男性の育児休業取得率は低い。たとえ取れたとしても実態は……(写真はイメージです)

 育児に積極的に関わる《育パパ》が増えている。しかし育休を取得となるといまだにハードルは高い。'19年度に厚生労働省が行った調査によると、男性の育児休業取得率はわずか7.48%。'25年までに30%に上げることを目標にかかげているというが……。

会社、家庭、ママたちから冷たい視線

 IT系企業に勤める富樫正樹さん(仮名・32歳)はコロナ禍の昨年5月、育児休業を3か月取得した。

「コロナで妻は遠方の実家に帰ることができず、こっち(東京)で出産することになりました。初めての出産ということもあり妊娠中からナーバスになっていた彼女を少しでも安心させるために休暇を申し出ました」

 富樫さんはまず会社からの“白い目”に気づく。

「40代の上司に申し出たら開口一番“リモートワークなのにわざわざ休暇とらなくてもよくない?”と言われました。リモートをなんだと思っているのか。うちの会社は求人誌などには育児休暇を推進している企業としてPRしています。でも蓋を開けてみれば育休をとっているのは総務や事務系の部署だけ。私が働いているマーケティング部では初の育休だったこともあり、上司も手続きがよくわからず、なるべく面倒は先送りにしたいというのが見え見えでした」

しっかりと育児をこなしていたつもりだったが……(写真はイメージです)

 富樫さんは妻の産前、産後の3か月ずつ計6か月の育休を希望していたが、協力的ではない上司の動きが鈍く手続きが大幅に遅れたため、産後の3か月しか取得できなかった。

「ようやく休暇がとれたと思ったら今度は妻から私へのあたりがきつい。

 オムツ、沐浴は私の仕事としてこなしましたし、産後2週間は妻に家事をさせないようにしてサポートしたつもりです。

 それなのに毎晩のように泣きわめかれる。子どもの夜泣きではなく妻の夜泣き。

 ビールを夜に飲んでいれば《あんたはいいわね、飲めて。私は母乳だから飲めないのに》とか、気分転換にウォーキングに行ったら《コロナでももらってきたらどうするの!?》と叫ばれて。

 もっと2人で楽しく育児をしたかった」

 育児につきっきりの妻に自由時間をあげたいと思ったという富樫さん。

 コロナのため通常は行われている集団1か月健診などは中止となったが、近所の児童館が開催するパパママの集まりに参加してみたところ……

「わずか2時間でも妻に1人の時間ができればいいかなと思ったんですが甘かった。

 参加したのは、うち以外みんなお母さんたち。男は私ひとりだったんです。そのときに浴びた白い目が怖かったですね。

 直接は言われませんでしたけど、“なんで男が来るんだよ”とでも言いたげな顔というか。連絡先は私だけ誰とも交換できず、失敗したなと思いました。帰って妻にその日のことを報告したら案の定“余計なことすんな!”と怒られて」

 結局休暇の3か月は、会社からも妻からも冷たい対応を受けた。

「復職して、育休を評価してくれる社外の人と話したときはほっとしました。やっぱり社会とつながっていないと不安になると痛感しました。2人目を授かったとして、また育休をとるかと聞かれたら、答えはNOです」

育休取得で出世コースからはずされた

 マタニティーハラスメントならぬパタニティーハラスメントを受けたというのは都内在住の大橋タカシさん(仮名・36歳)。

 某食品メーカーに勤める大橋さんは5年前に長男が生まれて1度目の育休を取得。そして3年前に次男が生まれて2度目の育休を申し出た直後に、地方への転勤を言い渡された。

「1度目の育児休業の後、上司から“子どもはひとりっ子にしろよ”などとハラスメントを受けました。要するにもう育休はとるなという忠告でした。

 それでも1人目のときは上層部が育休をとることに積極的だったため、嫌みを言われる程度でした」

 営業職をしていた大橋さん。取引先でも「育休をとった社員」としてそれが売りにもなっていた。風向きが変わったのは、2回目の育休申請のとき。

「当時とは違う上司だったのですが、吐き捨てるように“2人目はアウトだろ”と言われました。

 嫌みだと思って受け流していた私に待っていたのは茨城への転勤でした。それは出世をはずれるという意味が含まれていました」

 大橋さんは会社の体制への不満を募らせ退職。仕事ぶりを評価してくれ、取引先の飲食店が好待遇で転職を受け入れてくれたという。

 政府のイクメンプロジェクトを推進している厚生労働省関係者は、

「育休は休んでいる間の給与は保障してくれますがキャリアは保障してくれない。

 キャリアも含めての保障が進めば育休をとれる男性がもっと増えると思います」

 と制度の盲点を指摘する。

育休をとった議員たち。小泉進次郎は環境大臣時代に育休を3週間取得。宮崎謙介は自民党議員時代の不倫報道直後に育休を取得したことで批判を浴びた

 '10年から政府が推進する「イクメンプロジェクト」だが10年たってもそこまで普及していないのが実情だ。男性が当たり前のように育休をとれる日は、いつ訪れるのだろうか。

奥様たちのホンネを聞くと……

 イクメンについて、女性たちは実際のところどう思っているの? 主婦のみなさまに経験談を聞くと──。

【反対派】

「児童館などに授乳スペースがあるんですが、カーテンひとつ挟んでるだけなんです。この間授乳していたら男性がオムツ替えスペースだと思ったのかうっかり開けてきてヒヤッとしました。なのでイクメンははっきり言って迷惑!」(20代・専業主婦)

授乳スペースは女性用トイレ内にあったり、「誰でも利用できます」と書いてあってもカーテン1枚で仕切られていることも多く、男女がそろって利用しづらい(写真はイメージです)

「旦那が2か月の育休をとってくれたけど、はっきり言って邪魔でしかなかった。こんなことならいないでくれ、と思った。旦那、育休とってから給与も落ちてるしいいことなかった」(30代・兼業主婦)

「園の行事で必ずパパが来るお家があるんですが、奥さんに問題があるのかなと勘ぐってしまいます。怖い人なのかなとか。娘のことも可愛がってくれるのですが、異性だし警戒してしまう」(30代・専業主婦)

「パパの友達ははっきり言ってつくれない。周囲から変な誤解されたくないし、だからイクメンは家の中だけにしてほしいかな」(30代・専業主婦)

【賛成派】

「もう女だけが育児をする時代じゃない!」(30代・兼業主婦)

「子どもは夫婦2人で育てていくものでしょう、当たり前の制度です」(30代・専業主婦)

「男性がひとりいてくれるだけで防犯の意味でもいいと思います。女性だけでベビーカーを押していると嫌がらせしてくる人とかもいます。でも男性がいると嫌がらせに合わない気がします」(20代・専業主婦)

 いろいろな意見が飛び交った。あなたはどう思いますか?

『男コピーライター、育休をとる。』(WOWOWプライム9日~全6回)●実力派のコピーライター魚返洋介(うがえりようすけ)は多忙を極める中、妻・愛子(瀧内公美)の妊娠を機に、育休の取得を決意。6か月の育休は社内でも未踏の領域だが……。
番組WEBサイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/ikukyu/