「ジャニーズクイズ部」のメンバー、SnowMan・阿部亮平

 今、テレビ業界のキャスティング会議で「ジャニーズクイズ部」というフレーズがホットワードの1つになっている。

6人のうち、5人がジャニーズJr.

 ジャニーズクイズ部は、ジャニーズ事務所の所属アイドルたちが約1年前の外出自粛期間中に結成したユニットで、主なメンバーは、Snow Man・阿部亮平、Travis Japan・川島如恵留、美 少年・那須雄登と浮所飛貴、7 MEN 侍・本高克樹、Aぇ! group・福本大晴の6人。(※本高の高は、正しくははしごだか)

 ジャニーズJr.公式エンタメサイト『ISLAND TV』で早押しクイズの動画などを投稿するほか、徐々にクイズ番組への出演につながり、さらにここにきて彼らの露出が格段に増えている。

 たとえば、この2週間あまりで放送された主なクイズ・知識系の番組だけを見ても、5月24日の『ネプリーグ』(フジテレビ系)に川島、浮所、本高、25日の『林修の今でしょ!講座』(テレビ朝日系)に浮所、26日の『よるのブランチ』(TBS系)に本高、31日の『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)に阿部、『教科書で学べない 今そこにある危機』(日本テレビ系)に浮所が出演。

 6月に入っても、1日の『今夜はナゾトレ』(フジテレビ系)に浮所、『潜在能力テスト』(フジテレビ系)に浮所、『林修の今でしょ!講座』に川島、『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』(朝日放送・テレビ朝日系)に浮所、6月2日の『くりぃむクイズ ミラクル9』(テレビ朝日系)に那須が出演。また、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』には各メンバーが出演を重ねているほか、昨年8月と今年3月の2度にわたって“ジャニーズクイズ部チーム”として出演している。

 もちろんこれ以外のバラエティーや情報番組などにも出演するなど、彼らの露出が増えているのは間違いない。阿部以外はCDデビューしていないジャニーズJr.であり、年齢も阿部が27歳、川島が26歳、本高が22歳、福本が21歳、那須が19歳、浮所が19歳と若く、先輩ジャニーズを差し置いてチャンスをつかんでいることに驚かされてしまう。

クイズ番組とクイズコーナーが乱立

 なぜ彼らがこれほどチャンスをつかめているのか。

 その前提として、まず挙げておかなければいけないのは、クイズ番組の多さ。現在ゴールデン・プライム帯で全国放送されているものだけでも、『ネプリーグ』、『クイズ!THE違和感』(TBS系)、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』、『今夜はナゾトレ』、『潜在能力テスト』、『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』、『東大王』(TBS系)、『くりぃむクイズ ミラクル9』、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』(日本テレビ系)、『99人の壁』(フジテレビ系)、『世界ふしぎ発見!』(TBS系)の11本がある。

まだ19歳の美 少年・那須雄登(左)と浮所飛貴(右)

 さらにこれら以外でも、番組内にクイズコーナーを設けてクイズ自慢の芸能人をキャスティングする構成が多い。

 たとえば、6月2日の『ヒルナンデス!』では、“キッチンクイズ”というコーナーに浮所が出演していた。ジャニーズクイズ部のメンバーは、すでに昼の情報番組にも進出しているのだ。

 クイズ番組が多いということは、必然的にテレビ誌やネット記事などへの出演チャンスも増える。実際、彼らはここ最近だけで『ザ テレビジョン』『TVガイド』『TV LIFE』『TVstation』『TVnavi』『TVfan』などのテレビ誌に登場。デビュー済の先輩ジャニーズに肩を並べるほどの存在感を見せ、顔と名前を売っている。

 一方、彼らを起用する側のテレビ局は、昨春の視聴率調査リニューアルによって視聴者層の若返りを実行中。とりわけスポンサー受けのいい若年層を集められるタレントを求めているだけにジャニーズクイズ部のメンバーは最適であり、「今後の伸びしろを考えても、押さえておきたい存在」と言われている。

 特筆すべきは、「視聴率調査のリニューアルで視聴者層の若返りを図ろうとしているときにコロナ禍に襲われ、それがきっかけでクイズ部が結成された」というタイミングのよさ。運のよさもあるが、逆境をチャンスに変えるポジティブさを称えるべきだろう。

他事務所も「ウチでは絶対にできない」

 ジャニーズ事務所としても、嵐の活動休止に加えて、V6も今年11月1日での解散を発表するなど世代交代が急務となる中、King & Princeに続いてSnow ManとSixTONESのデビューも成功。その3組に続くグループも仕掛けていきたいところで、クイズ部が各グループを知ってもらうための入口となり、引いてはジャニーズJr.全体に興味を持つきっかけとなっている。

 また、ルックスのよさと学歴を併せ持つ彼らには、「賢くてカッコいい好青年」というイメージがあり、その好印象は各グループやジャニーズ事務所全体にも及ぶ。

 最近はジャニーズクイズ部のメンバー以外にも高学歴を売りにした所属タレントが増えているが、それだけで番組に出られるほど甘い世界ではない。その点、クイズの強さは現在のテレビシーンで大きな武器となり、さらに早押しクイズで培った反応の速さも制作サイドにとっては魅力的に映るという。

 それにしてもジャニーズ事務所の巧みな戦略には感心せざるを得ない。他の芸能事務所でマネジメントを手がける知人は、「うらやましいけどウチでは絶対にできない」と言っていた。大量の若手アイドルを抱えるジャニーズ事務所だから可能な戦略であり、その凄まじいスケールメリットを存分に生かした戦略とも言える。

 さらに、「各グループからの選抜ユニット」という形の売り出し方もジャニーズ事務所ならではだろう。このような選抜形式のユニットは、昨年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)や、現在放送中の『VS魂』(フジテレビ系)でも見られる方法であり、各グループの知名度アップやファン獲得などの相乗効果が得られている。

 今回の成功を受けて、今後はどんな「〇〇部」が生まれていくのか。大所帯のジャニーズ事務所なら、複数の「〇〇部」が各局の番組で同時活躍しても決して驚かない。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。