‘21年9月現在で最も新しいウルトラマンシリーズ『ウルトラマントリガー』のイベントが中国でも開かれることを伝えるポスターの一部(画像は中国のSNS・微博より)

 2021年9月、中国の広東省でウルトラマンの偽物のフィギュアを大量に製造していたグループを逮捕したと現地の公安当局が発表した。日本円で約7000万円を売り上げたとみられている。中国でも人気の高い日本発のヒーローだが、日中間の“過去の遺恨”から問題も起こっているようでーー。

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大人気でも“中の人”はNG

 2021年で放送55周年を迎えたウルトラマンシリーズ。中国では1993年から放映が開始され、根強い人気となっている。現在でもお菓子からスマホ、献血の啓蒙まで、さまざまなCMに起用されているほどだ。

 筆者は中国の遊園地で独特にアレンジされたウルトラマンを好んで撮影している。だが、中国国内においてライセンスに対する感覚が向上したこともあり、年々少なくなっていくのも寂しい限りだ。

独特にアレンジされたウルトラマン(画像クリックで個別の写真を確認できます)

 現在中国では、ウルトラマンの大規模展覧会が大都市を回って開催されている。ウルトラマンに出演した俳優たちは、何年たっても根強い人気があるという。

 しかし、『ウルトラマンダイナ』で主人公アスカ・シンを演じたつるの剛士だけは別だ。彼は靖国神社を参拝したということで、中国人からかなり嫌われている。中国の人気動画サイトの『bilibili』では、靖国神社に参拝した日本の芸能人をまとめて紹介、「中国をバカにしているのか?」と酷評ぶりが徹底している。

つるの剛士

 円谷プロダクション公式の中国向け動画では55周年の記念を喧伝する内容があふれているのだが、中国の国民感情を考慮してか、つるの剛士だけは外されているという。

 靖国神社参拝は、日本の芸能人だけではなく、中国人が行った場合も大きな反感を買う。

 日本でも話題となり、地上波でも放映されたブロマンスドラマ『山河令』で主役を演じた張哲瀚(チャン・ヂャーハン)が、2018年に靖国神社へ参拝したことから、中国のネットユーザーから罵倒され、事実上、芸能界から追放されてしまった。

 また、女優のヴィッキー・チャオ(趙薇)が出演していた国民的ドラマ『還珠格格』や映画『画皮』が動画配信サイトから閲覧できなくなった。理由の1つとして、2001年にヴィッキー・チャオがファッション誌で旭日旗をデザインした服を着ていると報じられ、世間から猛批判を浴びたことも挙げられている。完全にとばっちりとしか思えないのだが……。

筆者も体感した“反日の洗礼”

 中国には、親切な方が多いと実感しているが、稀に反日発言の洗礼を浴びることがある。吉林省長春市のタクシーの運転手に「お前は日本人だろ? 靖国神社に参拝したことがあるのか?」と言われ、正直に「2016年に靖国神社へ参拝したら、中国人参拝客を何人も目撃した」と述べたところ、話の流れで「日本とは一度、戦争をしたい!」とブチ切れられた。ちなみにその運転手は、なんと運転中にスマホで『聖闘士星矢』のゲームをプレイしていたのだが……。

文責・関上武司(せきがみ・たけし)●1977年、愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市を訪問。『中国遊園地大図鑑』(パブリブ刊)シリーズを執筆し、各メディアで話題。