露木茂 撮影/山田智絵

 テレビが今より話題の中心だった時代、ニュースやワイドショーの時間の「顔」は、みんなの関心ごとでもありましたーー。時代の変遷や衝撃、ワクワクを伝えてくれたあの人は、今、どうしているの? 今だから話せる、当時のとっておきの話もうかがいました! 

露木茂(つゆき・しげる)
 1940年、東京都出身。早稲田大学卒業後、フジテレビに入社。以来38年間、報道番組、音楽番組、バラエティー番組のMCなどで活躍。2002年4月よりフリーとなり、『おはよう!グッデイ』(TBS系)メインキャスターを務める。

番組はスタッフが楽しみながら作らないと

「講演やステージの司会がコロナ禍で中止になり、昨年から家にいることが増えました」と語る、露木茂さん。

「朝、食事が終わると新聞を複数紙、すみからすみまで読み、それからネットのニュースを見て、気になるものがあればクリックして詳しく見ます。けれど、新聞に比べると深みがなく、物足りない感じは否めません。そして、テレビのニュース番組もあんまりぴりっとしませんね。方向性が定まらず、迷っている時代という印象です。

 3月に『とくダネ!』の小倉智昭くんが引退したのも象徴的な出来事でした。スタッフも登場する人も世代が変わって、若くなっていると感じます」

 元日本テレビのアナウンサー・徳光和夫さんとは学生時代からの親友で40年来の仲だが、今年に入ってある誤解を指摘したことがあるという。

「『女子アナ』という言葉を作ったのは僕だと徳光が言うのですが、僕はこの言葉は嫌いなので、ラジオ番組で訂正してもらいました。フジテレビ時代、確かに女性アナウンサーの才能を開花させるため、ニュース番組だけではなく、バラエティーや音楽番組などにも登場させることを推進しました。

フジの看板番組『小川宏ショー』を17年間ささえた

 しかし週刊誌のグラビアに登場するようなことを期待していたわけではなく、それぞれの性格に合った番組で頂上を目指していけばいいと考えただけです。

 僕自身、報道がやりたい、ニュースがやりたいと思っていながらワイドショーに配属され、その中でひとつずつ自分のやりたい仕事の幅を広げていったという経験がありました。女性アナウンサーもきっかけさえつくれば、才能が花開くのではと思ったのです」

 徳光さんとはテレビ論を交わすことはないが、言わなくても通じるものがある。

「仕事がない平日の午後、徳光はBSプレミアムの映画を見ていると言っていました。僕もまったく同じで、お互いそこまでしか言わないんです。『ほかに見るものがないだろ?』と言ってしまったらおしまいなので(笑)。

 僕は75歳でレギュラーはやめることに決めて番組をすべて降り、今はゲストで出るスタンスです。でも、番組に出ても、スタッフが楽しみながら作っているのを見たことがない。やっぱりスタッフが楽しみながら作らないと、面白い番組はできないと思います。それに比べると、YouTuberたちのほうが面白がって番組を作っているのではないでしょうか」

 80歳を過ぎても変わらない美声で、元気に仕事を続ける露木さん。

「声にハリがなくなったり、滑舌が悪くなったら仕事はやめると決めていますが、まだ大丈夫なうちは、認知症防止もかねて仕事はしていきますよ」

取材・文/紀和静