※写真はイメージです

 7月3日に発生した静岡県熱海市の大規模土砂崩れ。現在もなお安否不明者の確認が続いている。

 最近は大雨がもたらす災害がとても多く、何事もない日常の貴重さをあらためて考えさせられる。災害は起きてほしくないと願うが、起きたときの被害を少しでも減らすためには、備えが大切だ。いつ発生するかわからない地震とは違い、天気予報などによりある程度の予測が可能な水害は、早めの準備と行動で被害を最小限に抑えることができる。

 防災備蓄収納1級プランナーの資格を持つ主婦で、人気インスタグラマーのぴょこぴょこぴさんは、以前、大雨による災害を警戒して家族と避難をした経験があり、定期的に防災に関する情報を発信している。

 自治体などが公開しているハザードマップを見ながら、どこで浸水や土砂災害が起きる危険性が高いのか、河川が増水した場合に安全に橋を渡ることはできるのかを把握すること。そして事前に安全な避難経路を確認しておくこと、の2つは最重要ポイント。

 さらに大雨の状況によっては、突然、自治体から避難情報が発表されることもあるので、そのような場合に備え、非常用のリュックやバッグはすぐに持ち出せるよう準備しておくことが大切だという。

非常用リュックと備蓄で暮らしに安心を

 ぴょこぴょこぴさんは、防災グッズを分散して収納している。1か所目は玄関に、夫婦で持ち出せるよう、非常用のリュックを2つ用意。避難先で過ごすことをイメージして缶詰や水、アルファ化米やお菓子といった食料や、家族分の下着などの生活備品を入れている。

「豪雨の中を避難することを想定し、防水を徹底。リュックは登山用のザックカバーをし、ライトも防水仕様のもの。リュックの中身はジッパーつきの保存袋に小分けしています。避難先で中身がびしょ濡れという事態は避けたいので、念には念を」(ぴょこぴょこぴさん、以下同)

 ヘルメットや子ども用の反射ベストを常備。夜間の避難で子どもを見失う可能性もあると考え、IKEAで購入した。

 リュックには母子健康手帳や健康保険証、運転免許証、家族写真のコピーを。小さな子どもは成長して顔も変わるので、1年に1回は入れ替えている。被災してもし家族がバラバラになったときにも捜し出しやすくするためだ。

 外に避難できず、家に閉じ込められて数日過ごす「自宅避難」のケースも考え、2階には500ミリリットルのペットボトルやトイレットペーパー、お湯を沸かしたり調理をするためのキャンプ用コンロといったものを。自宅は土地が低く、床上浸水の可能性があるため、水や食料は2階に保管するのが安全だと考えた。

「備蓄で大切なのは“見直しと更新”。入れたままにするのではなく、必要なものを定期的に入れ替えています。特に子どもの服はすぐにサイズアウトし、食べられる非常食も変化。いざというときに慌てないための心づもりです」

 備蓄したいものは数も種類も多く、費用もそれなりにかかるが、まずは100円ショップで買えるものから少しずつ準備していくのが手だ。

 避難所でもコロナ対策ができるよう、マスクや除菌スプレー、使い捨てできるアイテムをリストアップ。また夏場での避難は熱中症対策も必要なため、接触冷感のグッズやたたくと冷たくなる保冷剤もおすすめ。

 防災備蓄は、自分や家族を守るためだけでなく「地域の弱い立場の人を守るためにもなる」と考えてほしいと語る。弱い立場とは、例えば介護で人の手が必要な人や、病気、障がいのある人、そしてその世帯の人たち。子どもがいて、スピーディーな避難が難しい家庭も含まれる。

「災害が起きて避難所や、食料の配布場所にすぐに来られるのは、いわば“身軽な人”。被災してケガをしていたり、家族の世話をしなくてはならないような人たちは、遅れてやってきます。ようやくたどり着いたときには配布する食料や日用品がなくなってしまっている、ということも。防災備蓄は自分や家族の身を守るのはもちろんのこと、地域の困っている人たちを助けることにもつながる、ということを知ると防災への意識も変わってくると思います」

2つの非常用持ち出しリュックで
「もしも」に備える

ドライバッグは防水なので雨の中、避難することになっても、中身が濡れることはない
防水機能のない通常のリュックの場合、登山用のザックカバーをかけると防水になりおすすめ

 ドライバッグは防水なので雨の中、避難することになっても、中身が濡れることはない。防水機能のない通常のリュックの場合、登山用のザックカバーをかけると防水になりおすすめ。

 中には、汗拭きシート、生理用品、防寒シート、お手拭きシート、歯磨きセットやばんそうこう、マスクといった衛生用品や、お菓子、水や缶詰といった食品、飲料水、着替えなどが入っている。

「まさか」に備える7つの備え

 万が一避難が必要になったときのため、ふだんから家族で一度話し合っておきたい。備蓄も大切だが、避難場所や連絡方法なども決めておくとさらに安心。

(1)避難場所を確認する

 仕事先や子どもの学校など、それぞれで被災した場合を想定しておく。地震と水害では避難場所が違う場合もある。家族で散歩がてら、歩いてみるのもおすすめ。

(2)いざ、避難! となったとき、最初に持ち出すものを決めておく

 避難用のリュックやバッグ、雨具の置き場所を決めて、家族で確認を。電池切れの心配がない手動式のライト、携帯ラジオ、モバイルバッテリーなど照明や情報源となるものは必須。

(3)連絡を取る人を把握する

 かかりつけの病院の連絡先も知っておくと安心。連絡先リストを手帳とスマホの両方に、家族で共有できるとベター。

(4)家族との連絡方法を複数用意して、家族で共有する

 NTT災害用伝言ダイヤル、インターネット災害用掲示板、SNSなど、共有リストを作り、親族にも伝えておくと安心。

(5)土地の危険度を確認する

 自分の住んでいる地域の役所に行くとハザードマップがあるので確認を(HPに記載されている場合)。毎年確認し、季節や気象をふまえた最新情報をチェック。ハザードマップの見方がわからない場合はそのままにせず、役所の窓口で聞いてみて。

(6)子どもと一緒に「防災」を考える

 子どもの年齢によって「自分でできること」「注意すること」が変わるので、日ごろから話し、いざというときどうするかを決めておく。雨が降ったら用水路に近づかない、川を見に行かないなど(水位はインターネットでリアルタイムで見られるケースも)。

(7)「備え」を定期的に見直す

 半年、1年に一度など見直す日を具体的に決める。多少手間ではあるが、備蓄品の中身を家族の状況に応じて柔軟に変えられる。

教えてくれたのは…
ぴょこぴょこぴさん
防災備蓄収納1級プランナー、インスタグラマー。夫と8歳、4歳の子どもと暮らす。防災や家事、育児についての情報を発信。SNSフォロワー14万人。著書に『考えない家事』(主婦と生活社)など。