1億円貯められる人には意外な“共通点”が(画像はイメージです)

「お金持ちでも自動販売機を使わず、マイボトルを持参しています」と教えてくれたのは、ファイナンシャルプランナーの藤川太さん。お金持ちが多く住むエリアで趣味のテニスをしていたときに気づいたという。

「コートの近くに自販機はあるものの、ドリンクを買っている人はほとんど見当たらない。よく見ると、みなさん大きなマイボトルを持ち歩いて水分補給をしていました。普通の人はたった150円くらい使ってもいいやと考えがちですが、そこの節約意識こそが1億円を自力で貯められる人の共通点かもしれません」(藤川さん、以下同)

実は質素な資産家の暮らし

 資産1億円と聞くと、さぞかしゴージャスな暮らしをしていると思いがち。ところが藤川さんのまわりの資産家たちの実態はそうではない。

今年のペットボトル消費量は世界で5831億本を超える見通し。マイボトルの普及は環境にもやさしい(画像はイメージです)

「彼らの生活は質素で堅実。テレビに出ているような派手なお金持ちのイメージからはほど遠い暮らしをしている人が多いです。そもそも1億円を貯めるというのは、必死に勉強をして東大に入るようなもの。世間を見渡せば東大卒の人は意外といますが、彼らはきちんとゴールを見据えて着実に勉強をしてきた人がほとんどです。1億円を貯めた人たちも、ただラッキーで貯まったわけではありません。今やっているドラマ『ドラゴン桜』の生徒のように、目標に向けてしっかりと戦略を立てて、人並み以上の努力をしてきた人なんです」

 親の財産を引き継いだ資産家や上場益を得たような事業家を除けば、1億円を自力で貯めた人は大きく3つのタイプに分類できる。節約によって堅実にお金を貯める節約型、お金の運用で資産を生み出す投資型、所得が高い職業に就いている高収入型の3つだ。

「一般的なサラリーマン家庭でも1億円の資産を持っている人というのは、みなさんが考えている以上に多くいます。そのほとんどが節約型で、堅実な生活や節約自体を楽しんでいる“誇り高きケチ”という側面がありますね。

 例えば、外食をするときも徹底的に下調べをして、ポイントやクーポンをしっかり使っています。“こんな場所でこんなにいいものを食べて3000円で済んだよ!”なんて、うれしそうに教えてくれることも

 彼らの行動を見習えば、われわれも1億円を貯めることは決して夢ではない。ここからは具体的に“誇り高きケチ”たちの考え方を見ていこう。

 藤川さんがとある資産家の方とカフェで待ち合わせをしたときのこと。その人は店内に入ってくるなり、「危なかった~! ここに来るまでにコンビニがたくさんあって、買い物の誘惑に負けそうになったよ!」と笑っていたそう。浪費の誘惑に負けないように、普段からコンビニのある道をなるべく通らない……そこまで節約意識を徹底している一例だ。

手の甲にメモして買いすぎをストップ

「こんなにお金を持っている人でも、そんなことを考えるんだと驚きました。最近はコンビニでも安価な商品が増えましたが、彼らは基本的には割安なスーパーで買い物をしていて、業務用スーパーなども愛用しているようです

 別のエピソードもある。藤川さんがあるお金持ちの女性の買い物に同行したときに、「私はカートを絶対に使わないんです」と言われて驚いたそう。カートはお客さんがたくさん買い込むための店側の工夫で、その女性は「自分の手でカゴを持って重みを感じないと、つい買いすぎちゃいます」と笑っていた。

 さらには、買い物には夫や子どもを連れていかないというのもルールのひとつ。いつの間にか、カゴの中にお菓子やおつまみが入っていたりしないよう、予定どおりの買い物をするためだ。また、別の女性は買い物リストを作るとき、メモ帳を使わずに手の甲に書くことにしているという。理由は、余白が多いとそれだけたくさん書けてしまうから。

カートを使った買い物は、ついで買いを誘発してしまう。必要最小限で済ませるにはカゴだけで買い物しよう(画像はイメージです)

手にたくさん書くと目立ってしまって恥ずかしいし、スペース的にそんなに書くこともできないので、結果として必要最小限のものだけ厳選できる。自分が買い物の誘惑に弱いことを知っていて、本当にいろいろと考えているんだなと感心しました」

 1億円を貯める人の家にも共通点は多い。貯めている人の家庭は物が少なく、すっきりとしている傾向がある。

「一方、貯められない人の家には、玄関先に土だけのプランターがあったり、靴箱の上にはクレーンゲームで取ったぬいぐるみがズラリと飾ってあったりします。きれいに並べてあっても、実は物の管理ができていない証拠。物の数だけ使われたお金があり、物の管理ができない人は家計管理もできないことが多いです

 冷蔵庫にも大きな特徴がある。節約型の資産家たちの冷蔵庫は、中身がきちんと整理整頓されていて、全体の容量の半分も入っていない。その代わりに冷凍庫の中はギッシリ。特売品をきちんと切り分けて冷凍保存し、いつでも使いやすい工夫がなされている。さらには冷蔵庫のドアに在庫リストを貼って、不要な開け閉めをしないよう節電対策をしている家庭も。

お金持ちの家は玄関から片づいている。「ごちゃごちゃした玄関は、物の管理ができていない象徴」と藤川さん

さらには、1億円貯めている人の家は、トイレがきれいという共通点もあります。風水やスピリチュアルといった話ではなく、掃除をこまめにできる人は家計管理もこまめにできるということの証でしょうね。ひとつひとつは小さなことのように思えますが、お金を貯められる人は節約をうまく継続できる仕組みをきちんとつくりあげています」

資産家のスマホに“課金”はありえない

 藤川さんの分析によると、お金を貯められない人の家計簿に最近増えてきているのが「課金」という項目。スマートフォンのゲームアプリでちょこちょことお金を注ぎ込んでいたり、不要なサブスクリプション(月々定額使い放題のサービス)に登録し続けていたりと、さも必要な固定費のような顔をして支出欄に居座っている。

「節約型の資産家たちの家計簿では課金の文字をほとんど見たことがないですね。遊ぶとしても、上手に無料の範囲でやっているようです。ほかにも、いち早く格安SIMのスマホに乗り換えて“通信費がこんなに安くなったよ”なんて、喜んで報告してくれるような方も多いです」

 一方で、節約できない人たちは「大手キャリアじゃないと恥ずかしい」といった理由で、大手キャリアのスマホを使い続けていることも多い。

節約となると、つい月々の食費やお小遣いなどの変動費をガマンすることだけを考えがち。1億円を貯めることができる人は、通信費の削減や加入保険の見直しなど、まずは固定費を削ることを考えます。一度削ってしまえばその効果は長続きしますし、投資よりも堅実にお金を残すことにつながります」

 少し動いただけでものどが渇く季節の到来。マイボトルを持つ習慣が、1億円の資産をつくるきっかけになるかも。

お話を伺ったのは……藤川 太さん●ファイナンシャルプランナー。「家計の見直し相談センター」を設立後、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。『1億円貯める人のお金の習慣』(PHP研究所)など著書多数。

(取材・文/吉信 武)