(左から)設楽統(バナナマン)、加藤浩次(極楽とんぼ)、川島明(麒麟)、山里亮太(南海キャンディーズ)

 情報番組の司会者といえばお笑い芸人が通説となってきているが、視聴者はどう見てる? 1000人の女性視聴者と芸能評論家の宝泉薫さんが徹底採点!

女性1000人が選ぶ“芸人司会者番付”

 編集部が女性視聴者1000人に聞いた「“民放”ワイドショー、情報番組の上手な司会者ランキング」で1位になったのは『スッキリ』(日本テレビ系)の加藤浩次

つまらないことをつまらないと言える。コメンテーターの発言にも鋭く突っ込める」(51歳・パート)のような絶賛もあれば「消去法で」(42歳・主婦)という消極的評価もあるが、まだまだ人気は健在だ。

 その芸風は、正義感を前面に押し出すこと。ワイドショー草創期に「怒りの小金治」と異名をとった桂小金治を思い出させる。庶民の側に立ち、その言い分を代弁しようとし続けてきたことが、今年で16年目という長期政権につながっているのだろう。

 ただし、怒ればいいというものでもない。コメンテーターとして実績を挙げ、ワイドショーのMCに起用された立川志らくも似た芸風だが、司会者としてはうまくいかなかった。

 では、加藤がどう違うかというと、共演者の活かし方だ曲がりなりにもコンビ芸人のツッコミ担当だからか、水卜麻美アナや近藤春奈、山里亮太といった面々をいじることで「面白そうな空気」をかもしだしてきた。

 とはいえ、この4月から水卜アナや春菜が番組を離れ、武器を削がれた感もある。吉本興業の闇営業騒動で会社を批判し、結果的に契約を打ち切られたことも響いてきそうだ。

 そもそも、自分自身がスキャンダルになってしまったのは、ワイドショー司会者としては痛い。それを世間が忘れるまでとどまっていられるだろうか。

 2位には『ノンストップ!』(フジテレビ系)の設楽統が入った。「持論を展開しないのが心地いい」(47歳・パート)「機嫌が悪いと感じる日がない」(52歳・主婦)といった指摘に加え、この人の魅力は「聞き上手」(47歳・主婦)ということに尽きる。

 かつて『話を聞かない男、地図が読めない女』という本が話題になったが、設楽は「話を聞いてくれる男」なのだ。なにせ、あの和泉節子のお説教まで我慢強く耳を傾けるのだから、普通の男にできることではない。

 そんなところが女性視聴者にウケる。毎年恒例の女子アナとの海外旅行企画など、自分が設楽と一緒にいるみたいな気分で「疑似不倫」を妄想している主婦もいるのではないか。

 3位の川島明は新番組『ラヴィット!』(TBS系)のメインMCになったばかり。「頭の回転がよく低音ボイスも心地よい」(40歳・主婦)「物腰が柔らかいし、ゲストに対して威圧感がない」(57歳・主婦)といった声が集まった。

 この番組はとにかく出演者が多く、それも日替わりだったりする。芸人やアイドル、インフルエンサーといったさまざまなジャンルの人々を手際よくさばいていく姿は、時代劇で何十人斬りに挑む剣豪のようだ。それを可能にするのは「どんなネタでも知っている。ツッコミの種類が豊富ですごい」(49歳・会社員)というスキルである。

 先日もレイザーラモンRGの「私、歌が好き」という唐突なボケを「ヒステリック・ブルーの『春』ね」とすかさず拾っていた。アインシュタインの稲田直樹やくっきー!のような若干朝向きとはいえない芸人のクセの強さも、川島が見栄えと声のよさで中和させているのである。

 が、いかんせん、番組を見ている人が少ない。数字がとれたのは、松山英樹が優勝したゴルフ中継の流れで遅れて放送開始された日だけだ。毎日、ゴルフ中継をやってもらうわけにはいかないしなぁと思っていたら、TBSが『ラヴィット!』前の番組『あさチャン!』枠でエースアナの安住紳一郎を投入するというニュースが飛び込んできた。

 そこまでなんとか持ちこたえていれば、安住効果で浮上できるかも。

日曜日のベテラン対決!

