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 何かと“理不尽”なことが起こるPTA。そのPTAを変えようと、声を挙げた母親たちがいます。思い切ってPTAを退会した人も。必ずしも、世間が求める“いい母親像”である必要はないのです。これまで数多くのPTAを取材し、『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)を上梓したノンフィクションライター・大塚玲子さんが伝えたいこととはーー。

嫌なのに、なぜ従い続けるのか

 子どもが学校に上がると自動的に会員とされ、会費をとられ、「必ずやってください」と活動まで強要される――。すべてではありませんが、多くのPTAで続けられてきた、そんな理不尽な慣習に、保護者、実質母親たちは、長い間苦しんできました。

 でも本当は、自分たちでやり方を変えたっていいし、「やめます」と言って退会してもいい。「入った覚えがありません」と、拒否したっていいのです。もし保護者、母親たちがみんな、そんなふうに行動するなら、PTAの問題はたちまち解消するでしょう。

 なのになぜ、現実にはそうならないのか? 母親たちは「おかしい」「嫌だ」と文句を言いながら、どうしてPTAのやり方に従い続け、それを守り続けているのでしょうか。改めて考えてみると、不思議な気もします。

 理由のひとつは、「子どもに不利益があるかもしれない」という不安でしょう。

 PTAは本来、学校に通うすべての子どものために活動する団体ですが、ときどき、「退会するならお子さんに記念品をあげません」などと言って、非会員の子どもを排除しようとする役員が現れます(これは、黙認する校長が一番悪いのですが)。

 でも恐らく、それだけではありません。子どもへの不利益を考えるより前に、ただ漠然と「変えられない」「拒否はできない」と思い込んで、「なんとなく従っているだけ」の母親たちが多いように思います。

 人と違うことをしてはいけない。「おかしい」と思っても、指摘すれば「和を乱す」から、異を唱えてはいけない。もしその掟を破れば、ほかの母親たちから陰口を言われるかもしれない。

 小さいころから刷り込まれてきたこんな価値観、恐怖心が、母親たちの行動を縛り、PTAの理不尽さを保ち、ときに強化してきた、大きな要因ではないかと思うのです。

実際に「変えた」「辞めた」母親たち

 でももちろん、こういった掟に法的な根拠はありません。実際は、従わなくてもなんら問題はないのです。

11月12日の『さよなら、理不尽PTA!~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)※記事内の画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします

 筆者の新刊『さよなら、理不尽PTA!』には、そんな不確かな掟や恐怖心に負けず、PTAを変えた人や、PTAを去った人が、たくさん登場します。

 たとえば、PTA会長になって、「ポイント制」をはじめ、PTAのあらゆる強制の仕組みをなくし、新聞などにも紹介された竹内幸枝さん。

 異なる意見にも正面から向き合って話し合い、改革を進めてきた結果、PTAは以前とすっかり変わり、あたたかい雰囲気が生まれたといいます。

 竹内さんは「空気を読めないわけじゃないけど、敢えて読まない」ことを「KYY」と名付け、「世に広げよう、KYY」と話していました。

 もうひとり、優しさのかけらもないPTAのやり方に失望し、「退会」を選択したDさん。はじめは子どもへの不利益を心配しましたが、実際は何ら影響はなかったそう。「退会するのであれば、子どもに記念品を渡さない(実費を払えば渡す)」とする、残念な対応も一部にありましたが、何年もかけて問題を指摘し続けたところ、最近はそれも改められたようです。

 なぜ、Dさんはうまく話をできたのか。

 考えられる理由はいくつもありますが、文書やメールなど記録に残る形でのやりとりを優先したこと、期限を添えて回答を求めたこと、保護者であるPTA会長ではなく、校長・教頭先生に話をしたこと、誰も責めなかったことなどが、大きかったかもしれません。

 Dさんは、SNSのプロフィールにこう掲げます。「言いたいことは言おう。空気読めてても、腹に力を込め、敢えて読まない空気は大事。沈黙は追認と同じだから」と。

 母親だって、本当はできるのです。人と違うことをしてもいい。おかしいことは我慢しなくていい。陰口を言う人もいるかもしれないけれど、そんな人のことを、気にしなくてもいい。

 PTAだけではありません。世間から期待される「いい母親像」なんて、大概は根拠のないもの。本当は、わが子が求めるそれにこたえていれば十分なのです。

 だいじょうぶ。掟を破っても、本当に恐れなければいけないようなことは、実は起きないのです。母親たちがそのことに気付いたとき、PTAは大きく変わるのかもしれません。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。11月12日には『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)を出版。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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