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 夫から不倫疑惑を公表された熊田曜子や、中華街デートが報じられた福原愛、自身の不倫が原因で離婚をした岩崎恭子。また不倫を認め謝罪したものの、離婚には至らなかった後藤真希や斉藤由貴……そのパターンはさまざまですが、「既婚女性の不倫」が世間に取り上げられる機会は、着実に増えています。

 そしてこれは、芸能界に限ったことではありません。

妻の不貞を疑い、探偵に依頼する夫が増加

「最近では、不倫や浮気調査のうち、妻の不貞を疑う“夫からの依頼”が全体の約4割を占めています」

 そう明かすのは、総合探偵事務所「株式会社MR」の岡田真弓社長。家事や子育て、職場での男女間の格差が問題となっている中で、浮気調査の現場では、「格差是正」が進んでいるようです。

「妻側の不倫が増えた背景として、女性が社会進出した結果、職場などで夫以外の男性と知り合う機会が増えたことが挙げられます。またかねてからの美魔女ブームや、上戸彩が不倫する主婦を演じて大ヒットしたドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)などの影響により、男性側も“ひょっとしたらうちの妻も不倫をしているかもしれない”と危機感を抱きはじめて、相談件数が増えていることが考えられますね

 夫が妻の浮気調査を依頼する場合、その動機も「妻の不貞の証拠を手に入れて、離婚を切り出したい」というものから「不都合な真実を直視してもう一度、やり直したい」という前向きなものまで、「実にさまざま」と岡田さんは語ります。

 ここからは、これまで岡田さんが立ち会った事例をご紹介します。

<今回の相談者の家族構成(すべて仮名)>
☆結婚15年目
夫:政彦(50歳):大手製薬会社の営業部長 ※相談者
妻:美紀(45歳):小児病棟に勤める看護師
息子:翔真(13歳):公立校に通う中学生

一方的に妻から離婚を切り出されて

「お恥ずかしい話ながら、2週間前から妻が帰ってこないんです。そしてつい先日は、電話で一方的に離婚を切り出されてしまって……。聞くと、“アナタとはもう限界だ”とそればかり。息子には、“おばあちゃんが具合悪くなったから、お母さんは看病のため家を空けている”と話していますが、そろそろ不審に思っているようです」

 そう語るのは、大手製薬会社で営業部長を勤めている政彦さん、現在50歳。スラリと伸びた背筋にシワひとつない夏物のスーツ、足元はピカピカの革靴、まさに「スキのない知的な男性」という印象です。

 大恋愛の末に結婚した政彦さん・美紀さん夫婦でしたが、ラブラブな状態はなかなか長くは続かないもの。特にここ最近、夫婦生活はご無沙汰だったといいます。離婚を切り出される原因を考えたところ、政彦さんの脳裏には、とある光景が浮かびました。

「3週間ほど前、妻の女友達がわが家に遊びに来たときのことです。僕は書斎で仕事をしていたのですが、ふとトイレに行くために廊下に出たとき、“やっぱりアラサー男子ってかわいいわよね! 私、今回は本気かもっ!”とはしゃぐ妻の声が漏れ聞こえてきたんです」

 そのときは、美紀さんが夢中になっている韓流アイドルの話をしているのかと思い、やり過ごしたものの、どうやら今となって政彦さんの「男の第六感」が働いたのです。

「妻が浮気相手に夢中になって、離婚を切り出したのではないか」そんな仮説が政彦さんの心の中に浮かび上がってきたといいます。

 離婚の申し出には応じたくない、浮気は「シロ」であってほしい──葛藤を抱きながら、政彦さんは、探偵事務所のドアを叩いたのです。

病院から退勤した妻を尾行すると

 前出の岡田さんは、次のように語ります。

「浮気など非があるほうの配偶者を『有責配偶者』と呼びます。一般的に有責配偶者からの離婚の申し立てには、必ずしも応じる必要はありません。もし美紀さんがクロだった場合、政彦さんは申し出を却下する権利がある。さらにその場合、政彦さんは、精神的苦痛を伴ったとして慰謝料を妻の不倫相手からも請求することもできます」

 離婚をはねつけるにせよ、その先に慰謝料を迫るにせよ、まずは妻の不貞を証明する「確たる証拠」が必要というわけです。
 
「浮気の証拠には客観性が重要であるため、誰がどう見ても浮気や不倫だと判断されるような証拠が必要になります。具体的には、街中でデートをする様子やラブホテルに出入りしている写真や動画があるといいでしょう」(岡田さん)

