YouTuberの退社が続いている事務所『Kiii』HP

「ちょっとこのたび……あの、抜けます。Kiii」

 そう話すのは、登録者数431万人の大人気料理系YouTubeチャンネル『きまぐれクック』を運営するかねこ(以降、登録者数などの数字は6月11日現在)。魚を捌くことを得意とし、魚料理の動画は毎回100万回再生を超える、日本でトップクラスの人気ユーチューバーだ。

「『Kiii』とは、ユーチューバーなど動画投稿者のマネージメントを主に行う会社。白い覆面が有名なユーチューバー『ラファエル』さんなどが所属し、動画投稿者向けのマネージメント会社としては、わりと大きいほうですね。『きまぐれクック』のかねこさんは2017年の設立初期から所属し、所属クリエイターの中でも古参かつトップの存在でした」(スポーツ紙記者)

 今回『Kiii』を抜けたのは、かねこだけではない。多くの人気ユーチューバーが、同じタイミングで退社している。

 近年流行しているラップの“フリースタイルバトル”など、リアルの現場でも活躍する『がーどまん』(『チャンネルがーどまん』、登録者数177万人)。大学サッカー部出身で学生時代から“本田圭佑モノマネ”などを披露しネット上で人気を博していた『MAKIHIKA』(登録者数45.7万人)。料理系ユーチューバーの『とっくん』(登録者数64.3万人)。さらに数名が、わずか数日の間に事務所を去る決断を下した。

社長が突然解任された

 かねこは今回の件について、『Kiii』の社長交代を理由として挙げていた。最近になって突然、高田樹前社長が解任されたのだ。

解任については、高田前社長も当日になって急に告げられたんですよ。弁護士が部屋に入ってきて、出ていくように言われたそう。信頼する社長の解任に納得がいかないかねこさんは中栄一喜新社長に事情の説明を求めたものの、まともに応じてもらえなかったようで……。不信感から退社を決断することに」(同・スポーツ紙記者)

 人気ユーチューバーが相次いで立ち去ることとなった今回の騒動について、芸能プロ関係者は次のように話す。

「事務所を辞めた人たちは、みんな高田前社長を慕っていました。“お世話になったマネージャーやスタッフが辞めるから、自分も一緒に辞める”というのは、芸能プロダクションでもよくある話です。近年、芸能界では、大手プロダクションからタレントの退社や独立が相次いでいますが、その裏には長年、信頼関係を築いてきたスタッフの去就が絡んでいることも多い。人望のある高田前社長の解任を聞いて後を追う面々が出てくるのは、事務所としてごく自然なことかと」

 しかし、動画投稿者が多数所属する別の芸能プロ関係者に話を聞くと、退社に関しての考え方は、テレビや映画を主戦場にするタレントよりもユーチューバーたちのほうがはるかに柔軟だという。

ユーチューバーは、事務所に頼らずとも自分で固定ファンを持っていることが多い。芸能プロダクションの場合は“新人をイチから育てる”ということも多く、タレントは事務所に対して恩義を感じやすいんですが、それに対して彼らはチャンネル運営や動画撮影、編集も自分たちのチームで出来てしまう。事務所への依存度が限りなく低いんですよ」

 『Kiii』を抜けることになったユーチューバーたちも、かつての居場所に未練はないようだ。

「彼らも、『Kiii』という場所にこだわって在籍していたわけじゃなく、高田前社長の考えに共感して一緒に仕事をしていただけ。肝心の高田さんが解任されるとなったら、“別に『Kiii』にいなくたってメシは食える”と迷わず去ることを選びますよね。在籍する意味を感じなくなったんでしょう。活動する場は自分たちで好きに選べますし、退社にも踏み切りやすい。芸能プロに在籍するタレントに比べて、ユーチューバーは事務所と対峙したときの立場がかなり強いんです」(同・芸能プロ関係者)

前社長に自らの意思でついていく

 信頼する社長の解任を受け事務所を去った人気ユーチューバーたち。大手事務所を後にした彼らは、独立することになるのか。11日、かねことの親交が特に深い釣り系ユーチューバーの『渥美拓馬』(登録者数53.8万人)がYouTubeに動画をアップし、自身も『Kiii』を退社することを発表。さらに、自分たちの今後の居場所を明かした。

《Kiiiの前社長が辞めて 新しく事務所を立ち上げることになったので 前社長と親交の深いクリエイターは 前社長の事務所に自らの意志でついていく》

 高田氏の背中を追い、早くも新事務所へ移ったというのだ。事実を確かめるべく、『Kiii』を退社したユーチューバーの多くがファンレターやプレゼントの送り先として記載している会社の登記情報を確認してみると、その代表には確かに“高田樹”の名前があった。

 詳しい事情を尋ねるべく、高田氏の解任理由について『Kiii』に問い合わせたものの、期日までに返答はなかった。

 スポーツ選手、医師に次いで“子どもの夢”にランクインするユーチューバー。成功すれば億単位の年収が得られることもある。しかし、この“職業”が生まれ、環境が整備され出したのはここ数年のこと。まだまだ成熟していない業界とあって、こういった人事的なトラブルは今後も続きそうだ。

 ユーチューバーを目指すお子さん、そしてその保護者はいろいろとご注意を……。