写真集のイベントに登壇した熊田曜子

  熊田曜子とその夫、一連の騒動はすさまじいものがある。

 夫が暴力を振るって逮捕されたとのニュースが飛び込んできたかと思えば、次は夫の告発により熊田の不倫疑惑が発覚。離婚をめぐって話し合いが始まったと発表されると、週刊誌上で果たし合いがはじまることに。

 熊田曜子といえば3児の母だが、39歳になってもグラビアを続けるグラドル界のレジェンドでもある。これまでに出した写真集はなんと38冊。その数は本人いわく世界一だそうだ。

「批判は気にならない」

《芸能界で生きていくうえで、私の唯一の武器なんです。グラビアの仕事がなければ、何の武器も持たず戦場に行く兵士みたいなもの。でも、需要がなくなれば終わってしまう》

 これは2020年10月にヤフーニュースの特集インタビューでの彼女の弁だ。たしかに安田美沙子やほしのあき、小倉優子など同世代のグラドルは結婚・出産を経てグラビアを卒業。その後はママタレとして活躍したり、表舞台からフェードアウトする者もいるなか、熊田はただひとり、写真集にDVDにと“現役”を貫いてきた。ただ、結婚して以降、彼女の芸能界の渡り方には葛藤が多かったように見える。

 デビューから毎年必ず1冊(枚)以上は新作グラビアを発表してきたが、2012年から2016年にかけては、本人の結婚・出産があり、初めての子育てで大変だったのか作品はゼロ。しかし、この間もメディアにはそれなりに登場している。たとえば2014年にライフスタイル誌『Saita(サイタ)』で「熊田曜子のママ&Babyに優しいオーガニックLesson」という連載が始まった。つまり、出産後はママタレとしての活動も模索していたのだ。一方で、コメンテーター的な立ち位置での出演も目立つように。

 しかし、それは本人の狙い通りにはいかなかった。

 2018年に子どもたち3人を連れて東京都墨田区の児童館分館を訪れたところ、「保護者1人につき子どもは2人まで」というルールがあったせいで入館できなかったと“施設名を名指しで”ブログに綴り、賛否が巻き起こった。

 2019年にはインスタグラムと情報番組『ノンストップ!』で“家で夕食を食べる約束を100回以上破られた”と夫への愚痴をこぼしたところ、一方の言い分だけをあけすけに話すのはどうなのかと炎上したことも。この件について、彼女はのちにインタビューで、《そういう批判はまったく気にならない》としたうえで胸の内を明かしている。

グラビア撮影に“結婚指輪”をはめて

むしろ、“熊田曜子は結婚してもご飯を作らなさそう”というイメージを持っていた人たちの耳に、あのニュースが入ったことで“なんだ、ちゃんとご飯作ってるんだ、母親やってるんだ”という印象を持ってもらえたので、プラスになったと思えたほどです》(2020年『週刊大衆』)

 炎上をものともしない強心臓ぶりもさることながら、この発言からわかるのは、”ママタレとして認められたい “、そして“できないママと思われたくない”という気持ちの表れであろう。しかし、どうしてもママタレ然としないのが熊田曜子。バラエティー番組などで芸人たちに求められる振る舞いもどちらかといえば、“色っぽい人妻”としてのソレだったような──。結局、その理由はママタレとグラドル、ふたつの両立を狙った彼女の欲深さにあるように思えてくる。

 産後しばらくして体型が戻ったのか、彼女は第2子出産後すぐ、2016年の夏にはグラビア業を再開、新作DVDを発売している。タイトルは『rebirth』、復活である。

 しかしながら、「親しみやすいママタレ」と「人妻系グラドル」、この相容れないふたつのジャンルを両立させることはどうしても不可能なのではないだろうか。グラドル出身のママタレがみな水着から卒業しているのは、スタイルを維持する難しさもさることながら、この両者が水と油の関係だと知ってのことだと思う。

 その点、やはり熊田はちょっとズレているというか、ほかとはスケールが違う。それを象徴するのが、結婚して以降、グラビアの撮影現場でポーズをとる彼女の薬指にいつも光るもの──。

(結婚指輪は)今までも今回も、ずっとつけるようにしていますしね》(同前)

 マジモンの結婚指輪で男をかき立てようとするあたりに、その倫理観が詰まっているような気がしてならない。せめてスタイリストが用意した小道具であれ! この匂いたつような空気感は、世間のママたちに支持される類のものではないだろう。

 熊田いわく、写真集を部屋の目につくところに置いても、夫は「なんで俺が見なきゃいけないの」とそっけなかったらしい。これが“二兎を追う者”が家庭にもたらした悲しき余波なのかも。どうにか修復できぬものか。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