8月24日、東京パラリンピックの開会式が行われる予定の国立競技場

「ラムダ株は昨年末にペルーで確認されました。そこから感染が一気に広がって、いまではペルー国内のコロナ感染者のおよそ9割を占めていると言われています」

 そう話すのは、感染症の専門医で『KARADA内科クリニック渋谷院』の田中雅之院長。依然として猛威を振るう新型コロナウイルス。日本国内の感染者数は累計で100万人以上、死者数も1万5000人を超えるなど、「第5波」による感染拡大は深刻だ。その要因のひとつとして、強い感染力を持つコロナのインド型変異株・デルタ株の蔓延が挙げられている。そんななか、新たな変異株の脅威が囁かれている。それがペルー由来の変異株・ラムダ株だ。すでに国内でも確認されていて、

「ペルーに滞在歴のある女性が7月20日に羽田空港に到着。検疫が実施した検査でコロナ陽性が判明しました。その後、国立感染症研究所が詳しく調べたところ、ラムダ株と確認されました」(スポーツ紙記者)

デルタ株と同様に強い感染力

 前出の田中院長によると、

「ラムダ株の感染力は、デルタ株と同様に強いと言われていますね」

 アメリカのCDC(疾病予防管理センター)によると、デルタ株は1人の感染者から5〜9・5人に感染を広げると報告されている。ラムダ株の感染力もそれに匹敵するというのだ。医療ジャーナリストの村上和巳さんは、こう付け加える。

「確かにラムダ株は初期段階の研究では、デルタ株と同じ程度の感染力があるという結果が出ています。

 ただし、現実にどうなるかは正直言って不明ですね

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所より)

 というのも、ラムダ株はペルー、チリ、アルゼンチンなど南米を中心に31か国で確認されているが、

「なぜか南米のボリビアとブラジルでの感染者数が劇的に少ないんです。ブラジルにおいては、ペルーの50分の1ですから。ラムダ株の感染力についてはまだ謎の部分が多いんです」(同・村上さん)

 8月12日には、テキサス州などアメリカでもラムダ株が出現していることが発表され、世界的に感染拡大の兆しが見えているのも事実。別の医療関係者はこう話す。

「ラムダ株はこれまでのウイルスより感染者の体内のウイルス量が10倍以上も多いという報告もある。決してあなどってはいけない」

ワクチンが効かない可能性も

 次に、ラムダ株の毒性について。一般的に感染力が強ければ、毒性は弱まると言われている。つまり、感染力と毒性は反比例するようだが、

「ペルーでは19万人がラムダ株で亡くなっています。その数は、全人口3300万人の0・57%に及びます」(前出・田中院長、以下同)

 死亡者数を見ると、致死率が高いように思えるが、

「重症度が強いかどうかについては、実はまだよくわかっていません。症状についても、これといった特徴が見つかっていないんです」

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 では、ワクチンの効果についてはどうなのか。

「ラムダ株は新種ですから、“ワクチンが効かない”“効き目が低下する”ということも十分に考えられます」

 だが、日本はファイザーやモデルナのワクチンを使用しているが、ペルーは大半は中国のシノバック社製を使用しているため一概には比べられない、という意見も。

「どの程度、防げるかはわかりません。ですが、一定の範囲内では効力を発揮するでしょうから、やはりワクチンが最も効果的だと考えるべきです」(前出・村上さん)

 それに加えて、やはり徹底すべきことは、

「マスクの着用、手洗い、そして3密を避ける。この3つは心がけるようにしてください」(田中院長)

空港での抗原検査には“穴”が

 前述したラムダ株国内初感染者の女性。その後、彼女が実は五輪関係者だったことが判明し“情報を隠蔽したのでは?”と問題となっている。東京オリンピック・パラリンピック関係者の感染者数はすでに500人を超えている。組織委員会による感染対策のガイドラインでは、選手のほか、家族、マスコミ関係者などに、マスクの着用をはじめ、公共交通機関を使わないことなど、60ページを超える膨大な規則が設けられているが、

「新宿などの繁華街や観光地に出没していた五輪関係者がどれだけ目撃されたか……。ガイドラインなんて、まったく意味ないですよね」(前出・スポーツ紙記者)

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 8月24日からスタートする東京パラリンピック。実は南米の選手団124人はすでに来日している。

「空港の検疫所では、15分程度で結果が出る抗原検査をして、結果不明の人だけにPCR検査を行うという方式をとっています。しかし、抗原検査はPCR検査より感染者を検出する精度が落ちるので、必ずすり抜けが起きてしまうんです」(前出・村上さん)

 ラムダ株によって、さらなる感染爆発が起こらないことを願いたい──。