(左から)ジェーン・スー、堀井美香

 “おばさん”世代が今夢中なポッドキャスト(インターネット配信の音声プログラム)番組、毎週金曜17時配信の『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』(TBSラジオ)をご存知だろうか。

 2020年10月の開始直後から話題となり「JAPAN PODCAST AWARDS2020」で「ベストパーソナリティ賞」と、リスナー投票により決まる「リスナーズチョイス」をW受賞。各種サービスのポッドキャストランキングでも常に上位をキープ! 

 ポッドキャストに馴染みがなかった中高年女性層をも取り込み、今絶大な支持を獲得中だ。

 そんな人気プログラムの収録現場に、週刊女性編集部が潜入!

 パーソナリティのジェーン・スー(48)、TBSアナウンサー・堀井美香(49)の両人にお話を聞きました!

台本なし、生活情報ゼロの ゆるゆる“おばさん”トーク

TBSラジオのお昼の帯番組「ジェーン・スー 生活は踊る」(月〜木)からコンビを組んでいる二人

 2016年4月から始まったTBSラジオのお昼の帯番組「ジェーン・スー 生活は踊る」(月〜木)からコンビを組んでいる二人。番組が生まれたきっかけは?

ジェーン・スー(以下、スー) もともと『生活は踊る』は月〜金だったんですが、月〜木になりまして。お昼よりもっとゆるゆると、生活情報ゼロ! という感じで始めさせていただいたのが『OVER THE SUN』でございます。

 タイトルは『おばさん→オーバー・ザ・サン(笑)』的な、与太話の延長でつけました。

 今までメディアであまり取り上げられなかった、あっち行ったりこっち行ったりするおばさんの“横滑りする話”を楽しんでいただくトークプログラムです。

――毎回のトークテーマは「離婚」や「介護」「子育て」「推し活」「美容整形」「大人のVIO脱毛」といった生活の延長線上のものから、「サンリオ」「全日本女子プロレス」などなど、中高年女性世代の心に「刺さる」チョイスで、リスナーからのメールも熱くて濃い内容揃い。

 予定時間は「毎回およそ30分」となっているが、1時間近くのボリュームになっていることも多い。

台本もなく、何を喋るかも特に決めてないという

堀井美香(以下、堀井) 台本はもちろんないですし、何を喋るかも特に決めてないんです。

 流行とか関係なく、私たちが今興味あることを話してます。あえて今“五郎丸ポーズ”をやってみたりとか……。

スー 微妙に古いトレンドでも「私たちが“今”気になる」がポイントですね。番組内でグルメバーガーを食べて感想を言い合ったりとか。でも、食べながらなぜか好きな寿司ネタの話もするという……「This is マルチタスク!」 ですよ。なんですが、好きな寿司ネタについては過去の放送でもう話していたらしくて(笑)。

堀井 リスナーさんからのメールで指摘されてね。本当に私たち、話したことをちゃんと覚えてなくて……。いただくメールもどれも面白いし、ほんとにリスナーさんに助けられています(笑)。

スー 某一流ホテルを自分の好きな有名人である“推し”に見立てて、“ホテル=推し”にチェックインしてみたというレポートを送ってくださった猛者がいらしたり、ほんとうにリスナーさんは天才ばかり。ラジオの常連投稿者とは違って、この番組には皆さん思いのたけをすべて書いて送ってくださるんで、新しいリスナー層に出会えたという喜びもあります。『親に言われた忘れられない一言』には200通くらい来たよね?

堀井 そのあと、私が提案した『徳川埋蔵金について知ってること』には7通くらいでした(笑)。

スー メールがあんまり来なくて私たちが困る、っていうこともあるんですけど、そういう回があってもいいかなと。

 ファンの方に喜んでいただいて盛り上がったのは「2021年にまるで昨日のことのように『SEX AND THE CITY』のことを話す」とかがありましたね。20年以上前のことでも昨日のことのように話せるのが、我々おばさんです。

スー&美香、お互いの第一印象

 番組の聴きどころがパーソナリティの二人の絶妙な掛け合い。

「未婚のプロ」を自称する人気エッセイストのジェーン・スーと、いわゆる“女子アナ”ブーム全盛期にTBSへ入社し、すでに成人した子どもが2人いる堀井美香。

 一見、水と油のように属性の全く違う二人だが、第一印象はどうだったのか?

