※画像はイメージです

 厚生労働省の調査によると、いま日本には約2800万人もの腰痛患者がいるとされている。そのなかで痛みの原因がわかっているのはたった15%にすぎず、残りの85%の人は原因不明の「非特異的腰痛」に該当するのだとか。

お腹側の神経のズレがつらい腰痛の原因かも

「原因のない腰の痛みは筋肉痛でも関節痛でもなく、お腹が原因の神経痛の可能性が非常に高い」

 と指摘するのは、日本で初めてストレッチ専門スタジオを開設したカリスマトレーナーの兼子ただしさん。

「日常の姿勢などが原因で、お腹の筋肉が硬くなる『腹壁攣縮(ふくへきれんしゅく)』という状態を放っておくと、お腹にある神経が本来あるべき場所からズレてしまいます。すると、ズレたお腹の神経とつながっている腰の神経にもズレが生じ、動いたときに刺激を受けて痛むようになるのです」(兼子さん、以下同)

 腰のマッサージを受けるといったん痛みが消えるのは、筋肉がほぐれることで神経への刺激が一時的に和らぐから。

1回で痛みが軽減、継続で根本から解消!

「しかしこれだと、しばらくしてほぐした筋肉が硬くなればまた痛みが出てしまう。腹壁攣縮が原因である場合、神経のズレを正さなければ痛みの根本解決にはなりません」

 そのズレたお腹の神経を元の場所に戻すための方法が「お腹ストレッチ」だ。

「簡単にいうと、腰の痛む部分から真反対にあたるお腹側の、硬くなっている部分を見つけてほぐして、神経をあるべき位置へと移動させるという方法。理学療法の専門用語で『神経系モビライゼーション』といいます」

 神経を移動させるなんて素人には難しそうだが、簡単なストレッチ運動で実現できる、と兼子さん。

「1回でも痛みは軽減しますが、神経の位置を定着させるためには繰り返し行うことが大切。根気よく続けて」

 1回1分の「お腹ストレッチ」習慣で、つら~い腰痛と決別しよう!

慢性的な腰の痛みはお腹側に原因が!

 慢性的な腰痛に長年悩まされていたという兼子さん。トレーナーという職業柄、自分の身体を実験台にして痛みの原因を探っていくうちに、痛みを感じる部位の真反対にあたるお腹側の筋肉が硬くなることに原因があるということに気づいたそう。

痛みの原因はお腹側の筋肉が硬くなること 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

1分で腰の痛みが消える!「お腹ストレッチ」4ステップ

 ストレッチの目的は、筋肉をゆるめて、神経をすべらせ、ズレた神経を元の位置に戻し、定着させること。

【1】筋肉をほぐす

 硬くなっている筋肉をほぐす。腰が痛むポイントの真反対にあたるお腹の硬くなっている部分に、両手の指を2~3本ずつあて、口から息を吐きながら5秒間、イタ気持ちいいくらいの強さでしっかり押し続ける。これで硬くなっている筋肉がゆるむ。

●腰の両側が痛い人は……左右それぞれのお腹の硬くなっている部分を押す。

【1】筋肉をほぐす 硬くなっている筋肉をほぐす。腰が痛むポイントの真反対にあたるお腹の硬くなっている部分に、両手の指を2~3本ずつあて、口から息を吐きながら5秒間、イタ気持ちいいくらいの強さでしっかり押し続ける。これで硬くなっている筋肉がゆるむ。 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【2】手を離す

 両手をお腹から離して開き、肩の力を抜いてリラックス。

【2】手を離す 両手をお腹から離して開き、肩の力を抜いてリラックス。 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【3】顔を上に向ける

 両手を離して開いた状態のまま、顔を上に向ける。

【3】顔を上に向ける 両手を離して開いた状態のまま、顔を上に向ける。 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【4】神経をずらす

 上を向いたまま、軽くひざを曲げながら5秒かけて鼻からゆっくりと息を吸い、神経を正しい位置に戻す。

●横から見ると……ひざは軽く曲げる程度。顔をしっかり上に向けることで神経をずらしやすくなる。

【4】神経をずらす 上を向いたまま、軽くひざを曲げながら5秒かけて鼻からゆっくりと息を吸い、神経を正しい位置に戻す。 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【1~4を5回繰り返す】

【NG】首を前に突き出さない。アゴ下を伸ばすようにしっかり上を向くこと。

【NG】首を前に突き出さない。アゴ下を伸ばすようにしっかり上を向くこと。 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

試した人の約8割が痛みの半減を実感!

