King&Prince

 21日夜から、今年も『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)が放送される。今回のテーマは「想い~世界は、きっと変わる。」で、メインパーソナリティーはKing & Prince。

 昨年はV6・井ノ原快彦、NEWS・増田貴久、Kis-My-Ft2・北山宏光、ジャニーズWEST・重岡大毅、King & Prince・岸優太という寄せ集め形式で「ふさわしいグループがいないのか」とも言われていただけに、「機は熟した」のだろう。

'98年、'03年、'10年、『24時間テレビ』のパーソナリティーを務めたTOKIO

 しかし、今年はコロナ禍が昨年以上の深刻な状況にある上に、過去最多58個のメダルを獲得した東京オリンピックが終了したばかり。

 「こんな時期に人が集まって何をやっているんだ」「オリンピックの感動には及ばない」などと批判されやすい逆境下での放送であり、事実ここまでの注目度は例年ほど高くない。

 だからこそ、この1週間は朝の情報番組から夜のバラエティーまで、日本テレビが放送するほとんどの番組にKing & Princeのメンバーが出演してPRを繰り返していた。その濃密さは例年以上のものがあり、King & Princeの背負った十字架の重さを感じさせられる。

 その重い十字架とは、コロナ禍や東京オリンピックではなく、「ジャニーズの先輩グループを超える」こと。具体的には、これまで単独でメインパーソナリティーを務めてきた「TOKIO、V6、嵐、関ジャニ∞、NEWS、KAT-TUN、Sexy Zoneを超える結果と評判を得られるか」という目で見られているのだ。

人気指標となる“キャッシュレス”募金

 King & Princeが先輩グループと比較されるのは、視聴率と募金額。たとえば寄せ集め形式だった昨年の15.5%と8.7億円というより、2018年のSexy Zone・15.2%と8.9億円、2016年のNEWS・15.4%と8.9億円あたりと比べられるのではないか。

 特に募金はメンバー全員でキャッシュレス募金を呼びかけているが、「協力した人にメンバーの“ありがとう動画”を配信する」という特典でどれだけ集められるのか。この施策は、コロナ対策、若年層対策というより、ファン数のバロメーターになってしまうだけに、King & Princeにとっては重要なポイントになるだろう。

 また、評判に関しては、個々が関わるコーナーで視聴者の支持を得ていかなければいけない。

 最大の注目を集めるのは、ドラマスペシャル『生徒が人生をやり直せる学校』で主演を務める平野紫耀。平野は実話ベースの物語で、問題を抱えた生徒たちと熱く向き合う新任体育教師を演じるのだが、ここで成功を収めれば連ドラ主演のオファーは増えるはずだ。

 ちなみに世帯視聴率では、昨年の重岡大毅主演『誰も知らない志村けん -残してくれた最後のメッセージ-』は22.6%、一昨年の相葉雅紀主演『絆のペダル』は18.0%、その前の中島健人主演『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』は16.2%、亀梨和也主演『時代をつくった男 阿久悠物語』は25.6%、加藤シゲアキ主演『盲目のヨシノリ先生~光を失って心が見えた~』は20.5%、山田涼介主演『母さん、俺は大丈夫』は20.2%を記録した。

 浜辺美波、伊藤英明、篠原涼子、北村有起哉、國村隼ら豪華助演陣がそろっていることもあり、グループのエース格である平野がどんな結果と評判を得られるのか。

『24時間テレビ』はスターグループへの“分岐点”

 リーダーの岸優太は、震災から10年が過ぎた福島ロケを実行。TOKIOと福島での米作りに挑み、復興の想いにふれるという。さらに『24時間テレビ』恒例のマラソン企画「復興への想いを繋ぐ 募金リレー」の第一走者を務め、五郎丸歩、荒川静香ほか7人につなぐ大役を担う。

 その他では、高橋海人がくまモン生みの親である水野学とタッグを組んだチャリTシャツは、どれくらいの売上を得られるのか。神宮寺勇太が黒柳徹子の特別授業とアレックス・ラミレスファミリーの密着ロケ、永瀬廉は小児がんと闘う少女の動画制作をサポートするという。

 さらにレギュラー番組の“24時間テレビ特別編”への出演もあり、どれだけバラエティー対応できるか、明るいムードを作り盛り上げられるか試されている。嵐の活動休止後、テレビ業界にはスターグループ不在の状態が続いているため、もしKing & Princeが先輩グループの結果と評判を上回ることできたら、その座に近づけるだろう。

 逆に結果と評判が期待値を下回った場合、King & Princeはどうなっていくと見られているのか。同等以上のシングルセールスを誇るSnow Man、SixTONES、11月12日にデビュー予定のなにわ男子に取って代わられてしまう危険性がある。ジャニーズ事務所の“若手グループ群”に留まるのか、その中から一歩抜け出し、スターグループとして引っ張っていくのか。今回の『24時間テレビ』は、その分岐点になるかもしれない。

SixTONES(左)とSnowMan

 リーダーの岸優太は、「コロナ禍での放送となり、きっとさまざまなご意見があると思います。ですが僕たちが今できることを精一杯思いを込めてテレビの前のみなさんに届けるつもりです。今年も24時間テレビよろしくお願いします」と真摯な表情で語り、頭を下げていた。

 放送前の現段階で、ただ1つ確かなのは、どんな結果と評判に終わったとしても、彼らが貴重な経験を得て、技術・精神ともにたくましさを増すこと。かつてSMAPも嵐も雌伏の時を過ごしたあとスターグループになったように、彼らにとってどう転んでも悪い方向に進むことはないのではないか。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。