ネットカフェの「鍵付き完全個室」は犯罪の温床なのか(写真はイメージです)

 埼玉県さいたま市のインターネットカフェ「マンボープラス大宮西口店」で客の男が女性従業員を監禁した事件が起きた。男が立てこもったのは「鍵付き個室」。インターホン越しに捜査員の説得が続き、女性が救出されたのは事件発生から30時間以上たった翌日深夜だった。

多様化するネットカフェの使われ方

 この事件であらためて注目されたのは「鍵付き完全個室」という形態。

 窓もなく、天井部も開いていない。インターホン越しでないと声も聞こえない完全個室がネットカフェに必要なのだろうか。

「ここ数年は鍵付き個室はネットカフェの定番になっています。個室ブースに飲食の持ち込みをしなければ違法ではありません。

 '18年には《女性おひとり様も安心》とうたった全席鍵付き個室が売りの『ネットカフェDiCE(ダイス)』が登場。シャワールームやパウダールームを完備し、若い女性やカップルを中心に人気を集めています」(全国紙記者)

 コロナ禍でリモートワークをする人が増えて、ネットカフェは、ワーキングスペースとしての選択肢のひとつにもなっている。

立てこもり事件の現場となったマンボープラス大宮西口店での当日の様子

 一方で、その完全個室を利用して、アダルト目的に使用する人が増えているというのが実態だ。

「カップルがホテル代わりにするのはもちろん、パパ活に利用されたり、アダルトチャットの配信に使われたりとさまざまな用途で活用されているのです」(同)

 実際に使ってる人の話を聞いた。

 九州から就職活動のために上京した、大学4年生のさやかさん(仮名・22)。東京に何度も来る必要があるため、宿泊費を浮かせる一手段だ。

「宿泊費を節約するために出会いカフェかネットカフェを使います。出会いカフェの場合、同じ空間にほかの人もいますが、女性の利用は無料です。男性客と話をしなければいけませんが、パパ活をして、一緒にホテルに泊まることもありますし、ネットカフェで行為に及ぶこともあります

 だが、就活で上京しているため、休息したいときもある。

「疲れてしまって、知らない人と話をしたくないときもあります。そんなときはネットカフェを利用します。防音の部屋もあり、女性専用のスペースやパウダールームがついているとより安心できます」

 “泊まる”目的の利用者も多いが、旅館業法上は、「宿泊」となると、届け出なければならない。店側は「寝具」を提供しないことで法に反しないようにしている。

「風俗店の待機場所」なんでもありの実態

 都内の会社員、あやさん(仮名・32)は、2人で横になることができるカップルシートを利用し、ホテル代わりに使う。

「『完全個室』ではなく、天井の壁が開いていて隣のブースからのぞかれる可能性があったり、こちらの音が聞こえるようなスペースだったとしても、そこで彼氏やセフレと性行為することがありました。なるべく声を上げずに、周囲にバレないようにすることを楽しんでいました。でも声がもれてしまうので、隣の人は絶対気がついていたと思います。天井には防犯カメラが付いていたので、店員さんも知ってたんじゃないかな」

立てこもり事件の現場となったマンボープラス大宮西口店は駅前で繁華街にも近い

 最近では、一部のネットカフェにあるカラオケルームも使う。

「カップルシートは上部が開いていますが、カラオケルームは防音です。ドアに“のぞき窓”があるんですが、服などで隠せます。カラオケルームが空いていない場合は、個室を2人分利用して、どちらかの部屋に行き、2人で過ごしたりしています

 ちなつさん(仮名・28)はデリヘル嬢だ。特定のネットカフェが実は待機場所になっている。ホテルが近い場所にあり、仕事上、便利なのだ。

「提携しているのかわからないですが、デリヘル店から指定されています。仕事が入ったら、店側からLINEで連絡があり、ホテルに向かいます。終わったら、また同じネットカフェで待機です。店内に設置されたシャワーを使えますし、好きな漫画を読み放題、オンラインゲームもし放題なので、なにかと時間をつぶせます。

 最近はお客さんがゼロのときもあるため、そのときはマッチングアプリを使って援助交際しています

生活の“拠点”としてのネットカフェ

 キャバクラ嬢のよしみさん(仮名・25)は、鍵付き完全個室のネットカフェに“住んでいる”という。女性専用エリアやパウダールームがあることで、ほかのネットカフェよりも安心だ。

「働いているキャバクラの寮のような扱いです」

 以前は、別のキャバクラ店で働いていた。その店の寮はマンションタイプだったが、ほかのキャストと同居生活をしていた。しかし、同居人とトラブルがあり、1人で生活できる寮があるキャバクラを探した。

「鍵付き完全個室」は様々な目的で利用されている(写真はイメージです)

「ネットカフェが寮と聞いて、最初は疑問でした。以前、家出をしていたときに、ネットカフェを使っていたことがあって、そのときの印象として落ち着かないだろうな、と思っていたんです。でも入ってみると、鍵付きだし、防音。以前よりも快適です。これなら古いアパートよりもいいかもしれないです」

 フリーターのしゅんさん(仮名・35)は、VR版のアダルトビデオ(AV)観賞のために完全個室を訪れる。以前からVRゴーグルを身につけてAV観賞を楽しんでいる。

最近、ハマっているのは、VRのAVを見ながら、援助交際やセフレと性行為することです。

 実家ということもあり、部屋には女性を呼べない。ネットカフェに一緒に入って、ゴーグルをつけながらするんです。女優としているような感覚になれますよ(笑)」

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 さまざまな用途で使われるネットカフェ。今後もニーズに合わせて、進化していくに違いない。一方で犯罪の温床になっているという指摘もある。実際に事件が起きたとなれば今後規制の強化はやむをえないだろう。

取材・文/渋井哲也