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 芸能人の美容整形公表や、整形体験を発信するYouTuberも珍しくなくなった昨今。大掛かりな手術だけでなく、ヒアルロン酸注入などの「プチ整形」も人気で、すっかり市民権を得た様子だ。実際には、どのような理由で、どんな箇所を、いくらかけて整形している人が多いのか? そこで今回はYahoo!ニュースの協力で、整形したことがある人1183人を対象にアンケートを実施(2021年7月29日〜8月5日)。さらに大手美容整形クリニックの医師にも話を聞き、令和・コロナ下での整形のリアルを浮き彫りにする。

コロナ下で国内の整形需要が増加

 新型コロナウイルスの蔓延で、2020年2月ごろから海外への渡航が制限されるようになった。マスクで顔が隠れる日々も続いている。
 
「実数がすごく増えたというわけではないのですが、この機会にやっちゃおうという人は明らかに増えましたね。最初はマスクで隠れる鼻や口元の施術が人気でしたが、そのあとはマスクのせいで逆に目立つからでしょうか、目元が増えました」

 と話すのは『共立美容外科・歯科』で副総括院長と渋谷院院長を兼任する磯野智崇医師。近年、価格の安さもあって韓国で美容整形をする人が多かったが、国内需要が高まったという。

 アンケートで「コロナ下であることが整形する理由の一つになりましたか?」と聞くと、「はい」は13.5%、「いいえ」は21.1%と、そこまで影響は見られず。2019年以前に整形したという人が65.3%に上った。

コロナ下であることが整形する理由になりましたか? ※Yahoo!ニュースの協力で、整形したことがある人1183人を対象にアンケートを実施(2021年7月29日〜8月5日)

二重整形がぶっちぎりの人気

 整形した箇所を聞くと、1位は「二重まぶた・目元」(56.2%)で半数以上を占めた。

 二重まぶたにした人が圧倒的に多く、理由としては「目つきが悪いと言われ続けていた」「いつも眠そうな目元で学生のころから悩んでいた」「営業の仕事がやりたいが目つきが悪く印象がよくなかったため」など、切実な回答が並ぶ。

 学生時代からコンプレックスがあり、社会人になってから二重にする人が多い中、磯野医師によれば、若年化も進んでいるという。

「15年くらい前と比べると、最近は中高生が目に見えて増えました。今はアイプチで二重を作る子が多いのですが、毎日やっていると皮膚がかぶれたり、真っ赤になってしまう子もいるんです。親御さんも見かねて、埋没法で二重にするケースが多いですね」

 埋没法はまぶたを糸で縫いとめる手術で、糸を取れば元に戻すこともできる。7〜8歳から受けることが可能で、費用は人によるが大体3万〜10万円程度と手頃なため人気だという。

『高須クリニック東京院』の入谷英里医師も、「お母さんがお子さんに『二重はこのラインがいいんじゃない?』とアドバイスすることもあります」と話す。注意したい点としては、「埋没法は痛みがほとんどなく、腫れも少ないので手軽ですが、体質や癖などによってはまれに元に戻ることがあります。また、皮膚や脂肪が厚い場合は施術しにくいので、医師とよく相談してください」と話す。

 また、「今は韓国アイドルのような顔になりたいという方が多く、末広の自然な二重が人気です。目の見開きをよくしたいと、若くても眼瞼下垂の手術(本来は加齢などで垂れ下がったまぶたを上げる手術)をする人も増えていますね。ただ、目元は老化で崩れてきやすい場所なので、眼瞼下垂や垂れ目形成などの手術後は、人によって修正が必要になることも。アフターケアがしっかりしているクリニックを選ぶといいでしょう」(入谷医師)

韓国女優のツンとした鼻に憧れる若い女性も

 目に次いで人気のパーツは「鼻」(9.6%)で3位にランクイン。鼻の低さに悩んでと回答する人が多かったが、「団子鼻で、見栄えが悪いので整形しました」「ワシ鼻なため」など、形を気にしている人も。

 最近では、ヒアルロン酸を注入して鼻を高くしたり、溶ける糸を入れて鼻先を高く持ち上げる手軽な施術が根強い人気だそう。また、プロテーゼを入れたり、耳の軟骨を鼻先に移植する『耳介軟骨移植』といった比較的大掛かりな手術の需要も増えているという。

