21日のオーストラリア戦で内野ゴロを華麗にさばくサードの山本選手

 あれっ? オーストラリア代表の2番手ピッチャーは帽子をかぶっていないぞ。

 東京五輪開幕前の21日、すべての競技に先んじてソフトボールの予選リーグが始まり、日本代表はオーストラリア代表に8-1の5回コールドゲームで圧勝。金メダル獲得に向け好発進したが、気になったのが冒頭の“ノーキャップ”だった。

 初回のピンチを最少失点で切り抜けた日本代表は、先発の上野由岐子投手を中心に堅い守りと強力打線で危なげないゲーム運び。劣勢のオーストラリア代表が2番手としてマウンドに送ったのがターニ・ステプト選手だった。

 長身のステプト選手は金髪のロングヘアをポニーテールに束ね、帽子をかぶらないまま投球。ところが審判は特に注意することもなくゲームが続いた。

 ほかのオーストラリア代表選手を見てみると、ロングヘアの選手は多く、おおむね帽子のうしろにあるサイズ調整の隙間にポニーテールをくぐらせて垂らすスタイル。

 日本代表選手は短髪が目立つが、よくよく見るとサードの山本優選手は帽子をかぶっていなかった。ショートヘアの山本選手は4番をまかされ、同点タイムリーと試合を決めるホームランという大活躍だった。打席ではヘルメットをかぶっていた。

 つまり、注目を集めるピッチャーだからステプト選手の帽子をかぶらないスタイルが目にとまったというわけ。

女子と男子ではルールが違う!?

 ルール違反ではなさそうだが規則ではどう定められているのか。

 公益財団法人日本ソフトボール協会に聞いた。

「女子の場合は選手がそれぞれ、帽子をかぶっても、かぶらなくても自由なんです。女子はサンバイザーをかぶることも認められています。それが国際ルールなので五輪でも採用されています」(同協会の担当者)

 この国際ルールはWBSC(世界野球ソフトボール連盟)ルールといい、途中で帽子を脱ぐのもかぶるのも自由という。ステプト選手は途中から帽子をかぶって投げた。

「ちなみに男子ソフトボールの場合は全員帽子をかぶらなくてはいけません。女子だけに帽子着脱の自由が認められているのは、髪の毛の長い選手が多く、帽子がかぶりにくかったためではないかと言われています」(同担当者)

 一方、打席ではヘルメットをかぶらなくてはならない。国内の日本リーグでもこうした規定に準じたルールが採用されているという。

 野球はどうか。全国紙運動部記者はこう話す。

「プロ野球ではチームメンバーは同じユニホームを着なければならないが、帽子をかぶる規定はないため、全員帽子をかぶらなければ同一ユニホームといえなくもない。高校野球では、各都道府県の高野連によっては帽子着用を義務づける規定もあるようだ」

 この日、無観客の福島県営あづま球場には青空が広がっていた。炎天下で熱中症などが心配される中、直射日光を浴びて投げるステプト選手が気になった。

 もっとも、オーストラリア政府観光局のホームページでは観光客に向け、

《オーストラリアでは日差しが非常に強いため、日中は肌を保護することが重要です。(中略)太陽の有害な紫外線から肌を保護するために、可能であれば帽子、サングラス、長袖を着用することをお勧めします》

 との記述も。日差しの強さには慣れているはずのオーストラリアの選手に対し、熱中症を心配したところで、釈迦に説法かもしれないが……。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する