(左から)中居正広、内村光良、松本人志、岡村隆史

 8月28日、29日の2夜連続でゴールデンタイムに生放送された大型特番『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』(フジテレビ系)が放送終了後も大きな話題を呼んでいる。

 同番組のテーマは「歌と笑いの融合」。「音楽」と「お笑い」という2大エンターテインメントの神髄を生放送で届けるという内容で、2夜連続でそれぞれ4時間以上、トータル約9時間の超大型プログラムとなった。

『FNSラフ&ミュージック』超豪華な出演者

当記事は「日刊大衆」(運営:双葉社)の提供記事です

 番組のキャプテンをダウンタウンの松本人志(57)が、サポーターを中居正広(49)とナインティナインの岡村隆史(51)と矢部浩之(49)、アシスタントサポーターを千鳥の大悟(41)とノブ(41)、アンタッチャブルの山崎弘也(45)と柴田英嗣(46)という超豪華な顔ぶれが務めた。

 また、総合司会は今年4月にフジテレビに入社した小山内鈴奈アナウンサー(24)、小室瑛莉子アナ(22)、竹俣紅アナ(23)の3人が担当。

 サンドウィッチマンチョコレートプラネットなどの人気芸人の渾身ネタや、浜崎あゆみ(42)、中島美嘉(38)、Awesome City Clubといった人気アーティストのパフォーマンスのみならず、芸人とアーティストのコラボも番組を盛り上げた。

 第1夜では、山崎育三郎(35)、尾上松也(36)、城田優(35)のプロジェクト「IMY(あいまい)」とどぶろっくがコラボし、どぶろっくの人気ネタ「大きなイチモツをください」を披露した際には、松本が「涙出そうになった」とコメント。「イチモツ」はツイッターのトレンド入りするほどだった。

 さらに第1夜では、ダウンタウン・松本と爆笑問題・太田光(56)と田中裕二(56)が、2014年3月の『笑っていいとも!グランドフィナーレ感謝の超特大号』(フジテレビ系)以来、実に7年ぶりに共演。

 かねてより“共演NG”だと言われてきた松本と太田の共演に、スタジオの共演者からも緊張感がうかがえたものの、太田自ら「共演NG!」とカメラに向かって叫んだり、松本と太田がそれぞれファイティングポーズを取って笑いを誘うなど、番組は大盛り上がりとなった。

 第2夜では、前日に松本から放送内での生電話で出演オファーをされたウッチャンナンチャンの内村光良(57)が、同じく日曜日の20時から放送されている『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)との“裏かぶり”を避ける形でスタジオに登場。

 松本と内村のトークに、ナイナイの矢部は「我々からしたら『夢で逢えたら』(フジテレビ系)ですよ」と感慨深げにコメント。岡村も「写真撮っていいですか?」とお願いするなど、念願のツーショットを嬉々として見つめていた。

「芸人とアーティストのコラボ、大物芸人同士の超レアな共演、禁断の共演があったりと、両日とも注目ポイントが目白押しでした。また、番組内に中継でたびたび登場するロバートの秋山竜次さん(43)が扮する“プロのTORIMAKI”白木善次郎も番組を盛り上げました。

 秋山さんは例年、『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)に登場するビートたけしさん(74)扮する“火薬田ドン”を彷彿とさせる役回りだったため、ネットには“白木さんは火薬田ドンさん的な立ち位置なの?”、“1年に1回は見たい”というコメントもありましたね」(テレビ誌編集者)

『27時間テレビ』に代わるフジの本気

 フジテレビでは、コロナ禍で昨年、今年と『27時間テレビ』の放送はなかったものの『ラフ&ミュージック』は『27時間テレビ』に代わる、お祭り感、特別感満載の番組になったのは間違いないようだ。

ただ、これまで『27時間テレビ』を盛り上げてきたたけしさん、明石家さんまさん(66)、タモリさん(76)の“お笑いBIG3”の出演はありませんでした。テレビ各局では現在、13~49歳のコア層と呼ばれる若い層の“コア視聴率”を重視しています。

 さんまさんはまだコア層にも支持されていますが、たけしさんではコア視聴率は取れない、と言われて久しいですからね」(制作会社関係者)

 8月27日の『デイリー新潮』では、たけしの元で10年ほどマネージャーを務めた男性が8月末で退社すると報じている。男性は3年前の「オフィス北野」からの独立騒動でも、たけし本人からマネージャーを務めてほしいと声がかかった人物で、たけしが設立した新会社「T.Nゴン」でも役員を務めていたという。

2018年春の独立以降、数々の騒動が報じられていますし、ギャラが超高額にもかかわらず、コア視聴率が取れないため、たけしさんがリストラ危機にあるという記事もたびたび出ています。

