前編】では、52歳での“交際2週間婚”の真相、現在の結婚生活について、ざっくばらんに語っていただきました。

高橋ひとみさん(撮影/近藤陽介)

 2013年、52歳でのスピード婚で世間を驚かせた高橋さん。独身生活のライフスタイルが確立されていた50代での結婚を決意した理由を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「ひとつは、今まできちんとプロポーズしてくれた方がいなかったということ。もうひとつは、“仏教だとこの世を生きているうちが修行だから、結婚とかしておかないと死んでから大変よ”って、以前に誰かから言われて、それが頭にず~っとあって。死んでから大変なのイヤじゃないですか(笑)

 でも、それまで結婚したいと思ったことが1度もなかったんですよね。それが交際2週間で、彼がパッとプロポーズしてくれたので、すごいなと思って。じゃあ、ちょっと1回くらい結婚してみてもいいかなと。信用している方のお友達っていうことと、借金がないっていうことで(笑)。

 母はすごく喜んでくれましたね。この先、私がひとりぼっちになってしまうのが、どうしても心配だったみたいなので、安心させることができてよかったと思っています」

延々と裾を見ているんです

「ツッコミどころ満載なので、バラエティー番組のトークネタが1つ増えたくらい」と笑う、旦那さまの魅力について伺うと。

「交際中、私のフィレンツェでの仕事に、主人が追っかけるように一緒にくっついてきて。すごく洋服が好きな人なので、よくイタリアに買い物に来ているってこともあったんですけど。ウフィッツィ美術館のチケットをとってくれたり、スタイリストさんやメイクさんの荷物も全部持ってくれて、ドアも絶対に全部開けてくれるし、外国人の男性みたいなんですよ。

 あとは、航空会社に勤務する普通のサラリーマンなのに、“そのスーツで会社に行くんですか?”っていうような、おしゃれなスーツばかり着ていたの。3ピースだったりダブルだったりして、すごくカッコよくて。スーツって何割増しかよく見えるじゃないですか(笑)。長身だからフィレンツェの街で、2人で写真を撮ったらバランスいいし、いい感じじゃないのって(笑)。

 でも、結婚したらわかったんですけど、おしゃれな男の人の面倒くささっていったら、すごいんですよ。パンツの裾1ミリを直す、直さないのこだわりようで、その裾の長さはローファーには合わないとか。それで延々と裾を見ているんですよ(笑)。フィレンツェに一緒に行っていたスタイリストさんも“ああいう人は大変よ~”って言ってましたけど(笑)」

 洒落男の旦那さまの影響で、高橋さんのファッションにも変化が……。

私もすっかり変わりましたよ。以前は(取材当日に着ていた)こんなマニッシュな格好はしていなかったですもん。ローファーなんてあまり履かなかったですし、全部、主人の好みです。結婚前は、ハイヒールにタイトスカートで、もっと色鮮やかな洋服を着てました。ドルチェ&ガッバーナとかザ・女優みたいなファッションだったんですけどね(笑)」

取材当日の高橋ひとみさんのコーディネイト(撮影/近藤陽介)

先日こんなこともあって

 結婚生活がスタートして驚いたことは、「何事もすごくゆっくりなこと」だそう。

流れる時間が向こうはすごくゆっくりで(笑)。立ち上がるのも私の倍くらいかかるんですよね。階段も私のペースで上がると、前に主人がいたらつっかえちゃうんです。まだ上ってないのって感じで(笑)。ドアも、そ~っと開け閉めするんです。だから、冷蔵庫もちゃんと閉まってなくて、いつもピーピー鳴るし、車のドアも半ドア(笑)。すべてが今まで見たことがないような人なんですよね。最初はイライラしましたけど、今は慣れました(笑)」

 20代、30代の頃は、友人を自宅に招いて、よく手料理をふるまっていたという高橋さんだが、現在は……。

「主人には、そんなに材料費がかかるなら、コスパのいいおいしいお店に行ったほうがいいんじゃないかって言われてます(笑)。昔から好きなスーパーがあって、そこに行くとなんだか落ち着くんですよね(笑)。主人には“なんでこんなに高いのを買わなきゃいけないの! 近所に安いスーパーがあるのに”って叱られちゃうんですけど。

