(左から)菅田将暉、戸田恵梨香、永野芽郁、三浦春馬さん

 いまやドラマ、映画界に欠かせなくなっているのが人気マンガが原作の作品。

マンガ原作の実写化は“がっかり”ばかり?

 7月からスタートした今期ドラマでは戸田恵梨香、永野芽郁がW主演の『ハコヅメ』(日本テレビ系・水曜夜10時)や、二階堂ふみ主演の『プロミス・シンデレラ』(TBS系・火曜夜10時)がマンガ原作もの。

映画『東京リベンジャーズ』。原作の和久井健先生の描き下ろしイラスト(上)と実写のキャストたち (C)2020『東京リベンジャーズ』製作委員会

 マンガ原作ものはドラマだけではなく、映画界でも大人気。少年マガジンで連載中の『東京リベンジャーズ』は北村匠海をはじめとしたイケメンキャストが勢ぞろいで公開前からヒットが予想されている。

 とはいえマンガ読者は原作への思い入れが強いだけに全員が満足する仕上がりになることは難しい。多くの視聴者が《こりゃないよ》と唸ったガッカリ実写化作品は?

「悟空がいじめられっ子の男子高校生ってどういうこと?」(20代・男性)、「原作レイプにもほどがある」(40代・女性)

 圧倒的1位となってしまったのが、『ドラゴンボール・エボリューション』('09年)。原作者の鳥山明氏に「ドラゴンボールとはいえない」と言わしめた同作は、世界中の原作ファンから批判が殺到。脚本家のベン・ラムジー氏が謝罪する事態に。かけた製作費は約4500万ドル、60か国以上で上映されるなど期待値が高いことがうかがえたがあまりの駄作に(?)初登場第8位、全世界興行収入は約5750万ドルと残念な結果に。

 不名誉な2位となってしまったのは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』('09年、TBS系)。主演は当時SMAPだった香取慎吾。慎吾ちゃん両さんもなじんでいたが、

「チビでダミ声の両さんは(アニメ版の声優をしていた)ラサール石井さんのイメージだったから慎吾ちゃんじゃイケメンすぎる!」(50代・女性)、「香取さんの顔に両さんのカモメ眉毛が描かれてるのを見て悲しくなった」(30代・男性)、「香取慎吾がやけっぱちでやっていたイメージ」(30代・女性)。ミスキャスト(?)は慎吾ちゃんだけではないようで、

「香里奈の麗子はなんか違う。麗子の持つ母性や優しさが感じられない」(50代・男性)、「中川がもこみちっていうのもなんか。金持ちっぽくない」(40代・男性)

 とはいうものの、慎吾ちゃん効果で映画化までされた同作。興行収入は8億円と大ヒットとまではいかないが、出演者の振り切ったコメディー演技は高く評価された。

 3位は、『怪物くん』('10年、日本テレビ系)。嵐の大野智が怪物ランドのプリンス・怪物くんを演じ、共演のフランケンにはチェ・ホンマン、オオカミ男に上島竜兵など脇のキャストは原作そのものとも言われたが……。

『映画 怪物くん』は大野にとって映画単独初主演にもなった作品だが……

「怪物くんって子どもでしょ? 大野くんは当時もうすでに30代。おじさんが怪物くんって」(40代・女性)、「子ども向けドラマだと割り切って見ていたけど、それにしても大野くんじゃないんだよなぁ」(30代・女性)。「怪物くんは天真爛漫のおぼっちゃまなのに、大野くんの怪物くんはヤンキーの兄貴分みたいなキャラで別物だった」(50代・男性)

 連続ドラマ終了後は映画化もされた同作。原作とは別物として見れば愉快痛快?

なぜ? イメージと違うキャスティング

 4位はまたまたジャニーズの丸山隆平(関ジャニ∞)主演の『地獄先生ぬ~べ~』('14年、日本テレビ系)。原作は『週刊少年ジャンプ』で連載されていた人気作だが、

「(当時流行していた)妖怪ウォッチに便乗しすぎ」(30代・女性)、「小学校の舞台設定をなぜわざわざ高校に改変したのか。主演(丸山)の棒読み演技にカタコトの韓国人(知英)などキャスティングもひどかった」(40代・男性)

 あまりのクオリティーに番組ホームページに特設された公式掲示板は炎上。ある意味、伝説の作品となっている。

劇場版『進撃の巨人』完成披露ジャパンプレミアには約4000人の熱烈なファンが詰めかけるほど期待が大きかったが……('15年7月)

 5位は映画『進撃の巨人』('15年)。'09年から別冊『マガジン』に連載されていた同作は今年4月に完結。今でも世界中のファンから愛されている。人間と巨人との戦いを描いた同作(映画化当時のあらすじ)だが、キャスティングどころかストーリーの改変が多かったようで……。