 日曜朝10時台では、ベテラン芸人の司会対決が展開されている。歴史が長いのはこの秋で満20年となる『サンデー・ジャポン』(TBS系)だ。

 その司会が、爆笑問題「頭がいい。政治の話にも説得力がある」(46歳・会社員)という太田光と「前妻との離婚の対応がよくて女性の味方の気がしています」(42歳・会社員)という田中裕二のコンビである。

爆笑問題

 太田が暴れれば、田中がフォロー。田中が体調を崩して不在だった時期には、このコンビの絶妙さを実感させられた。

 また、人気者をつくるマネジメント能力も高い。壇蜜やギャルタレントを生み出し、局アナだった田中みな実のぶりっこキャラを開花させ、みな実にとって、卒業回のVTRは「今でもめげそうになったときに見返す」「お守り」だという。

 そんな『サンジャポ』と好勝負を繰り広げているのが『ワイドナショー』(フジテレビ系)。番組の顔はメインコメンテーターである松本人志だが、司会は東野幸治だ。

「感情がないけどそれが情報番組にはちょうどよい」(45歳・パート)「松本に対して媚びない。時間がきたらバッサリ切って進行できるのは東野だけ」(50歳・バイト)という指摘があるように、爆笑問題でいえば、太田に対する田中のような役回りをこなしている。

 そんな東野の「感情がない」キャラを見いだし、面白おかしくいじっていたのが10年前に引退した島田紳助。このレジェンドが手がけた番組の司会をいくつも引き継いだのは、今田耕司だが芸風はむしろ、東野のほうが継承している。毒舌で人や世の中の本質を引き出すトーク術。松本が東野の司会に信頼を置き、進行を任せているのは、自身も尊敬する紳助の影をそこに重ねているからかもしれない。

 ベテランの芸人司会者には、ナンチャンこと南原清隆もいる。こちらは冠番組でもある『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)が11年目に突入した。そのあいだに『笑っていいとも!』(フジテレビ系)が終了したことで、ほのぼの系の「お昼の顔」をタモリから引き継いだ感じだ。

 実はその司会ぶりも、タモリに通じるところがある。タモリはある時期から「おじいちゃん」キャラとして振る舞うことで場を和ませるようになった。南原も有吉弘行や陣内智則といった後輩芸人に対し、その時代遅れぶりなどをいじらせたりしている。そこが「威圧感がないから安心できる」(52歳・主婦)という評価につながっているわけだ。

 そのキャラには、一種の子どもっぽさも含まれる。クイズ企画で勝負にこだわり、ムキになる姿もまたなんとなく「安心」をもたらすのだ。そういえば昔、伝説的コント番組『夢で逢えたら』(フジテレビ系)を取材した際、共演メンバーだった野沢直子が南原のことを「小学生の男子みたい」と評していたものだ。

 相方のウッチャンこと内村光良が「紅白」のような派手な大仕事をこなすなか、こちらは狂言に挑戦するなど、どこか浮世離れしたタイプ。そのあたりが得がたい魅力でもある。主題歌が槇原敬之ではなくなっても、ナンチャンがいる限り『ヒルナンデス!』は安心だ。

 平日昼にはもうひとり、芸人司会者がいる。『ひるおび!』の恵俊彰だ。この番組はかれこれ10年、この時間帯の視聴率トップなので、かなりの勝ち組といえる。

恵俊彰('11年)

 その成功の理由は、やる気と努力、そして体力だ。長渕剛を尊敬しているので、世の中に影響を与えたいというモチベーションが高く、上昇志向も強い。「それなりに勉強したんだろうな」(60歳・主婦)と感じさせる雰囲気もあり、おまけに子だくさんだったりもするのだ。

