結婚会見での福原愛('16年9月)

 福原愛(32)を見るとき、多くの日本人が「こんなに大きくなっちゃって」という感情になるはずだ。それくらい「泣き虫愛ちゃん」のイメージは強い。そんな大きくなった愛ちゃんの離婚が成立した。

「ごめんなさい。私は頑張ります」

 2016年9月、卓球の日本代表として団体戦銅メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪の直後に、同じ卓球の台湾代表だった江宏傑(32)と結婚。しかし、次の夏季五輪が来る前に破局してしまった。

 そのあいだ、'17年に女児、'19年に男児を出産。'18年の引退会見では、

娘には自分が卓球選手だったことを内緒にしたい。小学生くらいになったとき、温泉卓球でいきなりスマッシュとかを打って“何でお母さんできるの”みたいなことをやりたい」

 という夢を語ったが、この夢はかなわないかもしれない。子どもたちについては共同親権となったものの、台湾で元夫が育てるため、福原が日本にいる限り、会うこともままならないのだ。

 意外なのは、日本での空気。同情の声があまり聞こえてこない。だからかどうか、日本向けに発信してきたツイッターではなく、中国版ツイッター『ウェイボ』を更新して、中国語でこんなコメントをした。

ずっと温かく見守って励ましてくれて、力をくれた中国のファンのみなさん、ごめんなさい。私のプライベートな報道で、みなさんに迷惑をかけました。私は頑張ります。いつも私の家族や友人を支えてくれ、感謝の気持ちでいっぱいです」

 実は彼女、中国でプレーした時代にアイドル的人気を博した。容姿はもとより、中国東北部っぽい訛り方が可愛かったらしい。日本でいえば、朝ドラ『おしん』の小林綾子みたいな感じだろうか。

中国での絶大な人気

 今も人気は根強く、このコメントにもわずか1日で500万以上の「いいね!」がついたほど。ただ、こうした中国での好感度も離婚には災いした。台湾での嫌中感情を刺激し、彼女が悪者扱いされる要因のひとつとなったからだ。

 それはさておき、彼女と日本人の関係はなぜ変わったのか。「泣き虫愛ちゃん」として世に出たころは、いわば天才子役みたいな存在で、そこから五輪ヒロインへと成長。テニス選手・錦織圭との初ロマンスではちょっと羽目をはずした感じだったが、ファンは「こんなに大きくなっちゃって」と微笑ましく見守った。

 しかし、離婚の引き金になったロマンスは不倫。いまや日本でご法度というべき行為をしたことにより、彼女のイメージは暴落した。なまじ、可愛かった子ども時代が覚えられているから、そのギャップも大きいわけだ。

 そこで思い出すのが、今から25年くらい前、元将棋棋士の林葉直子を取材したときのこと。彼女は、自分の波瀾万丈な半生を振り返りながら、

卓球の愛ちゃんがかわいそう。昔の自分みたいで。不幸になりそうな気がする

 と言ったのである。

 林葉もまた、親に幼いころから将棋を仕込まれ、天才美少女棋士として人気者に。CMに出たり、本を出したりしたが、不倫でミソをつけ、転落のきっかけになった。林葉の転落に比べれば、福原の不幸はまだ序の口にも思えるものの、似た境遇で育った者にしかわからない何かがあるのだろう。

 ただ、日本人の心には「泣き虫愛ちゃん」の記憶も残っている。だから、会見を開き、大泣きすれば、一度くらいなら通用して好感度を回復できるかもしれない。いや、無理か。彼女はこんなに大きくなっちゃったのだから。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。