大分県臼杵市の若林純一市議会議員(本人ツイッターより)

  大分県臼杵(うすき)市の市議会議員が「子どもに新型コロナウイルスワクチンの接種停止を求める」というチラシを配ったことで、物議を醸している。

「臼杵市の若林純一市議(61)は8月下旬~9月初め、市内の中学校周辺などで中学生らに対し、コロナワクチンの接種停止を求めるチラシを配っていました。

 チラシには“未成年に対して(ワクチンを)接種するメリットはあるのか”“感染予防効果は不明”などと記されていた」(地元紙記者)

若林市議が配布していたチラシ

 チラシを配布する際、若林市議はマスクを着用せずに子どもに手渡していた。そのため市や議会事務局などに「子どもが怖がっている」などと苦情や抗議の電話が殺到。市議会は9月14日に全員協議会を開き、若林市議に厳重注意した。

 一連の騒動を受けて若林市議は14日、取材陣に対して、「間違った情報を伝えたつもりはない」などと語っていたという。

 国内では現在、国民の約半数が2回目のワクチン接種を終えており、今後の感染拡大に歯止めがかかることが期待されている。

 一方、最近になってデルタ株の流行により、今まで感染例が少なかった子どもへの感染や重症化のケースが増えている。

 そんな中、「子どものワクチン接種停止」を求めた若林市議にはどんな意図があったのか――。電話取材に本人が応じてくれた。

「子どもは重症化することはありません」

ワクチンの将来的リスクはきちんと証明されていないし、治験も終了していない。不明なものを子どもたちに打つことの方がリスクは高いのではないかというのが私の考えです

臼杵市議会から若林市議に送られた厳重注意の文書

 自信たっぷりに語る若林市議。チラシ配りの背景を語りだす。

コロナについては、子どもは重症化することはあまりありません。また国内での未成年者の死亡は、未だゼロです」(以下、若林市議)

※実際には9月8日、大阪府で10代後半の男性がコロナ感染で亡くなったことが発表されている。男性は基礎疾患など複数の重症化リスクがあったようだが、未成年の死亡者はこれが全国初めてだった。

 それにもかかわらず、

テレビや新聞では、コロナの怖さとワクチンの安全性に偏った報道がされています。

子どもが一人も死んでいないということすら知らない親が、おじいちゃん、おばあちゃんに会うためという理由で子どもに打たせているような状況。そこに危機感を抱いた

ビラ配りは“濃厚接触にあたらない”

 そうした背景から、チラシを配ることを思いついたという。

多くの人は、ワクチンがどれだけの怖さなのかわからない。自主的に調べられる人なら良いが、それ以外のほとんどの人は何が正しいのかを見極められていない。

 ワクチンが子どもに及ぼすリスクをしっかり理解したうえで接種を検討してほしいと感じ、考えるきっかけを作ろうという想いで今回のチラシ配りを始めました

 それならばリスクを冒して“ノーマスク”でチラシを配るのではなく、別な方法も考えるべきでは……。

親に最低限のことは知ってもらいたいと思いました。そこで、教育委員会やPTAにワクチン接種の危険性を親たちに訴えたいと要望したが拒否された。それでやむを得ず、子どもに渡して親と考えてもらおうというイレギュラーな方法をとったんです

チラシは9月13日の読売新聞にも意見広告として掲載された(若林市議のフェイスブックより)

 マスクを着用しなかったことについては、

マスクの有効性はある程度認めています。ただ、屋外で子どもにビラを渡す際においては、マスクを着用する必要性を感じていなかった。ビラ配りは濃厚接触にあたらないと考えています。結果的に子どもたちを怖がらせる結果になったということについては反省しています

 一部ではワクチンを打つと“遺伝子改変が起こる”“不妊になる”など医学的に誤った情報が氾濫している。若林市議の考えはというと、

(陰謀論については)人それぞれの考えだから、否定派しません。お年寄りにかんしては、ワクチンを打つ価値はあると思う。接種反対派にくみするつもりはないが、ただ、少なくとも子どもに打つべきではないという確信はある

 あくまで考えるきっかけを作りたかったという若林市議。本人は「免疫を高める努力をしている」との理由から、妻ともどもワクチン接種をしていないとのこと。

「今の状況を見ると、とにかく“みんな打て、打たない人は非国民”という感じになっていますよね。打つかどうかは個人の判断ですから、これを機に将来のリスクについて正確な情報が広まることを望みます」

 だからと言って“ノーマスク”でのチラシ配りは誤解を生むだけ。結果的に市民の不安を煽ってしまった市議の行動はいかがなものか――。