左から加藤綾菜、クリコ(保森千枝)

 その年の差45歳。加藤茶さんの妻として健康を支え続けて10年目。「介護」はいずれやってくると覚悟を決め現在猛勉強中。そんな中で生まれた驚きや疑問。この超高齢化社会に、前向きになれる介護情報を隔週でお届けします。

第3回 介護×食事 【2】“介護食”をもっとおいしく!

※前回の記事(加藤綾菜「誤嚥には気を遣います」夫・加藤茶との生活で勉強を始めた介護食

――介護食を取り巻く現状はどうなっているの? 前回に引き続き、料理研究家・介護食アドバイザーのクリコ(保森千枝)さんと語り合っていただきました。

綾菜 先生のご主人が口の中のがんの手術を受けた9年前には、介護食の情報が全然なくてご苦労されたとのことでした。私も先日、都心の大型書店に行ったところ、一般書籍の棚に介護食の本が全然なくて驚きました。

クリコ 残念なことに、状況はあまり変わっていないんです。書店では、介護食の本は“医療コーナー”にあることが多いんです。専門書扱いですよ。また、市販のレトルト介護食もほとんどが業務用。普通のスーパーにはほぼ置かれていません。

綾菜 しかも、あまりおいしくないですよね。

クリコ 高温で殺菌処理するので、どうしても独特のにおいや味の劣化は避けられないようなのです。手作りが難しくて、3食を市販品にしようとすると、お金がかかるし、栄養的にも十分じゃない。まだまだ課題はあると思います。

綾菜 介護が必要な人は、食欲が落ちている場合も多い。加トちゃんも、入院中は病院食がおいしくなくて全然食べなかったし、退院後も味覚と臭覚が落ちたせいか食欲がなくて、心配でした。料理をおいしそうに見せる工夫をしたり、ショウガやニンニクや梅干しなどを使って、少しでも風味を感じられるようにしたりして頑張ったことを思い出します。

 

「おかゆ事件」で得た気づき

クリコ 私の主人の場合は、食欲はあっても食べられるものが少なくて。ある日、いつものようにおかゆを作って出すと“おかゆの水分を減らしてほしい”と言うんです。当時は、私も全然余裕がなくて“毎日同じ分量で作っているのにどうしてそんなワガママを言うの!?”と腹が立ったのですが、実は水分と固形物が混ざったおかゆのようなものは食べるのが難しいんですよね。

 傷が治るにつれて口の中の状態も変わっていくことも当時はわからなくて、かわいそうなことをしました。その「おかゆ事件」もあって、見た目が華やかで、味もおいしく、栄養がとれて、小分けして冷凍もできる野菜や果物のピューレを使った料理を考案したんです。

綾菜 先生のお料理は、いろんな野菜のピューレを使われていて、色も鮮やかでおいしそうでした。いわゆる“介護食”という感じがしないのがいいです。

クリコ 繊維の多い野菜は、いくらゆでてもやわらかくならなくて、ピューレ状にすることを思いついたんです。これを野菜料理のベースにして、ほかの食材をまぜるといろんな料理に。介護食のフルコースもできますよ。

綾菜 やっぱり喜んで食べてくれる人がいるから頑張れるんですよね。先生がご主人のためにやってきたことが、今は多くの人に役立っているというのは、本当に素晴らしいことだと思います。

クリコ ありがとうございます。私はテレビで加トちゃんを見て育った世代。綾菜さんのサポートで、これからもずっとお元気で多くの人に笑いを届けてほしいです!

※次回は安藤なつさん(メイプル超合金)との介護対談をお届けします。

【最近の加トちゃん家】

 昨年の年末に加トちゃんの手形が浅草(オレンジ通り)に設置されました。仕事帰りに手形を見に行って、加トちゃんの手に自分の手を重ねて写真を何枚も撮って帰りました。周りの方は「あの人加藤茶の大ファンなんだ」と思ったかも。そうなんです。私は世界一のファンです(笑)。

浅草に新しく設置された加トちゃんの手形

かとう・あやな●1988年4月12日生まれ。2011年に加藤茶と結婚し、45歳の年の差婚で注目を集めた。夫を支えるため介護を勉強。「介護職員初任者研修」(旧ホームヘルパー2級)、「介護福祉士実務者研修」(旧ホームヘルパー1級)を取得。TWIN PLANET所属。

今回対談いただいたのは……クリコ(保森千枝)さん
料理研究家・介護食アドバイザー。2012年にご主人にがんが見つかり介護食の研究を始める。介護経験を生かし、「簡単においしく」「好みの味つけ」「家族と同じ献立」「美しい盛りつけ」をモットーとした介護食作りを提案している。

《取材・文/中村裕美(羊カンパニー)》