ダウンタウン。「浜ちゃんに叩かれるとブレイクする」という迷信も…

 8月24日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会が、「痛みを伴うことを笑いの対象にするバラエティー番組」についての審議に入ることを公表した。

どうなる「笑ってはいけない」シリーズ

 出演者が痛がる行為を、共演者ら番組サイドが仕掛け、それを“笑い”にするということを指しているようだが、これらはバラエティー番組ではよく見る構図。そこに「不快だ」「いじめを助長する」といった意見がBPOに寄せられているのだという。

「ケツバットに足ツボ、ビンタ、鼻ザリガニ、熱々おでんや熱湯風呂などの“熱い”系や、“激辛”や“大盛りわさび”などのフード系もそこに含まれるかもしれません。それらにお笑い芸人たちが『痛い痛い痛い!』『アチチ!』と悶絶する姿は、おなじみの光景であり、多くの視聴者の笑いを獲得してきました。コンプライアンスが重要視される時代とはいえ、それらがNGとなったらバラエティーの表現の幅は、またひとつ減ってしまうといえます」

 と語るのは、ある芸能記者。これらの典型的ですべてが詰まっている番組といえば、大晦日恒例の人気番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の『笑ってはいけない』シリーズを思い浮かべる人は多いはずだ。笑ってしまった“罰”としてお尻を叩かれ、ときにはタイキックも浴びる。

「そこが大きな笑いを生むわけですから、今回のことでNGの基準が強まると、番組の存在が根幹から揺らぎかねません」(同前)

 最近も、“痛みを伴う”という意味ではかなりグレーな番組が放送されたばかり。8月17日放送の『芸能界常識チェック!〜トリニクって何の肉!?〜』(テレビ朝日系)で、“激辛”と“足のスネ”の強さ自慢が集まり、それを競うというものだった。前出の芸能記者が言う。

「痛みに強い人と自称する人が、自ら立候補するかたちで辛さや痛みに耐えて競うものなので、嫌がる人に無理強いしているわけではない。しかし、どのぐらい辛いのか、どのぐらい痛いのかを伝えるために、MCの浜田雅功が霜降り明星やタカアンドトシにやらせ、彼らが悶絶して笑をとるシーンがありました。浜ちゃんに言われたらNOとはいえないですよね(笑)それに“やる側”も笑いにつながる“おいしいシーン”として、大げさに反応している場合もあると思います

番組がどんどんつまらなくなる怖さ

 1980年代、チャンバラトリオやザ・ドリフターズがハリセンやメガホンでメンバーを叩いて多くの国民を笑わせ、その後も片岡鶴太郎に稲川淳二、ダチョウ倶楽部や出川哲朗など、リアクションの面白さでブレイクした芸人やタレントは数多い。彼らの「痛みを伴う笑い」の貢献度は高いと言える。

 BPOの審議が開始されるのは9月に入ってからで、どのような結論が出るかはまだ全くわからない状態だが、テレビの現場、番組作りにに大きな影響を及ぼすことは間違いない。

「罰ゲーム、特に叩いたり蹴ったりするようなものは、すでに“なるべくやらない”ようになってきているが、何がOKで何がダメなのかの見極めがすごく難しい。そこまで自粛しなくてもよさそうなものでも、少しでも不安があると“やめておきましょうか”となってしまう。そこを見誤ると、番組がどんどんつまらなくなるという怖さがあります」

 と、バラエティーを手がける放送作家はこの流れを危惧する。さらに、このままいくとリアクション芸人の活躍の場も少なくなってしまう。

「罰を受けてリアクションを取る、という流れは確実に減ってきていますね。今後はYouTubeに活路を見出していくのではないでしょうか。でも強制的に『お前がやれ』→『嫌です』→『やれ』→『痛い痛い』はダメです。痛いと感じていない、笑いをとってますよ、というものが見せられれば大丈夫なのかなと思いますが」(同前)

 たとえポーズにしても、強制的にやらされ「痛い痛い!」という流れが笑を生んでいたわけだが、今後は面白いかは別として「やってみたい!」と、次々と挙手をする“自己申告”ならOKということか。

 その流れ、どこかで見たような……。

「そうです、ダチョウ倶楽部です(笑)。“聞いてないよー!”は今の時代のコンプライアンスにぴったりで、ダチョウ倶楽部さんは時代を先取っていたのかもしれません」(同前)

「どうぞどうぞ」が標準になる時代が、ついに到来か!?

〈取材・文/渋谷恭太郎〉