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《失われた信頼を回復できるよう、償うべき償いを行い、これからの議員活動で答えを導きだしながら、ご奉仕させていただきたい》

 9月28日にそう自身のホームページで表明したのは元都民ファーストの会の木下富美子東京都議。

 今年7月、無免許運転で当て逃げ事故を起こした。木下都議は自動車運転処罰法違反の罪などで書類送検され、都議会では2度にわたり辞職勧告を決議されている。

 木下都議は冒頭にあるように辞職しない意向を示す。その一方で、体調不良を理由に都議会定例会をすべて欠席。正副議長の「出頭」にも応じず、公の場所に姿を現していない。事情を聞くため板橋区の事務所と豊島区の自宅を訪れたが、応答はなく、送ったメールにも返信はこなかった。

 木下都議は騒動に対する都民への説明も果たさず、雲隠れを決め込んでいるのだ。

木下富美子東京都議のツイッター。10月26日現在、アカウントは非公開になっている

権力にしがみつく議員の卑しさ

 元衆議院議員で、自身も不祥事により辞職した経験がある宮崎謙介さんが説明する。

「木下都議が辞職をせず、表にも出てこない理由は2つ考えられます。まず、初めて大きなバッシングを受けたことで精神的に参ってしまい身動きがとれない。もう1つは大変なことをした自覚はあっても、その後の生活を考えて辞められない。そんな事情があると推測されます」

 国会議員、地方議員問わず、辞職勧告を受けたとしても除名処分をされない限り、いつまでも議員を続けられるのだ。

「これは身から出たさびです。世の中からこれだけの反感を買っており、さらに体調も崩している以上は早くに決断をしたほうが本人にとってもいいでしょう」(前出・宮崎さん)

 木下議員に限らず、辞職勧告を受けている不祥事議員は少なくないのだが、一様に議員の椅子にしがみつく。

 ジャーナリストの大谷昭宏さんが指摘する。

「お金と名声、数多くの特権は非常に魅力的なのでしょう。国会議員ならば月100万円を超える歳費などの収入もあります。以前、野々村竜太郎元兵庫県議は『調査活動費』を不正に使い、温泉三昧、カラ出張を繰り返していました。野々村に限らず、飲食や生活費に充てるなど不正な利用が相次いでいます」

 木下議員にも300万円もの歳費が支払われている。

 議員たちが受け取っている“恩恵”は私たちが支払っている税金。不祥事政治家に1円でも渡るのは腹立たしい。

「その権力によって懐に入る金は歳費以上に大きい」

政治家の給料

金絡みで逮捕される議員は氷山の一角

 地方議員の政治家秘書を務めていた菅原修二さん(仮名)は恐るべき『政治とカネ』の実態を暴露する。

「かつて自民党の総裁選では“だるま”“レンガ”という隠語がささやかれていました」

 1000万円が入ったウイスキーの箱を“だるま”、500万円の箱を“レンガ”と言っていた。候補者は各会派の有力な議員に“ダルマ〇個”“レンガ〇個”と称して金を渡し、有利になるように働きかけていたという。

金絡みで逮捕される議員は氷山の一角。基本、表には出ない。あの手この手を駆使して大金を流しているんです」(前出・菅原さん、以下同)

 金銭の受け渡しだと足がつくおそれがあることから、支援者が絵画や骨董品を送ることもあったという。

「支援者からもらったものを指定の店で売却する。すると最初から決められていた金額の現金を受け取れる。これは支援者も店主もグルということ。与野党問わず躊躇することなく賄賂を受け取っている政治家は少なくないです。それに政治家がもらうカニやメロンのような豪華な贈答品は“手土産”にすぎません」

 議員はお金以外にもさまざまな特権がある。行列に並ばずに優遇されるといった些細なことや、その権限で一般人が知りえない情報を調べることもできる。役所への口利きや有権者に対して便宜を図れる権力、それらを手に入れることで感覚が狂っていく。

「議員バッジをつけ、どこに行っても“先生”と呼ばれたら“こんなに偉いんだ”と勘違いする」(前出の大谷さん)

 行政も思いのままに操る。

「公共事業の受注など、業者に頼まれて役所に口利きをすることも珍しくありません。その見返りの金額を事業の予算の一部に計上させ、受け取っていた議員もいました」(前出・菅原さん)

私利私欲に走る政治家を選んだのは有権者

 だが、苦い汁を飲むことも。

「高い歳費をもらっても、秘書や事務所スタッフの人件費はじめ自腹を切る場面はたくさんあり、苦労しました。若手は権力もありませんし、辛辣な言葉を浴びせられたこともあります。なにより自分を律し、甘い誘惑とどう向き合っていくかが求められています。私自身、当時は若気の至りや意識が低かったこともあり、不祥事を起こしてしまった。猛省すると政治家を志したときの純粋な思いが甦り、国民に申し訳ない気持ちになりました」(前出・宮崎さん)

 宮崎さんはけじめとして辞職したという。

「崇高な気持ちで政治を行っている人もいます。ですが、変わってしまう人は残念ながらいます」(前出・菅原さん)

 私利私欲のため法を犯す議員も少なくない。しかし、裁判中であってもその資格は剥奪されず、有罪になり、公民権が停止になるまで歳費は支払われ続ける。

「公職選挙法違反の罪で実刑判決を受けた河井案里、克行夫妻がいい例。嫌疑のかかった議員の歳費停止が国会で決まったのは最近のことです」(前出・大谷さん、以下同)

 忘れてはいけないのはこうした政治家を選んだのは私たち有権者だということ。

「同じ轍を踏まないためにもしっかり判断する必要があります。不祥事議員だけでなく、安倍元首相・菅前首相らは在任期間中、文書の改ざんや隠蔽などとんでもない政治をしてきた。そんな政治家にばっかり票を入れてもいいのか。甘い汁を吸ってきた年老いた権力者たちを一掃するためにも非常に大事な選挙です」

 10月31日、衆議院議員選挙の投開票が行われる。

「多くの政治家は地道に活動をしています。候補者の政策や主張をちゃんと聞いてほしい。そして会えれば直接、話をしてください。政治家は有権者の声を聴くのが仕事です」(前出の宮崎さん)

 どんな“未来”を選ぶかは私たちの1票に託されている。