久本雅美 高橋ひとみ

 独身でも、結婚していても、子どもがいても、それぞれの自分らしい人生を歩んでほしい──。そんな思いを込めて、芸能界の“おひとりさま”久本雅美が本を書いた。一方で、50代に“オトナ婚”した高橋ひとみは、夫婦生活9年目を迎える。独身を謳歌し続ける久本と、熟年婚を満喫する高橋。そんな2人に、それぞれがエンジョイする人生を語り合ってもらった。

久本雅美の「ひとりの楽しみ」は?

久本 本のテーマは“おひとりさま”なんですが、私が“ひとり”の代表という感じで、日常で思っていることや面白かったことを「わかる、わかる!」って、みなさんに共感して笑ってもらえたらと思って書いてみました。

高橋 私も以前は、どうしても結婚したいと思っていたわけでは全然なくって。今は結婚しない男性も多いじゃないですか。夫もそうだったんですけど、50代の独身男性も多いですよね。だから結婚って、してもしなくてもどっちでもいいかなって。

久本 結婚をしないと決めるのも、すると決めるのも、その人の生き方ですよね。

高橋 ひとりだと自分だけのためにお金も時間も使えますし、私は52歳までひとりだったから、どっちも味わってきました。なので結婚するなら50過ぎでも全然いいんじゃないかなって。

久本 ホントそう思う! ひとりの楽しみも十分に味わったうえでの結婚って、理想的ですよね。

─久本さんが実感する“ひとりの楽しみ”は?

久本 やっぱり、自由に自分の時間が使えることですね。この時間にごはん食べようとか、ビデオ見ようとか、友達に会いに行こうとか、寝ようとか、お風呂入ろうとか、誰にも文句を言われないので……。自分の好きなドラマを見ながらシャンパン飲んで、「コレはやっぱりやめられまへんなぁ~! 」みたいな(笑)

─高橋さんは、結婚してよかったことは?

高橋 自分以外の意見や考え方を身近で感じられたことですね。一緒に暮らす相手の意見を聞いたときに、私が思っていたことと違う意見をもらえることで、日常をプラスに捉えることができますね。

久本 男性の考え方は自分にとって刺激になったり、人生が豊かになったりもするよね。ひとみさんのお話を聞いていると、“オトナ婚”っていいなぁ~って思う。

高橋 若いときと違って、おだやかですよ~

久本 若いときは「なんでわかってくれないの?」「どうしてこっち向いてくれないの?」って、お互いに対して向かい合うエネルギーじゃない。でも、ある程度の大人になったら、「一緒に前を向いて歩いていこう」と、エネルギーが進む矢印の向きがそろうよね。

高橋 言わなくてもわかる、みたいなところがありますね。

久本 人生経験を積んできたことが、お互いを認め合える、尊重し合えるという部分につながっていくから……って、私は結婚してないんだけど! (笑)。

ふたりの結婚観

高橋 久本さんは、周りにご友人や仲間がたくさんいて寂しくないから、結婚したいとも思わないんじゃないですか?

久本 ギクッ! それがいちばんの難点だって言われます(笑)。

高橋 結婚したいと思う人に出会えたら“そのときに結婚”って感じなんですよね。

久本 たしかに! そうだね〜。

高橋 私が若いころは、世の中としては「女性は23歳で結婚するもの」なんて思ってもいましたけど、私が実際その年齢になったら「こんなに仕事が楽しいのに結婚なんか」って、全然そんな気になりませんでした。周りには「まだ出会ってないのよ」と、ずーっと言われ続けて(笑)。

─ご家族から結婚してと言われなかった?

高橋 姉が結婚して子どもがいたので、家族からは、私は結婚しなくていいと言われていました。

久本 私はね、芸能界に入って家族から「この子、本気だな」と思ってもらえたときから、結婚の話題は減りましたね。22歳で東京に出てきて、26歳で劇団を立ち上げたあたり。まぁ、でも中には結婚しろって言い続ける人もいますよ。

 40代後半で実家に帰ったとき、テレビを見ている私の横に父がそーっと座って、耳元で「子持ちのバツイチでもええで」と言って部屋を出ていったんです。そのとき「結婚相手の条件を変えてきた……!」って(笑)。

─高橋さんが、夫と一緒に暮らすうえで気をつけていることは?

高橋 束縛はしないようにしています。疲れちゃうし、いつでもどこでも合わせようとしない。結婚当初は、合わせようとしていましたけど。

久本 とはいっても、気は使うでしょ?

高橋 慣れますよ(笑)。

久本 へぇ〜! 慣れてみたーい(笑)。

高橋 結婚当初は、夫がどこでも一緒についてこようとしたり、1日に何十回も電話をかけてきたりしましたね。でも、だんだんそれもなくなりましたから、夫も慣れたんだと思います。

久本 誰かと一緒に暮らすうえで、束縛しないって大事なことだよね。私が妹と暮らしていたころは、お互い劇団員だったので忙しくて、衣装や小道具を作ったり、稽古以外にもやることが多くて……。

 家は寝に帰るだけだったから、お互いに干渉しないで過ごしていました。大阪から出てきたばっかりで貧乏だったから、妄想だけで生きていました。“100万円あったらどうする? ”とか眠る前に聞いたりね(笑)。

高橋 わかる~!! 夢見てた!

久本 そういう青春時代って面白いんですよね。

私はSNSやっていません

─青春時代にマッチングアプリやSNSなどの出会いのツールがあったら使ってた?