 この証拠写真を撮影する際、当然ながら配偶者と不倫相手の顔がはっきりと写っていることが重要です。「さすがに、そこまでの気力もスキルもない」と判断した政彦さんが探偵事務所に依頼したのは、まさにその点だったといいます。

 その後、探偵による尾行や張り込みによって出た結果は、「クロ」。病院から退勤した美紀さんを追うと、男と落ち合い、ラブホテルへ入っていったのでした。美紀さんは浮気をしていたのです。

「相手は、同じ病院に勤める年下の看護師でした。妻は昔からよくも悪くも、なにか1つのことに夢中になると、周りが見えなくなるタイプ。きっと禁断の恋バナを友達に打ち明けているうちについ夢中になってしまって、同じ家の中に僕がいることも忘れてしまったのでしょう。そして遊びが本気になって、“離婚したい”と言い出したのだと思います。とはいえ、息子はまだ中学生、とうてい離婚には応じられません」

浮気相手の男に夫が直談判した結果

 妻の浮気というショッキングな事実を突きつけられた政彦さんですが、次に向かった先は、なんと美紀さんの浮気相手のもとでした。

「証拠をもとに、慰謝料を請求しました。僕が“裁判をしますよ”と言ったところ、相手の男は青ざめて、すぐに“示談にしてくれ”と。裁判で大事になって、職場や家族にバレたくないと考えたようです。年齢を聞くと、まだ彼は32歳、独身でしたが、今後のキャリアを考えると示談は当然の判断だといえます。彼としては、ほんの出来心だったようですが、そこに本気になって離婚を言い出す妻も、浅はかですよね(苦笑)」

 政彦さんが手にした慰謝料は、200万円。一般的に、慰謝料の相場と言われている額です。

 示談交渉の場に何度も立ち会ったことのある岡田さんは、こう話します。

「直談判は修羅場ですが、不倫相手に“いつどこで出会ったのか”“今後どうしていきたいのか”など、本当に知りたいことを聞ける場です。不都合な真実を目の当たりにするのはしんどいですが、ここで納得が行くまで話し合うことで、すぐに次のステップに踏み出せるというメリットもありますね」

 妻の不貞を知った際、政彦さんは、すぐに妻を問い詰めようとしたようですが、あえてそうしなかった理由を次のように明かしてくれました。

実は探偵事務所の担当者から、『待った』がかかったんです。離婚をしないとあらかじめ決めているのなら、“どういう手段が有効なのか、一緒に考えましょう”と言われて、はじめて冷静になりましたね。ヘタに問い詰めて、妻が逆ギレした結果、“今すぐ離婚する!”とも言い出しかねません。また夫婦間にトラブルがあっても、子どもに愚痴を聞かせてはいけないというアドバイスもありがたかったですね」

夫婦は日常生活を取り戻した

 直談判の後、間男はすぐに仕事を辞め、美紀さんの前からも姿を消しました。美紀さんもやがて家に戻り、はじめこそギクシャクしたものの、離婚の二文字を口にすることはなくなり、それまでどおりの日常生活を取り戻したといいます。

 もちろん美紀さんは、政彦さんが浮気の事実を突きつめ、浮気相手だった男性から慰謝料を請求していたことは、とうてい知る由もありません。

 その後、政彦さんに話を聞くと、笑いながらこんな話をしてくれました。

「家の中で、妻が女友達と電話をしながら“もう彼から連絡が来ないの〜!”と楽しそうに愚痴っていました。妻の脇が甘いのは、自分の火遊びだけはバレない、という絶対の自信があるからでしょうね(笑)」

 最後に。息子さんのためとはいえ、なぜ政彦さんは、不貞の妻を許せたのでしょうか?

「いやあ、僕も人のこと言えないんですよね。まだ息子が小さいころ、キャバクラにハマったり、火遊びをしていた時期もありましたからね……。そのことは、妻にはバレずに終わりましたが、結局、似た者夫婦なんですかね。今回の慰謝料の200万円はまるごと、僕の趣味のバイクに使わせてもらいますけど(笑)」

 愛のカタチは、夫婦の数だけ。長い人生においては、互いの「スネの傷」をあえて責め立てず、関係を続けていく。そんな選択肢もアリなのかもしれません。

※プライバシーを守るため、実際の事例を一部変更、再構成しています。

《取材・文/アケミン》