堀井 私がはじめてジェーン・スーさんとお仕事する時に前情報として聞いたのが、作詞家で、エッセイストで、アイドルのプロデュースとかされていて、おしゃれなクリエイター集団に所属していて……、見せていただいた近影もおしゃれだったので「なんか手ごわそう」って思いましたね(笑)。

スー 私は堀井さんに対しては「ああ、同世代の女子アナブームの方ね」って感じで、本当に合うのかな、大丈夫なのかなって感じでした。最初に二人でやった番組のときに、進行をお任せしていいのかなと思ったら、この人はいきなり台本を捨てたんです(笑)。

 今ではおなじみのムーブで「美香ちゃんちょっと!」なんて言えるんですけど、当時は「なんだこの人は!」って思いましたね。

ポッドキャストはお昼よりもっとゆるゆると、生活情報ゼロ! という感じで始めたという

堀井 打ち解けるのにけっこう時間かかったよね? 徐々に仲よくなっていきましたけど、今ほど踏み込み合うような感じではなかったですよね。ある程度の節度を持ってのお付き合いでした。

スー 『生活は踊る』がはじまって、続けるうちにだんだんと距離が近くなっていったと思います。5〜6年はかかりましたかね、なんやかんや。今は土足で部屋に上がるくらいの無遠慮さはありますね。親に見つかったら怒られるくらいの(笑)。

番組で「感謝」の湯呑みを作りたい

――もうすぐ50回を越える「OVER THE SUN」。今後の展望は?

スー 特にないですね。強いて言えば「おばさん掲示板」としての役割をきちんと果たすっていうことですかね。あたしたちはあくまで会場整理係ですから。リスナーの皆さんと一緒に楽しんでいく。

堀井 今が一番いいですね。こちらがお題を出したことに、みなさんがメールしてくれて……。なんと、番組にスポンサー様(popIn株式会社)が付いてくださったし、ほんとに長く続けたいなと思います。これをお返しするにはどうしたらいいのかしら……。

スー 本当に感謝ですよね……。私たちこの歳になってびっくりしたんですが、親の言ってることとか、みつを(故・相田みつをさん)の言ってることは正しい、ってことに変わってきて。

 若いころはああいうシンプルな感謝とかに抵抗・反抗して生きてきたんですけど、最終的には石は丸くなり、同じ中洲にたどり着き、感謝・感謝の毎日ですよ。

堀井 「感謝」って入れた湯呑みを番組で作りたいくらいです。こういうことを20代、30代に言ってもまだわからないだろうけど……。

流行に関係なく、自分たちが今興味あることを話している

スー この番組は若い方にご参加いただくのは全然OKですけど、おもねる気はゼロですから。若いからってメールを読むことはしません。わかるように話す気もゼロです(笑)。

『OVER THE SUN』は 聴く『週刊女性』!?

 そのうち取材班が渡した『週刊女性』を読み始めた二人。

スー 健康情報ですよ美香さん。こういうのが響く年齢になってきましたね。

堀井 見て、『オーバー50から稼げる資格』だってスーちゃん……!

スー 私は木村拓哉の見出し、「ちょ、待てよ」だね(笑)。

堀井 記事がぜんぶ魅力的! 大雨、雷情報だって! スーちゃん気をつけなさいよ!

スー 知りませんよ。読者投稿ページ見てください、堀井さん。(投稿を一つ朗読する)……。我々のところに来るメールとなんにも変わらないですよね。

 週刊女性になかなか投稿が採用されない方は、全部こちらに送ってください!

堀井 そうですそうです! ぜひ『OVER THE SUN』にも一筆いただきたいです!

スー こちらの読者の皆さんは、ポッドキャストを聴いたことがない方も多いと思いますけれども、“聴く週刊女性”だと思って、楽しんでいただければと思います。

 どこから聴いても大丈夫ですよ。先週の話も私たちは覚えていませんから(笑)。

打ち解けるのに時間がかかったというが、今では阿吽の呼吸を感じる

 毎週金曜日が楽しみになる老若男女の“おばさん”続出中のポッドキャスト『OVER THE SUN』。

 自分の好きなタイミングで、さかのぼって聴くこともできるのがポッドキャストの大きな利点。思い立ったらスマホやパソコンのポッドキャストアプリでぜひ聴いてみては?

ジェーン・スー●1973年、東京都生まれの日本人。プロデューサー、作詞家、コラムニスト。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』(月〜木)でパーソナリティを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で講談社エッセイ賞受賞。2021年にドラマ化された『生きるとか死ぬとか父親とか』ほか、著書多数。
堀井美香●1972年、秋田県生まれ。TBSアナウンサー。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』第5週でジェーン・スーのパートナーを務める。近著に『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン刊)。

取材・文/高松孟晋 撮影/伊藤和幸