過去に「婚約不履行」で訴えられた森進一

 森進一(73)といえば『おふくろさん』、『おふくろさん』といえば森進一だ。多くの人は『おふくろさん』という言葉を見聞きした瞬間、森が顔をゆがませながら熱唱する姿を思い浮かべるのではないか。面白半分にモノマネをしてみたことだって、3人に1人くらいはいるだろう。

 そんな『おふくろさん』について、森が語った。5月31日放送の『ファミリーヒストリー』(NHK総合)でのことだ。

森進一の「婚約不履行」騒動

 森の母は夫に捨てられたあと、女手ひとつで森を育てた。『おふくろさん』は彼女がモデルとされ、世間にも広く知られることとなったが、ここで災いも起きてしまう。

 1972年、森が会ったこともない女性が、森に犯され、子どもを産んだと主張。「婚約不履行」で訴えたのだ。ファンを名乗るその女性は、森の家を一度訪ねてきただけの存在だった。

「母親は、ファンの方だって言うから息子がお世話になるっていうことで、お茶を出したらしいんですね。それを飲ませたことが自分はいけなかったと」

 相手の女性を変にその気にさせてしまったのではと、自責の念にかられた母は翌年、自殺。その後、森の無実は証明されたものの、引退も考えるほど落ち込んだ。

 それでも、立ち直って歌い続けていくわけだが、この悲劇が森にとっての『おふくろさん』をさらに特別な、それこそ母の形見みたいな曲にしてしまう

 そして、第二次『おふくろさん』騒動とでもいうべきものが勃発するわけだ。

 2007年、作詞者の川内康範さんが「森には歌わせない」と『おふくろさん』の封印を要求。森が長年、この曲の冒頭に、別の作詞家が書いた短いフレーズをつけた改変版を歌っていたことに対する怒りが原因だった。

 森は当初、事態を甘く見て「もう、森の『おふくろさん』になってますから」と強気なコメント。だが、僧侶の子でもある川内さんは森の母の葬儀に参列して、お経をあげるほどの仲だったから、森の態度を非礼に感じた。

 この結果、川内作品はすべて歌えないことに。封印が解かれたのは川内さんの死後、その息子との話し合いによってだ。これにより、森は『おふくろさん』を歌って「紅白」を卒業することもできた。

 ただ、この番組では別のくすぶりも感じられた。森の息子であるTaka(ONE OK ROCK)とHiro(MY FIRST STORY)も登場。「負けん気とか突破力とか、僕もそのDNAを受け継いでる」(Taka)、「みんな歌やってる家族っていうのもなかなか珍しいと思う」(Hiro)と語ったが、ふたりの“おふくろさん”である森昌子について一切触れられることがなかったのだ。

 ふたりのDNAの半分は昌子からだし、昌子も家族であることに変わりはない。息子たちと母の関係は良好なはずなので、これは森が“別れたくなかった”と告白していた離婚への忖度だろうか。番組で紹介された幼少期の親子写真も、昌子抜きのものが使用された。なんだか、この「ファミリー」のややこしい「ヒストリー」まで垣間見えた感じだ。

 思えば、森は最初の妻の大原麗子さんとも4年で離婚。彼女の「家庭に男が2人いた」という発言が話題になった。前出の「ファンを名乗る女性」の件も含め、森はいまひとつ、女運がよくないというか、女難の傾向があるのかもしれない。

 息子たちも公私ともに、女性にはモテるだろう。女難のDNAが受け継がれていなければよいのだが──。