事件のあった和歌山県子ども・女性・障害者相談センター

「やさしい性格で子どもたちから好かれていた。危険な香りを漂わせるようなことはなく、むしろ穏やかな男性だった」

 児童相談所機能を持つ『和歌山県子ども・女性・障害者相談センター』の職員はそう言って、同僚の犯行にショックを受けているという。

 勤務先の同センターで一時保護中の10代少女にわいせつな行為を複数回させたとして和歌山県警は11月16日、児童福祉法違反(淫行させる行為)の疑いで県職員の福祉主事・浅野紘平容疑者(29)を逮捕した。

 5〜8月にかけて当直勤務の際、一時保護され入所生活をおくっていた10代少女が18歳未満と知りながら、周囲が寝静まるのを待って施設内の別室に呼び出すなどしてわいせつな行為をさせた疑いが持たれている。

 わいせつ行為じたいは認めながら、

そんなに多くの回数はさせていない

 と犯行回数をめぐって一部否認しているという。

容疑者の勤務態度はマジメで

 回数が少なければ許されるものでもないが、どうしてこんな男が少年少女を救う立場に就くことができたのか。

「地方公務員試験に合格した直後の昨年4月に県職員として採用し、同センターに配属しました。社会福祉士の国家資格を持っており、募集条件を満たしていたからです。最初の約7か月間は児童相談所の担当者として、子どもの保護者や取り巻く地域の方々らの相談を受けていました。いきなりフルパワーを求められる職務はたいへんだろうと考えたからです」(県福祉保健部の担当者)

 フルパワーを発揮する現在の職務についたのは昨年11月。さまざまな事情を抱えた原則18歳未満の子どもと入所生活をおくる一時保護課に異動し、児童指導員を任された。親の死亡、家出、離婚などで行き場を失った子どもや、虐待を受けていたり、あるいは本人に家出癖や不登校、家庭内暴力がある場合など取り巻く環境は多岐にわたる。

事件のあった和歌山県子ども・女性・障害者相談センター

だれでも指導員になれるわけではなく、社会福祉士資格か教員免許を持っている人が務めます。学校レベルの教育体制はとれませんが、日中は子どもたちにプリントを配って勉強時間にあて、わからないところを教えて採点もします。バドミントンやサッカー、遊びの延長のようなゲームを一緒にすることもあり、生活指導の一環として食事も一緒にとります。寝るときも同性の職員が同じ部屋で見守ります。容疑者の勤務態度はまじめで問題はありませんでした」(前出の県担当者)

 しかし約半年後、少女に手を出した。周囲にバレないよう、深夜巡回中を狙って犯行を繰り返したというから悪質だ。

 同センターの関係者などによると、入所児童はおおむね3、4人にひと部屋があてがわれ、男子棟と女子棟は行き来できないようにカギのかかるドアで遮断されている。消灯の午後9時以降、突破できる異性はカギを持っている職員だけだった。

職員の当直はだいたい3人体制でした。交代で1人ずつ男子棟も女子棟も巡回しており、ほかの当直職員は子どもと寝ているため部屋の外の様子に気付きにくかった。事件を受け、同性の職員による巡回や複数職員による見回りに変えました」(前出の県担当者)

深夜になるとオオカミに豹変し

 犯行が発覚したのは今年9月、被害少女の話が人づてに別の職員の耳に入ったからだ。同センターの関係者によると、すぐに被害少女と浅野容疑者の双方に事実確認をしたところ、いずれもこれを否定したという。

特に浅野容疑者はきっぱりと否定していました。情報の真偽がわからない中、10月1日に突如として“じつは疑われた内容は事実でした”と自ら話してきたんです。なぜ打ち明けたのかはわかりません。その日のうちに警察に通報しました

 と同センターの関係者。

 県は、犯行を始めたとされる今年5月以降に容疑者とかかわったとみられる子ども約80人に被害がないか調査したところ、ほかに被害の申し出はなかったという。

和歌山県警少年課と海南警察署が捜査にあたる

 ところが、読売テレビの報道によると、別の入所少女が容疑者に押し倒される被害に遭ったと証言。わいせつ行為を受けそうになったとする新情報が出てきた。

《急に上に乗っかってきて、それで『こんなことが好きなんやろ』と問いかけてきたこともあって、ちょっとこういう人はおかしいんかな》(読売テレビの取材に応じた入所少女の話)

 県は警察と情報を共有するとともに、容疑者が指導員を始めた昨年11月までさかのぼって追加調査を検討している。

 県政関係者はこう明かす。

容疑者は6年前の7月、隣接する奈良県生駒市の路上で帰宅途中の当時22歳のアルバイト女性に背後からわいせつ目的で近づき、頭を両手でつかんで押し倒すなどした暴行容疑で逮捕されている。逮捕後に余罪も発覚。やはり路上で当時47歳の会社員女性の背後から手で口をふさぎ“騒ぐな。殺すぞ”と脅迫したわいせつ未遂で再逮捕された。容疑者は当時会社員で、いずれも深夜0時前後の犯行だった。女性に抱きつきたかったようだ

 羊のように穏やかに見えて、深夜になるとオオカミに豹変する本性をなぜ見抜けなかったのか。

「採用時に逮捕歴はわかりません。本人からの申告もない。欠格事由になるのは、禁錮以上の刑を受けてその執行を終えていない場合などに限られますから」(前出のセンター関係者)

 入所中の子どもにとって、容疑者は“先生”の立場にあったといえる。

 学校の教職員については、児童・生徒にわいせつな行為をして懲戒免職になった教員の免許再取得を防ぐ「わいせつ教員防止法案」が今年5月に成立。1年以内にこうした教員の前歴がわかるデータベースが整備され、教員採用時に活用して拒めるようになる。

 力関係で子どもたちの上位に立つのは、児童相談所職員も同じだろう。

 同法の付帯決議は、教職員と同様に児童・生徒と日常的に接する職種や役割に就く場合、採用する側が公的機関に照会して性犯罪の前科などがないことの証明を求める仕組みの検討を求めている。

 保育士のほか、部活動の外部コーチやベビーシッター、塾講師など免許の必要ない職種も同じ。子どもを助ける立場の人間が、力関係を利用して子どもを傷付けることなどあってはならない。