 実は帯番組の司会者には、薬丸裕英や谷原章介のように子だくさんな人が目立つ。おそらく、バイタリティーにあふれマメな性格の人が向いているのだろう。

 そんな恵のお手本は関口宏。『東京フレンドパークII』(TBS系)で17年間、ハイパーホッケーをしながら、その司会術を見てきた。例えば、関口がゲストの名前を忘れたとき「あなた」と呼び変えて切り抜けることに感心したという。たしかに、長寿番組では、ほどよくラフなスタンスも大事だ。そこが田崎史郎のような大ベテランの政治評論家にも平気で突っ込める司会ぶりにつながるのかもしれない。

 なお、関口がかつて役者だったことを覚えている人がもう少ないように、恵にも「お笑い芸人だということを忘れてしまうから司会者としてうまいのですかね」(56歳・主婦)という声が。相方の石塚英彦風に「まいうー」かどうかはともかく、世間のイメージはすっかり司会者。今回のランキングが9位にとどまったのも、芸人という認識が薄れつつあるからだろうか。

今後注目の芸人司会者は……

 芸人司会者は今、層が厚い。タモリ、ビートたけし、明石家さんまのビッグ3がいまだに健在なうえ、爆笑問題やくりぃむしちゅーといったボキャ天世代も円熟期を迎えていて、それより若い世代の新規参入は難しい状況だ。

 そんななか、山里亮太がハードルを越えた。昨年4月『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)のスタートとともに、MCに就任。前番組がベッキーの不祥事でミソをつけたり、大黒柱の山口智充がやや失速したりという経緯に加え、彼自身のステータスが上がったことが決め手になったのだろう。

山里亮太

 そこにはいうまでもなく、蒼井優との結婚が作用している。一昨年の6月、大物女優をゲットしたことで、イメージは一変。ただし「きもい」「ブサイク」などと言われていたころから、芸人としての能力は高く評価されていた。

 たとえツッコミのうまさは芸能界随一で、引き出しも豊富。「僕が通るとモーゼみたいに開いてく」など、学を感じさせる自虐ギャグも言える。アンケートでも「どれだけ言葉のバリエーションを持っているんだろう」(36歳・バイト)といったコメントが寄せられた。ランキングでも5位という、まずまずの評価だ。

 では今後、ハードルを越えられるとしたら誰だろう。

 若さと勢いなら、EXITをはじめとする第七世代だが、その前に第六世代がいる。実際、そのなかのひと組であるかまいたち濱家隆一がチャンスをつかんだ。4月から『ZIP!』(日本テレビ系)の水曜パーソナリティーに起用されているのだ。

 ところが、5月に新型コロナウイルスに感染。休まざるをえなくなった。「色っぽい」(44歳・主婦)とか「一般人に対して敬意を持っていそうで、好感がある」(51歳・主婦)といった持ち味を発揮するのは、復帰後に期待だ。

 ほかには、小峠英二(バイきんぐ)について「まわしがめちゃくちゃうまい。なぜ司会者にならないのか」(39歳・会社員)という声が。また、森田哲矢(さらば青春の光)に対して「ワードセンスが抜群で生放送に強そう。司会者やってほしいけどルックスが朝昼の顔ではないのかも」(32歳・会社員)という指摘もあった。

 この朝昼向きか夜向きかという問題はけっこう重要で、小峠にしても今はまだ夜向きなのだろう。あるいは、朝昼でも番組内のコーナーなら任せられるかなという位置づけに見える。

 しかし、かつては山里もそういう存在だった。小峠も坂口杏里との件が示すように、けっしてモテないわけではない。今度はもっと正統派の大物とくっついて(?)飛躍したいところだ。

 逆に、女性問題で消えた人もいる。『王様のブランチ』(TBS系)3代目司会者の渡部建だ。見栄えのよさも知識も進行術もあり、芸人司会者界のトップも狙っていけそうだったが「多目的トイレ不倫」で失脚したことは記憶に新しい。

 朝昼の情報番組やワイドショーは、女性視聴者が多い。芸人司会者の浮沈も、女性との関わり方や世の女性たちが持つイメージがものをいうのだ。

ワイドショー、情報番組の上手な芸人司会者ランキング
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。