久保健英選手

 2大会ぶりのベスト4進出を決めた男子サッカー。チームの好調を支えているのは、グループリーグ3試合すべてでゴールを決めた、チーム得点王の久保建英。

 小学生時代は『川崎フロンターレ』の下部組織に在籍していた久保だが、ダイヤの原石だった彼の存在は、当初から周囲と違う輝きを放っていたようだ。久保の指導に携わった高崎康嗣氏は、入団テストの様子を明かす。

「小学2年生150人ほどがテストを受けて合格者はたったの数人。そのうちの1人が建英でした。雨が降ってグラウンドが滑るなか、ほかの選手とは格段に違うボールコントロールに驚きました。ポジショニングもボールタッチも1人だけレベルが違いましたね」

 入団直後から久保は頭ひとつ抜きん出ていた。あのリオネル・メッシも在籍するスペインの名門『FCバルセロナ』の下部組織への入団テストにも挑戦し、合格したのだ。

「半年後にはスペインに行くことが決まったので、当時4年生の久保を6年生のクラスに上げたんです。建英のプレーのレベルが高いこともあり、6年生と一緒にしました。またバルセロナのチームは同じ年齢でも日本よりも2学年ほど高いレベルにあることが映像を通してわかっていましたから、上の学年でやらせようと」

 年上ばかりのチームでも、萎縮することはなかった。

建英のよさは賢いところ。6年生のクラスの中で、どんなトレーニングをしても意見を言うのは建英ですし、ミーティング中に話すのも建英。僕の問いかけに1番に答えるのも建英でした。また、意見を言うだけじゃなく、それを具現化できるスキルを彼は持っていましたね」(同・高崎氏)

 順風満帆に見える久保のサッカー人生だが、そうではない。スペインから帰国後、2017年に『FC東京』で“プロ”としてトップチームに所属したが、なかなか試合に出ることは叶わなかった。

「K」パフォーマンスの真実とは

 小学生時代から現在にわたり、フィジカルトレーナーとして久保を支える『KOBA式体幹バランストレーニング』を開発した木場克己氏はこう明かす。

「出場機会を求め、一時的に移籍をしたこともありました。すごく悩んでいた時期だったと思います。当時彼は高校生。そのなかでプロとして大人に交じってプレーするわけですから、フィジカルが足りないのは当然。それでも彼は諦めず、自分にできることを探してトレーニングに励んでいました。普通の高校生ならできなくて当たり前だと思うところを、自分で追い込んでいくのはさすがだなと」

 長年の付き合いである木場氏の目には、ピッチ外の彼はどう映るのか。

『FC東京』時代はゴールを決めたときに『TT兄弟』のパフォーマンスをしたり、結構明るいんですよ。今は手で“K”って文字を作るパフォーマンスをやっていますよね。LINEで本人に“Kって久保のK?”って聞いたら“友達のイニシャルです”って言っていました。

 また、先輩・後輩にかかわらず可愛がられるタイプです。先輩と一緒に体幹トレーニングをやってるとき、苦しくて腰を反りそうになる先輩に“反るな! 反るな!”と声をかけてイジったり(笑)。物怖じしないで自分を出しているので、周囲からは可愛がられるんですよ」

 メダルをとればメキシコ五輪以来、53年ぶり。金に向かって“K”を量産してほしい!