「鼻の整形需要は増えているのですが、中でも小鼻を気にする人が前より増えていると感じます。笑ったときに小鼻が広がるのを嫌がる若い女性が多いんです。団子鼻でないのに本人は団子鼻だと言って気にしていて、小鼻縮小手術を希望される。インスタなどで、韓国の女優のツンとした鼻を見慣れているせいもあるのかもしれません」(磯野医師)

 入谷医師によれば、鼻は高さや形など、デザインのこだわりが強い人も多いという。

患者さんの中には、“この芸能人と同じような高さ、細さにしてほしい”と言われる方もいますが、思い通りの形にならないこともあります。また、例えば丸顔で童顔の方が鼻だけツンと高くても不自然に見えてしまうこともあるので、自然で美しい鼻になるためにはその方の顔に合った形にすることが大切です。手術前に医師としっかりカウンセリングを行うようにしましょう」(入谷医師)

整形した箇所はどこですか? ※Yahoo!ニュースの協力で、整形したことがある人1183人を対象にアンケートを実施(2021年7月29日〜8月5日)

“ヒアルロン酸はエチケット”の時代

 そして鼻を押しのけて2位に食い込んだのが、ヒアルロン酸・ボトックス注射などによる「シワ取り」(15.6%)。「ほうれい線や年齢ジワで見た目がかなり老けて見えたので」「眉間にシワがあり、怒っていないのに、誤解されてしまう」など、目尻・眉間・ほうれい線に悩んで整形したという人が多く見られた。

「美容整形とひと口に言っても、いわゆる美しい顔を目指す整形と、若さを目指す整形の2本の柱があります」と入谷医師。ここ数年は、シワやくぼみを解消するヒアルロン酸やボトックス注射、たるみに効く『ハイフ(ウルセラ)』や美肌になる『IPL』など機器を使ったアンチエイジングメニューが特に人気だという。

以前は整形ってものすごくハードルが高かったと思うんですが、20年くらい前にプチ整形が流行り始めてから、エステとの差が縮まってきた気がします。神田うのさんが以前 “ヒアルロン酸はエチケット”だとおっしゃっていましたが、そういう認識が広まったのか、気軽にアンチエイジングの整形をする人が多くなりました。美容院に行く感覚で、定期的なメンテナンスを数か月に1回はされる方も。昔に比べると10歳くらい若く見える患者さんが増えてきて、顔とカルテの年齢を見比べて、あれ!? と驚くことも多いです」(入谷医師)

 中年以降の加齢による悩みを解消するだけでなく、最近はなんと20代からアンチエイジング整形をするケースも急増しているという。磯野医師が続ける。

「以前は加齢現象が出てしまってから施術を受ける中高年が多かったのですが、いまは20代前半から先手を打って『糸リフト』やボトックス注射をする方が増えています。糸リフトは溶ける糸を顔の数か所に入れて引っ張り上げ、ボトックス注射はシワができる前に打つ。20代なら当然、まだたるみやシワはないわけですが、やっておくと将来の予防になるということなんですね」

 まさに転ばぬ先の杖。それほど今の若い女性は、加齢に対する恐怖心を持っているということなのかもしれない。

 しかし磯野医師によれば、『糸リフト』は痛みや腫れも少ないが、半年から数年単位で糸が溶けていき引き上げ効果も落ちていくという。ボトックス注射も効果は半年程度、ヒアルロン酸も徐々に体内に吸収されていくので、効果を維持し続けたい場合は定期的に施術を受けることが必要になる。

 若い女性の整形ニーズを高めている要因として、インスタグラム、TwitterなどのSNSの普及が大きい。「流行っている施術だから有名人もカミングアウトするというのもあり、どちらが先かはわかりませんが」と前置きしながら、インフルエンサーの影響もあるのではと磯野医師は推察する。

「2019年に、女優の有村架純さんのお姉さんでタレントの有村藍里さんが骨切りという輪郭矯正を告白して話題になりましたが、昔に比べるとエラや下顎、頬骨を削る輪郭の整形は格段に増えました。骨を削ってまでという人はそんなにいませんでしたが、気軽に相談に来るようになりました」

 骨を削る大掛かりな手術ではダウンタイムも長期間必要になる。

「骨切りは見た目の腫れは2週間くらい続きます。エラ削りの場合は歯医者で麻酔したときのような痺れが続きますが、月単位で徐々に治っていきます」(磯野医師)

 将来的には別のリスクもあると入谷医師。

骨切りをした方の中には、噛み合わせに問題が出てくるケースや、顎を短くすることで皮膚が余って、フェイスラインのたるみが出てくるケースもあります。アフターケアを慎重に行っていくことが必要でしょう

