ジャニーズの出演がない、大ヒット映画『東京リベンジャーズ』(公式サイトより)

 好調な観客動員数を記録する公開中の映画『東京リベンジャーズ』。アニメ化もされた「週刊少年マガジン」連載の大人気漫画『東京卍リベンジャーズ』を原作とする作品で、恋人を事故で失い、失意の淵に沈む生活を送る主人公のタケミチが、10年前の不良だった高校時代の世界にタイムリープ、未来を変えるために奔走する。

 この《“ヤンキー×タイムリープ”という斬新なコラボ!》(映画公式サイトより)という、SF要素を盛り込んだ不良モノという世界観がウケ、実写映画版もヒットを記録している。

 タケミチを演じるのは北村匠海、劇中に登場する暴走族「東京卍會(トーマン)」のナンバー2・ドラケン役に山田裕貴、そしてナンバー1のカリスマ“無敵のマイキー”を吉沢亮が演じる。さらには杉野遥亮、鈴木伸之、間宮祥太朗、磯村優斗、眞栄田郷敦、清水尋也といった、さまざまな作品で活躍する豪華な顔ぶれが揃う。

ジャニーズのいないヤンキー映画

 過去を振り返ると『東京リベンジャーズ』に限らず、複数の若手俳優が登場するヤンキー物にはヒット作品が目立つ。

 ひとつは高橋ヒロシの漫画『クローズ』を原作とした映画『クローズZERO』シリーズだ。主人公の小栗旬をはじめ、山田孝之、桐谷健太、大東俊介らが活躍し、俳優としての人気をより堅固なものとした。

 さらにEXILE TRIBEのプロジェクトとして始動し、ドラマ、映画とシリーズ化され人気を集めたのが『HIGH&LOW』シリーズだ。EXILE TRIBEのメンバーたちに加え、山田裕貴、窪田正孝、林遣都らも出演、それぞれ印象的な演技でやはりその後のさらなる活躍につながったシリーズになっている。

 現在の映画・ドラマ界で活躍する若手俳優が多数出演するこれらヤンキー物のヒット作には、あるひとつの特徴がある。

「いずれもジャニーズタレントが出演しない作品なんです」

 と、あるテレビ関係者は言う。

学園モノの優等生へシフト

「ジャニーズの人気タレントが出演するとなると、どうしても彼らがメインになってしまいます。たとえばカラーギャングの抗争を描いた、長瀬智也主演のテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』は、ジャニーズが主役でも、主役を喰わない程度の強烈な個性を放つ窪塚洋介を持ってきて、うまくバランスを保っていました。『ごくせん』シリーズもそうです。でもその後、共演した若手俳優たちが次々とブレイクしたため、ほかの事務所のポープとの横並び出演を避けていったように思います」

 しかし昨今は時代の流れもあり、不良モノで多数の若手俳優が出演する作品の場合、ジャニーズが出演することは減っているという。そこには「ジャニーズが出ているから」という理由で、避ける視聴者層が存在すると指摘する。

「昔からテレビドラマや映画には、“ジャニドラ”“ジャニ枠”という言葉がありましたが、それがより特異なポジションになってしまった。この10年で、日テレの深夜に放送される“シンドラ”枠や、テレ東はジャニーズドラマ専門枠を設け、彼らが主演のドラマを制作・放送しています。しかし、いい作品だとしてもジャニーズに興味がない層はほとんど見ないという状況を生んでいます」(同前)

 一方、ジャニーズファンたちはそれらの作品を当然、見ているわけだが「ほかの若手俳優が出演する作品も普通に見ているため、そちらの認知度はますます高まっている」という現象が起きているという。

 ヒットし続けているガチな不良モノ映画に、ジャニーズへのお声がけがないのか、お断りしているのかは不明だが、近年のジャニーズのヤンキー要素が入った役柄は減っている。どちらかというと“学園モノ”に出演するほうが多い、というのは前出の関係者。

「学園モノで、ちょっと不良ぽい役だったり、やんちゃな役どころはありますが、それよりも王子様系、優等生系の役がウケています。嵐を筆頭に“おぼっちゃま”感を持つタレントや、高学歴の子も増え、不良よりも優等生のイメージのほうが強くなってきている印象です。」

 時代の流れ、役者のイメージ、そして原作、さまざまな戦略が絡み合うエンタメの世界。ガチな不良モノは人気若手俳優に、学園モノの優等生はジャニーズが、ヒットの要因か!?

〈取材・文/渋谷恭太郎〉