久本の話を微笑みながら聞く高橋。終始笑いの絶えない対談となった。現場は高橋の愛犬・モモエちゃんも見学

高橋 コロナ禍のような、誰かと会えない状況だったら、必要なんだろうと思います。だって、それってお見合いみたいなものですよね?

 コロナよりも前に、アメリカに住んでいる友人が、会費の高い出会いサイトを使って結婚したんです。そのときは「すごいなあ」って思って。

久本 心配になったでしょ?

高橋 「そういうので結婚するんだ」と驚いたんですけど、年収とかがプロフィールに書いてあれば調べなくてすむし逆に安心なんでしょうね。それでも私は、もし若かったとしても……、使ってないかな~。

久本 性格の違いかな? 世の中それが当たり前なら、私は若ければやっていたと思います。今は、この年齢でマッチングアプリをやる勇気もなければ、SNSをやって何か言われるのも嫌だし。

 実際、私はSNSをやっていません。でも若かったら面白がってやるだろうし、周りもやっているのであれば、それが普通だと思っているかも。マッチングアプリで結婚する人もたくさんいますからね。

高橋 そもそもマッチングアプリってどう使うんですか?

─気になった人がいたら“いいね”を送って、お互いに“いいね”を送り合えばマッチングが成立して、実際に会ってみて……。

高橋 実際会ってみたら「なんか違う」ということもありえるんですよね?

─ありますね。

久本 まあでも、昔は下を向いたままお見合いして、そのまま結婚する人もたくさんいたもんね。それのほうが怖くない? 親が決めた人がいて、お見合いして、恥ずかしくてずっと下を向いたまま「よろしくお願いします」って。

 お見合い用の写真を渡して、仕事は○○で……、それを親が、「いいんじゃない、この人なら安心だよ」って言って結婚しちゃうんだもん。それだったらマッチングアプリのほうが、当人同士にとって明確だよね。ちなみに年齢制限はないの?

─上限はないはずです。

久本 出た、出た(笑)。ひとみさんの旦那さんのような素敵な人はまれで、私と同じくらいの年代でマッチするのは、きっとおじいちゃんだもん! (笑)。それが怖い。

高橋 だったら50代を狙えばいいんですよ(笑)。

久本 そうだね、50代だな。

上の年代の芸能人といえば

久本雅美

─でも、上の年代でも素敵な芸能人って……。

高橋 いっぱいいますよ~!

久本 大杉れん(漣)さんとか、奥田瑛二さんとか……。

高橋 色っぽいですよね~!

久本 年上で、あんなきれいな人いますか? 素敵だな~、頼りがいあるな~、カッコいいな~、おしゃれだな~、セクシーだな~って思う。

高橋 あと、なんだかすごく遊びを知っていたりね。堺正章さんとか、井上順さんとか。

久本 見た目がきれいっていうのは大事だよね。シュッとしてておしゃれで。

高橋 私、30代のころに古谷一行さんと共演したときにキスシーンがあったんです。「こんなにキスがうまい人がいるんだ!」って思っちゃった。それで、のどが鳴っちゃって(笑)。車の中でのキスシーンだったんですけど「ずっとしてたい!」って。

久本 それ旦那は知ってるの?

高橋 前に話したことあるから大丈夫(笑)。その後に舞台を見に行かせていただいたとき、楽屋に古谷さんの奥様がいらっしゃって。すごいおきれいな方だったので諦めました(笑)。

久本 私は、大杉れんさんが本当にタイプ。おちゃめでちょっとエッチで(笑)。めちゃくちゃカッコよかったですね。本当に大好きだったから「れんさん、1回でいいから抱いてください! 」ってみんながいる前で言ったこともあります。そしたらめちゃくちゃ笑ってましたけど、「抱いたら、みんなにバレちゃうよ」って(笑)。

高橋 受け答えも、やっぱり色っぽいですね。

久本雅美の新著『みんな、本当はおひとりさま』。幻冬舎より11月25日に発売 ※画像をクリックするとアマゾンの詳細ページにジャンプします

久本 そうそう。年齢を経ても、枯れてないっていうか。女性もそう。年齢を経ても色気がある人って素敵だなぁ~。

高橋 久本さんは寂しい雰囲気って1ミリもないですよね。

久本 ときどき、秋の風に吹かれたら「誰かいないかな~」とか、楽しいことがあったときに「家に帰ったら誰かにしゃべりたいな」なんて思うこともありますけど、たしかに寂しさはないですね。

高橋 今田耕司さんたちの“アローン会”も全然寂しそうに見えないですよね。

久本 たしかに! でも、女子でアローン会をつくるのはムリだな。誰かが結婚したら、「ははぁ~ん」みたいな、羨望と裏切り者を見るような目になっちゃうから(笑)。私が人の結婚を素直にお祝いできるのは、本気で結婚したいと思ってないからなんでしょうね。

高橋 久本さんは、結婚しようと思ったら、いつでもできる感じがします。だから久本さんを見ていると、楽しそうだなぁって思うんです。

久本 ありがたいですね。悲愴感がないっていうのがいちばんうれしい。

 結婚されている先輩から夢と希望をいただいたので、私はいつでも結婚はできるもんだと思って、突っ走っていきたいと思います!


久本雅美……'58年7月9日生まれ。大阪府出身。'84年に柴田理恵らと『WAHAHA本舗』を設立後、舞台だけでなくバラエティー番組やCM、ドラマなどでも活躍。『みんな、本当はおひとりさま』は6冊目の著書となる

高橋ひとみ……'61年8月23日生まれ。東京都出身。'79年に舞台『バルトークの青ひげ公の城』でデビュー後、『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)など多くの人気作品に出演している。'13年9月に出会った一般男性と2か月でスピード婚