 兼子さんは自らが考案した「お腹ストレッチ」の腰痛改善効果を実証するために、外傷以外の腰痛自覚症状をもつ14歳~80歳までの男女100人を対象に、腰の痛みがあるポイントとお腹側の硬くなっているポイントに関する調査を実施した。すると、被験者のうち98人が腰とお腹のポイントが完全に一致。さらに、その硬くなったお腹のポイントをストレッチトレーナーがほぐしてみたところ、下のグラフのとおりなんと約8割の人の腰の痛みが半減したという結果が。これは期待できそう!

ストレッチ前を100としたときのストレッチ後の腰の痛み (出典:SSS「腰痛症の原因と考えられる腹壁攣縮について」の研究より作成) 

腰痛が消える「お腹ストレッチ」Q&A

「お腹ストレッチ」の効果を最大に実感するためのポイントを、兼子さんに教えてもらいました。

【Q】指で押す位置がよくわからない……
【A】腰が痛むポイントを正確に確認してからチェックしよう


 神経を正しい位置に戻すためにほぐすべき場所は、腰の痛むポイントから真反対にあたるお腹部分の、押して硬く感じるところ。

 見つけ方のコツは、まず腰を前後左右に動かすなどして痛むポイントの正確な位置を確認。その後、下記を参考にしながらお腹を押してみると、硬い部分が見つかりやすくなりますよ。

【硬くなっているところを探すコツ】
(1)まっすぐ立つ背筋を伸ばして直立し、両手は腰に。
(2)息を吸う顔を上に向け、大きく息を吸う。
(3)指で押してみる腰が痛むポイントから真反対にあたるお腹部分を親指でぎゅっと押して、硬く感じるところを探す。押すと痛みを感じる場合も。

硬くなっているところを探すコツ 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【Q】腰からお尻まで広く痛む場合の対処法はある?
【A】もう1ステップ追加でお尻の痛みを解消できる


 前ページの「お腹ストレッチ」4ステップのあとに下記の動きをプラスすることで、お尻まで痛む原因となっている神経のズレを元に戻すことが可能です。指で押してほぐすのは、腰が痛むポイントの真反対のお腹だけでOK。背中を丸めずに、しっかり上体を倒すことがポイントです。

●前から見ると……顔が下を向いてしまうと、神経のズレが戻しにくくなる。できるだけ顔を上げたまま、上体を前に倒して。

「お腹ストレッチ」(1)~(4)のあとにこの動きをプラス!

【神経をさらにずらす】

 両手を鼠けい部に添え、顔をできるだけ上げた状態で、上体を前に倒しながら鼻でゆっくり5秒間息を吸う。

神経をさらにずらす 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘

【Q】腰痛の再発予防のために心がけることは?
【A】「5秒呼吸」で気づいたときに姿勢をリセット!


 首が前に突き出ている、猫背、反り腰といった不良姿勢は、腰痛の原因となる腹壁攣縮を招きます。予防のためには、直立したときに頭、肩、腰、ひざ、足が一直線となる正しい姿勢を維持することが大切。呼吸するだけで正しい姿勢が作れる「5秒呼吸」で、姿勢をリセットする癖をつけましょう。

【簡単5秒!正しい姿勢の作り方】
(1)足を少し開きまっすぐに立つ
(2)鼻から5秒間息を吸う
(3)息を止めると正しい姿勢に!息を吸うと重心が自然と後ろに移り、前かがみの不良姿勢が矯正される。身体の中を膨らませるイメージで、大きく息を吸い込んで。

簡単5秒!正しい姿勢の作り方 撮影/森モーリー鷹博 モデル/辛島菜摘
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教えてくれたのは……ストレッチトレーナー兼子ただしさん
ストレッチスタジオ「スリーエス」代表。早稲田大学大学院スポーツ科学修士号取得。元プロキックボクサー。スポーツストレッチをベースに幅広く施術を行う。近著に『腰痛は1分お腹を押しなさい!』(あさ出版)

(構成/中村明子)

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