「強くて寡黙で黒髪が美しいヒロイン・ミカサが水原希子とはひどすぎる。ハーフ顔じゃん」(30代・女性)、「ミカサが特にひどい。性格が変わって別人になっている」(40代・男性)、「1番人気のキャラ・リヴァイ兵長が出てこない進撃なんてありえない。リヴァイ兵長に似たシキシマ隊長という謎キャラを長谷川博己さんがやっていたけどなんか違う」(40代・女性)、「エレンの怒りの衝動のもとは母親が巨人に殺されたこと。そのシーンがないからエレンがなぜ強く巨人を憎むのかがわからない」(30代・男性)

 一方で高評価の声も。

「三浦春馬さんのエレン、石原さとみのハンジがハマっていただけに残念感がすごい」(30代・女性)

 ドイツをベースにしている同作。そもそも日本を舞台にしている時点で難しいと思うのだが……。

 上位5位までを見るとジャニーズタレントを起用した作品が多い。テレビウォッチャーの神無月ららさんは、

「確実に視聴率を取りにいくためには、原作人気とキャスティングされる俳優人気、どちらも借りたいのが制作側の本音だと思います」

 と、裏事情を分析する。

「視聴者の目も肥えていますから、バーターとか事務所のごり押しが見え隠れすると、嫌われてしまいます。6位の『ビブリア~』は、剛力さんのキャスティングが発表された途端、スポンサーに抗議した原作ファンもいましたから」(ドラマ制作関係者)

『ビブリア古書堂の事件手帖』の実写化では剛力彩芽のキャスティングが話題になった

 キャスティング主導が生んだ失敗ともいえる。それが顕著に出たのが、7位の『有閑倶楽部』だと前出の神無月さん。

「主人公は一応剣菱悠理(けんびし・ゆうり)なのですが、制作側は松竹梅魅録(しょうちくばい・みろく)役の赤西仁くんを主役におきたかったのでしょう。どちらかといえばメンバーの中でもサブ的なキャラクターの魅録を無理やり主人公にしてしまい、まったくの別物に」

 キャスティングありきで組んで成功した作品も。

「ビッグカップルを生むことになる、『逃げるは恥だが役に立つ』です。あの作品は新垣結衣さんのキャスティング先行でした」(ドラマ関係者)

(左から)新垣結衣、星野源

『逃げ恥』成功の理由をドラマウォッチャーのくのいちこさんは、

「原作のよさを過不足なく伝える誠実な脚本と、遊び心ある演出。キャスティングもハマりまくり。主役2人が本当に結婚したのも納得です」

 と絶賛する。

 来年1月からの月9はすでに菅田将暉主演で人気漫画『ミステリと言(い)う勿(なか)れ』の実写化が発表された。これから生まれる神実写化作品に期待したい!

実写化「がっかり作品」ランキング

※読者が選ぶ「コレジャナイ」キャスティングは[]。

第1位【映画】『ドラゴンボール・エボリューション』('09年)

[ジャスティン・チャットウィン][ジェームズ・マースターズ][田村英里子][関めぐみ] 

第2位【テレビ】『こちら葛飾区亀有公園前派出所』('09年/TBS系)

[香取慎吾][香里奈]、速水もこみち

第3位【テレビ】『怪物くん』('10年/日本テレビ系)

[大野智]、上島竜兵、チェ・ホンマン

第4位【テレビ】『地獄先生ぬ~べ~』('14年/日本テレビ系)

[丸山隆平]、桐谷美玲、速水もこみち

第5位【映画】『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』('15年)

三浦春馬、[水原希子][本郷奏多]

第6位【テレビ】『ビブリア古書堂の事件手帖』('13年/フジテレビ系)

[剛力彩芽][AKIRA]

「剛力さんのイメージじゃない! 当時ショートカットの剛力さんがロングのカツラまでかぶって演じる必要あったのか」(40代・男性)、「剛力さんのごり押しと言われていた時期でうんざりでした」(30代・女性)、「AKIRAさんの演技がひどかった」(40代・女性)

第7位【テレビ】『有閑倶楽部』('07年/日本テレビ系)

[赤西仁][田口淳之介](ともに当時KAT-TUN)、[横山裕](関ジャニ∞)、香椎由宇、鈴木えみ、美波

「女性陣(美波、鈴木えみ、香椎由宇)は再現性が高くて好評だったと記憶しています。唯一いちゃもんをつけるとしたら清四郎役の横山裕ですかね。同じ関ジャニ∞(当時)なら、大倉君のほうが清四郎には近かったはず」(神無月ららさん)、「美童は美少年のハーフ顔の役者にやってほしかった」(50代・女性)

第8位【映画】『黒執事』('14年)

水嶋ヒロ、[剛力彩芽]、優香

「無理やり原作にない剛力さんをごり押しキャスティングした時点でコレジャナイ!」(30代・女性)、「セバスチャン(水嶋ヒロ)はストレートの髪の毛が美しいのになぜチリチリ頭にしたの!?」(40代・女性)

第8位【映画】『魔女の宅急便』('14年)