 普段はあまり料理をしないのですが、コロナ禍での自粛期間は毎日、クックパッドとかを見ながら何かしら作っていました。主人は、唯一お料理ができないんですよ。鍋はたまに作ってくれますけど。その他は、お掃除も、アイロンかけも、ゴミ出しも、パーフェクトなんですけど」

 コロナ禍において、改めて結婚してよかったと感じているとも語る。

自粛期間で家にずっといたときに、ひとりで犬しかいなかったら、どうなっていたかなと思いましたね。なんでも相談できる主人が一緒にいてくれてよかったなと。私と真逆でいつも落ち着いているので安心しますし。

 先日こんなこともあって。外出先の駐車場で、携帯以外の荷物を中に入れたまま車のキーをロックしちゃって。“イヤ~! どうしよう~! 家のカギもないし~”って主人に電話したら、すぐに家からスペアキーを持ってすっ飛んできてくれて。なんだか、そういう救世主のようなことを度々してもらってますね(笑)」

私の携帯もしょっちゅういじっています

「やっぱり2人でよかったなと思うほうが多いですよね」(撮影/近藤陽介)

 結婚生活で大切にしていることは「一緒にいること」。

主人が常に一緒にいたがるというのもあるんですけど、休日は絶対に別行動はしません。犬を連れてだいたいどこかに出かけています。とにかく常に一緒ですね。例えば、“ちょっと今日はひとりでいたいな”と思っても一緒にいます。

 家に書斎みたいな場所を作ったら、そこにいっぱなしになってしまうかもしれないですけど、そういう部屋もないので、渋々でも一緒にいるんですけどね。でも、一緒にいるから話すことも多いですし、隠し事が何もないんです。主人は私の携帯もしょっちゅういじっていますし、インスタグラムの文章も一生懸命書いてくれています(笑)

 50代同士でお互い初婚で、自分だけのために生きてきた者同士が一緒になるわけですから、最初は多少のぶつかり合いはあるんですけど(笑)。譲れないこともありますし、ときどき1人だったらどんなに楽だろうなとか思いますが(笑)、それでもやっぱり2人でよかったなと思うほうが多いですよね。たぶん、向こうのほうが相当がまんしていると思います。いろいろ目をつぶっているのではないでしょうか(笑)

 結婚後、さらに多忙になっている高橋さんだが、旦那さまは「仕事もいっぱいしてほしい」と協力的。

“もう、この間のドラマのオンエアじゃないの? 早くインスタをアップして”とか、すごく言われるんですよ。家にマネージャーがいるみたい(笑)。でも、知り合いに“高橋ひとみをよろしくお願いします”って売り込むので、恥ずかしいんですけど(笑)

※後編は6月2日(水)12時配信予定です。

(取材・文/井ノ口裕子)

●プロフィール
高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)/1961年8月23日、東京都出身。1979年に寺山修司演出の舞台『バルトークの青ひげ公の城』でデビュー。1983年に出演したドラマ『ふぞろいの林檎たち』で注目を集める。現在まで、多くのドラマ・映画・舞台で活躍するほか、バラエティや情報番組に出演するなど幅広く活動。現在、『アウト×デラックス』(フジテレビ系・木曜23時~)レギュラー出演中。『スイッチ!』(東海テレビ)コメンテーターとして隔週金曜に出演。

【ホリプロオフィシャルサイト】https://www.horipro.co.jp/takahashihitomi/
【Instagram】@hitomi_momoe https://www.instagram.com/hitomi_momoe/

●出演情報
水谷千恵子 50周年記念公演
【第1部】お芝居ステージ『ドタバタ笑歌劇 神社にラブソングを』
出演:水谷千恵子
高橋ひとみ、生駒里奈、バッファロー吾郎A
ずん/ハリセンボン/どぶろっく/阿佐ヶ谷姉妹 ※日替わり出演(クワトロキャスト)
YOU/はいだしょうこ ※日替わり出演(ダブルキャスト)
野村将希
武田真治
【第2部】歌のステージ『千恵子オンステージ』
出演:水谷千恵子
八公太郎、倉たけし、六条たかや ※日替わり出演
浜ローズ ※日替わり出演
◎東京公演(明治座):2021年6月4日(金)~13日(日)
〈明治座HP〉https://www.meijiza.co.jp/lineup/2021/06/
◎福岡公演(博多座):2021年6月25日(金)~7月4日(日)
〈博多座HP〉https://www.hakataza.co.jp/lineup/202106/mizutani/