 一方、ダウンタウンの番組は世帯視聴率はそれほどよくありませんが、コア視聴率は堅調。そして内村さんといえば、言わずと知れた『イッテQ!』MCですからね。同番組は、1週間の全局の全番組で最もコア視聴率が高い番組です」(前出の制作会社関係者)

『ラフ&ミュージック』の平均世帯視聴率は第1夜が8.7%(すべてビデオリサーチ調べ、関東地区)、第2夜が9.2%だった。

「世帯視聴率は2桁に達しなかったわけですが、コア視聴率では第1夜が7.0%、第2夜が7.5%と高い数字を記録しています。ちなみにこの日の『イッテQ!』のコア視聴率は8.9%と、やはりかなり高い数字をたたき出しています」(前同)

『ラフ&ミュージック』はこのコア視聴率から考えても大成功したと言える。

「松本さんも内村さんも50代後半のベテランですが、若者にまだまだ訴求力がある。今のお笑い界の事実上のトップと言えるでしょうね。今回の『ラフ&ミュージック』でわかったのは、お笑い界のトップが完全に交代したということ。

 テレビ局が求めているコア視聴率を持っているのが松本さんと内村さんの2人で、その下には2人より若手の芸人が続く、という構図です。そして、コア視聴率がほしい番組には、たけしさんは残念ながら求められていない。

『ラフ&ミュージック』は“たけし切り”を断行し、松本さんと内村さんを頂点とした芸人の若返りを図るという意図もあったのではないか、ともささやかれていますね」(同)

フジテレビが「お笑いと音楽」にした狙い

『ラフ&ミュージック』で世代交代は図られたのか、番組の印象についてお笑い評論家のラリー遠田氏に話を聞いた。

たしかに世代交代感はすごい強かったです。BIG3も年齢を重ねていますからね。BIG3世代の芸人を支持しているのは40代以上、ど真ん中だったのは50~60代とかですから、コアのターゲットからは外れています。今のテレビ局としてはもうちょっと下を狙いたい。

『ラフ&ミュージック』では一番上が松本さんで、そこから下の世代の芸人がごっそり出演していました。千鳥や霜降り明星といった今一番旬の芸人をメインに、その上に松本さんがいるという座組です。そこに“お笑い番組と音楽番組を組み合わせよう”という発想で、豪華出演者を共演させて盛り上がるという、いい意味でフジテレビっぽい番組になりました

 そのような豪華出演者をそろえた特番ができるのは、民放だと音楽番組だけになっているという。

各局、音楽番組は6時間や8時間など、大型化しています。音楽番組はコア層に刺さるキャスティングができますからね。その音楽番組とお笑いを組み合わせたのがフジテレビ的発想です。そしてあれだけの豪華出演者をキャスティングできるのはフジテレビだけ。芸人やアーティストとの関係性があってこそ実現したメンバーですよね」(ラリー氏、以下同)

『27時間テレビ』がない現状、『ラフ&ミュージック』はフジテレビを象徴する特番となった。

音楽とお笑いの融合という新しいパッケージでやったのも、40代から下の若者をガッチリつかむため。今が旬の芸人は当然押さえていたわけですが、松本さん、中居さん、ナイナイの共演というのもすごい。松本さんとナイナイが共演するだけでも視聴者は“おっ!”となります。もちろん、松本さんと内村さんの共演も盛り上がる。

 ただ、それがど真ん中に刺さるのは30~40代です。コア層でも上の世代にも目くばせしつつ、今が旬の若い芸人やアーティストに出演してもらい10~20代に訴求している。つまり、“コア層の全部取り”を狙ったのではないでしょうか。コア層を取り込む豪華メンバーをしっかり押さえているわけです

若い人たちに見てもらうために

 BIG3の出演がなかったことについては、

土日は他局でもいろんな番組をやっていて、NHK大河ドラマや『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)などのシニア層狙いの番組もある。そこと競合しないように、若い人に見てもらうために、『ラフ&ミュージック』はコア層に振ったのではないでしょうか。

 また、芸人とアーティストの共演が実現できたのもフジテレビの経験値ですよね。アーティストにはお笑いの企画や、芸人とのトークを嫌がる人も少なくない。ただ、フジテレビではこれまで『Hey!Hey!Hey!』や『LOVE LOVE あいしてる』のような、バラエティ番組っぽい音楽番組をやってきた実績がある。

 だからこそ、他では呼べない、浜崎あゆみさんのようなカリスマアーティストも呼べた。なんでもお祭りにしてしまうフジテレビのいい部分が出ていましたね」

 8月30日、番組のキャプテンを務めた松本人志は、「ラフ&ミュージック。おおむね好評だったようで大成功ぽい感じです! 皆さんお疲れ様でした! ありがとうございました!」「来年は浜田で五夜連続だそうです!」とツイートした。

 高いコア視聴率を記録した『ラフ&ミュージック』は、視聴率低迷で苦しんだフジテレビの“逆襲の第一歩”なのかもしれない――。