[小芝風花]、宮沢りえ、筒井道隆、尾野真千子

「ジブリ作品は実写化は不可能だと思い知った」(40代・男性)、「小芝さんは可愛くて頑張っていたけどキキじゃないし、黒猫のジジのCGも雑で残念だった」(40代・女性)、「飛行シーンのCGが粗い。現実に返ってしまう」(30代・女性)

第10位【映画】『デビルマン』('04年)

[伊崎央登]、[伊崎右典]、[酒井彩名]、[ボブ・サップ]

「ミスキャストというよりも脚本、演出すべてが最低レベル。役者さんはかわいそうともいえる」(50代・男性)、「主演の2人の男性アイドルが棒読みすぎる。やる気あるのか、と思っていたらいつの間にか消えてユーチューバーになっていた」(40代・女性)、「2時間であの大作をまとめられると思ったのがそもそも間違い」(50代・男性)

プロが選ぶ「実写化“神作品”」

『モテキ』

('10年~森山未來、満島ひかり、菊地凛子、松本莉緒、野波麻帆(ドラマ)、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子(映画))

映画版は'12年の日本アカデミー賞で長澤まさみが優秀主演女優賞、麻生久美子が優秀助演女優賞など計5部門で受賞した評価の高い作品

「久保ミツロウの人気原作をドラマ化し、さらにドラマと同じスタッフで映画化もされた、まさに《幸せなケース》の実写化作品だと思います。これは明らかに脚本&監督を務めた大根仁監督の情熱エンジンが成功につながったと思います。コミュ障な主人公、藤本幸世(森山)が精通するサブカルチャーとロックカルチャーの世界には、大根監督が持てる知識がそのまま血肉として脚本に注がれていました。森山未來のダンス能力を目いっぱい生かした映画版とともに名作と呼びたいです

(テレビウォッチャー・神無月ららさん)

『のだめカンタービレ』

('06年フジテレビ系:上野樹里、玉木宏、永山瑛太)

劇中の使用楽曲のCDの売上増に貢献するなど、クラシック音楽の認識も広げた作品

「連ドラ、SPドラマ、映画、すべてのキャラクターが原作から飛び出してきたような再現度の高さでびっくり! 特にのだめ役の上野樹里と、真澄役の小出恵介は出色の出来。しかも原作のハチャメチャな展開もしっかりと描き、人形を投げたりなどして動きまで再現、スタッフがノッて作っているのがわかりました。またクラシック音楽については真摯に描かれており、コンサートまで大人気となったのもうなずけます」

(ライター・成田全さん)

年代別・主な実写化ヒット作品('80〜'90年代)

'80年代

'83年〜『あんみつ姫』(フジテレビ系)

'85年〜『スケバン刑事』シリーズ(フジテレビ系)

'88年 『花のあすか組!』(フジテレビ系)

『スケバン刑事II』で主人公の2代目・麻宮サキ役を演じた南野陽子

'90年代

'91年 『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)

'93年 『あすなろ白書』(フジテレビ系)

'93年〜『白鳥麗子でございます』(フジテレビ系)

'94年 『南くんの恋人』(日本テレビ系)

'95年〜『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)

'96年 『イグアナの娘』(テレビ朝日系)

'96年〜『ナニワ金融道』(フジテレビ系)

'97年〜『サイコメトラーEIJI』(日本テレビ系)

'98年 『おそるべしっっ!!! 音無可憐さん』(テレビ朝日系)

'98年〜『ショムニ』(フジテレビ系)

'98年 『GTO』(フジテレビ系)

'99年〜『サラリーマン金太郎』(TBS系)

江角マキコ(前段右から3人目)は主演の坪井千夏役として出演。以降、自身の代表作となる

年代別・主な実写化ヒット作品('00年代)

'00年代

'01年 『カバチタレ!』(フジテレビ系)

'02年 『ピンポン』(映画)

'03年〜『ホットマン』(TBS系)

'03年〜『特命係長 只野仁』(テレビ朝日系)

AbemaTVでの放送を含めると、15年にも渡り製作された長期シリーズとなった

'03年〜『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)

'05年 『花より男子』(TBS系)

'05年〜『ドラゴン桜』(フジテレビ系)

'09年〜『JIN - 仁』(TBS系)

'05年の放送当時、東大模試の受験者数が最大で20%増するなど受験生も“東大”ブームに

年代別・主な実写化ヒット作品('10年代以降)

'10年代〜

'12年〜『るろうに剣心』(映画)

'12年〜『孤独のグルメ』(テレビ東京系)

'12年〜『テルマエ・ロマエ』(映画)

'15年〜『コウノドリ』(TBS系)

'16年〜『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)

'17年〜『アシガール』(NHK)

'18年〜『義母と娘のブルース』(TBS系)

'19年〜『今日から俺は!!』(日本テレビ系)

'19年〜『昨日何食べた?』(テレビ東京系)

'19年 『キングダム』(映画)

'19年 『凪のお暇』(TBS系)

'20年〜『私の家政婦ナギサさん』(TBS系)

『勇者ヨシヒコ』『銀魂』シリーズなどの福田雄一が手がけたことで話題になった (c)日本テレビ