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 何かと敬遠されがちな「PTA」。保護者からはさまざまな不満や意見が聞こえてきますが、では、先生たちの本音はどうなのでしょうか。これまで数多くのPTAを取材し、11月12日に『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)を上梓するノンフィクションライター・大塚玲子さんが、その実態と本音に迫ります。

「会費が給与から天引き」のケースも

 「PTAって保護者の団体でしょ」と思っている人がほとんどでしょう。でも実は、PTAにはP=親・保護者だけでなく、T=教職員も入っています。

 役員になったり、活動をしたりするのは保護者、実質的に母親ばかりが想定されていますが、教職員も有無を言わさず加入させられることが多いのです。つまり、先生たちも意思確認がないまま会費(平均で年額3~4千円)を負担させられているということ。なかには「PTA会費が給与から天引きされる」という学校さえあるようです。

 これは、なかなかひどい話です。本人の意思にかかわらず会員とされ、会費をとられるというのは、保護者においてもひどい話ですが、特に会費の用途を考えたとき、教職員の自動加入はますます異常です。

 というのは、PTA会費は基本、PTA活動のために使われますが、先生が参加することはほぼないからです。PTA活動はしばしば平日日中、つまり先生の勤務時間内に行われるので、そもそも教職員は参加できませんし、また夜や土日に活動するPTAでも、教職員が参加することはまずありません(一部の担当の先生を除く)。

 また、PTA会費はよく学校に備品を「寄付」するのにも使われていますが、これも教職員会員の立場で考えると、非常におかしな話です。言ってみれば、従業員が職場の備品を買うのにお金を払わされるようなもの。

 もし私たちが、勤務先の会社から「来賓用のスリッパ買うからお金払って」と言われたり、そのために給与から勝手にお金を引き落とされたりしたら、どうでしょうか。“ふざけんな案件”でしょう。

「先生たち、それでよく文句言わないね」と思われるかもしれませんが、もちろん教職員の人たちだって、不満がないわけではないのです。ただ、PTAはこれまでずっと「保護者も教職員も必ずやるもの」ということになってきたので、表立って異を唱えられないだけ。つまり、保護者と同様です。

 ただし、クローズドな場で話を聞けば、教職員もいろいろと本音を話してくれます。自分の学校の保護者の前では決して言えませんが、先生たちだって、本当は言いたいことがたくさんあるのです。

先生だって不満はある

 PTAに対する先生たちの本音は、SNSなどネット上でも、しばしば見られるようになってきました。たとえば、最近はこんな声を見かけました(下記、カッコはYahoo!ニュースコメント欄より)。

「先生も強制加入、強制会費徴収(自腹)なことがもっと知られてほしい。先生も保護者も、入退会自由に!」

「教員です。先日の保護者会で役員決めのくじ引きが行われました。立候補者のいない役員なら、やめたらいいのになって思いました」

「教員ですが、我々も問答無用で加入です。そして会費も払わされます。(中略)管理職はPTAがないと学校は成り立たないと言いますが、私にはまだまだその意味がわかりません。PTAは我々の預かり知らぬところで業務を削減してくださっているのでしょうか。一教諭の私からの視点では、余計な仕事増やしやがってとしか今のところ思えません。私は教員の立場からですが、無くなったらいいのにと思っています」

 また、こんな意見も。

「PTAは時代に合わない負の遺産。50年前のシステムを未だに使い続けている意味が分からない。保護者も教師も本音では『今すぐなくなればいいのに』と思っている」(ツイッターより)

 いかがでしょうか。「えっ、先生たち、PTAのことをそんなふうに思ってたの!?」と驚いた人も多いかもしれません。でもそうなのです、先生たちも実は、意外とクールにPTAを見ているのです。

 もちろん、すべての先生ではありません。保護者のなかにも、PTAの問題点など気にせず、ただただ「これまでどおりに継続したがる人」はいるものですが、教職員のなかにもやはり、そういう人は少なからずいます。

『さよなら、理不尽PTA!~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)では、PTAを「やめる」「変える」方法を詳しく解説している

 ですが、やはり今のPTAについて「そのままでいい」と考える先生は、だんだん減っているようです。

 最近は「学校の働き方改革」が進められるようになり、先生たちも「時間外労働を強制されるのはおかしい」と気付くようになりました。

 そういった流れで、「PTAの強制も間違っている」と気付く教職員が増えているのかもしれません。

 「おかしい」ことには「おかしい」と声をあげないと、状況は変わりません。保護者だけでなく、教職員の人たちも、もし「PTA、おかしいぞ」と思ったら、ぜひ声をあげてほしいものです。

「そういった会員の声をきっかけに、見直しが進んだ」というPTAは、少なからずあります。ネット上でもいいですし、可能ならぜひ、学校現場でも! 「PTAを退会しました」という先生だって、ときどきいるのです。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。11月12日には『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)を出版する。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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