 希望の施術にはどのようなリスクや副作用があるかを知っておくことは、整形をする上で重要だ。

SNSやネットの口コミは鵜呑みにしないで

 最新の美容情報を知りたい場合、SNSで整形系の発信をするアカウントをフォローすれば、人気の施術やビフォーアフター、口コミが洪水のように流れ出てくる。カウンセリング時に、医師にインスタの画像を見せてこういうふうになりたいと相談する女性も多いという。ただ、SNSに出ている整形のビフォーアフター写真は鵜呑みにしないほうがいいと入谷医師は話す。

「何人かインスタグラマーと呼ばれる方の施術に入らせてもらったときに驚いたのですが、撮影中のスマホに写っている顔と実際の顔が全くの別人だったんです。アプリのフィルターでとても可愛く加工されていて……。そういうこともありますので、SNSは信じすぎないことも大切です」

 クリニック側が出すビフォーアフター写真は同じ条件で撮影しなければいけないというルールがあるが、患者側がインスタグラムなどSNSで発信する写真は加工し放題。ネットの口コミに関しても、「いい部分もありますが、書きたい放題がまかり通っているなと感じます。例えば医師側は正当な理由があって“その施術はできない”と断りを入れたのに、そこが抜け落ちてしまって “できると聞いていたのにできない!”と不満を書き込む患者さんも」(入谷医師)とのことなので、あまりあてにしないほうが賢明だ。

 整形した回数と費用を聞くと、最も多かったのは1回(76.0%)で、費用は5万〜50万円(52.7%)という結果だった。これは二重の施術が人気であることと関係があるのではと入谷医師は言う。

「費用は本当に人それぞれ。二重整形は一度やるとメンテナンスもさほど必要なく、やり直すケースはあまりないので、1回と答えた人が多いのかもしれません」

整形した回数、かかった費用を教えてください ※Yahoo!ニュースの協力で、整形したことがある人1183人を対象にアンケートを実施(2021年7月29日〜8月5日)

整形の満足度は医師の第一印象が左右する

 また、「整形してよかったと思いますか?」という問いに「はい」と回答した人は89.2%。「いいえ」と答えた人は10.8%だった。

「はい」と答えた人からは「前向きな気持ちになれた」「自己満足かもしれないがスッキリした」「人目を気にせず毎日生活できるようになった。自信がもてるようになった」「就職も決まり、友達も増えて外出が多くなりました!」など、喜びの声が集まった。

「いいえ」と答えた人は、「お金をかけた割にそんなに変わらなかった」「ヒアルロン酸注射だけではすぐ戻る。定期的にするにはお金がかかる」と効果が持続しなかったことへの不満の声が目立った。

整形してよかったと思いますか? ※Yahoo!ニュースの協力で、整形したことがある人1183人を対象にアンケートを実施(2021年7月29日〜8月5日)

 実に9割の人が満足しているという結果だったが、満足するかどうかは、実は医師やクリニックの第一印象と直結していると、磯野医師は話す。

初めて訪れたときのクリニックや医師の印象が悪いと、たとえ結果がよくても、変なバイアスがかかって不満足な点に目がいってしまう。1軒だけで決めるのではなく、何軒か行くことで見えてくることがあります。強引なマシンガントークで考える隙を与えずに迫ってきたり、妙にギラギラしているなと感じたり、医師にもいろいろいますから。クリニックは1軒だけで決めるのではなく、何軒か回ってカウンセリングを受けてみて、自分の感覚に合うところを選ぶのがいいでしょう

 入谷医師も医師を選ぶ際には、経歴やどれだけ希望する施術の症例をこなしてきたかという実力を見ることに加え、コミュニケーションがきちんと取れるかどうかが大事だと話す。

 また、クリニックを選ぶ際には価格を重視する人も多いが、こんなトラブルも増えているという。

「ネットではさまざまなクリニックを比較して最安値も選べますが、『二重9800円』など、価格が異常に安いところは注意したほうがいいでしょう。あとからどんどんオプションを加えられて、高額ローンを組まされる可能性もあります」

 自分の顔や身体だけでなく、心も良い方向に変えてくれる美容整形。しかし良い面だけでなく、リスクが伴う面を忘れてはならないし、事前の確認は必ずしてほしい。そして失敗しないために大切なのは、溢れかえっている情報を取捨選択し、自分に合う医師やクリニックでしっかり相談すること。患者側にも上手な付き合い方が求められている。

※この記事は週刊女性PRIMEとYahoo!ニュースによる共同企画です