加藤綾菜さん

 御年78歳、精力的に活躍している加トちゃんを支えている秘訣は塩分量1日6g以下の「減塩食」。血圧が正常値に戻っただけでなく、むくみや肌ツヤがよくなり、身体の内側から健康を実感できるようになったとか。味気なくなりがちな減塩食をおいしくする調理のコツとレシピを奥さんの綾菜さんに教わります。

「減塩を始めてからふたりとも、すごく身体の調子がいいんです」と話してくれたのは加トちゃんこと加藤茶さんの妻・綾菜さん。

 45歳もの年の差婚で話題となったおふたりだが、今年で結婚10年目。今も変わらずラブラブで「ずっと元気でいてほしい」と、日々加トちゃんの健康管理に気をつけているとのこと。

「特に私が気をつけているのは食事です。過去に大病したこともあるので、医師からアドバイスを受けて減塩を徹底するようにしました」(綾菜さん、以下同)

 14年前、加トちゃんが大動脈解離を患ったこともあり、減塩調理は数年前から実践していた。けれども当初は、塩の代わりにみそやしょうゆを使う程度でアバウトなものだったという。ところが昨年受けた人間ドックで「内臓が弱ってきているので、塩分量を1日6g以下にするといいですよ」とアドバイスを受け、綾菜さんは本気モードに。すぐに塩分計を買い、病院が開催していた減塩セミナーにも参加。徹底的に減塩をスタートさせた。

家中の調味料の塩分量をチェック

「勉強してみて、控えめにしているつもりでも、いかに塩分を多く使っていたかに気づきました。セミナーの先生や出会った方から、おすすめの調味料や、レシピのほかみそ汁の味が薄すぎるときは山椒をふるとおいしくなるなどのヒントをもらいました」

 調味料が少なくてもしょうがや、にんにくを利かせれば満足感があることや、すだちやレモンがいいアクセントになること、味に深みを出すには「減塩御三家」といわれる麺つゆ、ポン酢、マヨネーズを上手に取り入れること……綾菜さんのメモは、細かい手書き文字でびっしりになった。

以前は濃い味が大好きだったという加トちゃんも今ではすっかり「減塩舌」に!

「そして家中の調味料の裏面を見て、塩分量のチェックをしました。みそ、ドレッシング、たれ類など、大さじ1の塩分量を計算していったんです。最初は面倒でしたが、今はすっかり慣れて、パッとわかるようになりました

 減塩の料理は、最初は物足りなく、みそ汁は味が薄すぎて「白湯?」と思ったほどだったという。

「でも3日目には慣れてきて、1週間でだいぶ舌が変わりました。『味が濃くないと食べた気がしない』なんて言っていた加トちゃんも、今では外食をすると『すごくしょっぱく感じる』と言うほど。すっかり健康舌に変身しました」

 毎日の献立に加えて減塩管理も……なかなかまねできないと思ってしまうが、綾菜さんは市販品も上手に取り入れて乗り切っているそう。

「仕事があったり、疲れているときは、減塩料理を宅配してくれるサービスを利用しています。成分表を見て、塩分の少ないお惣菜を買ってすませることもあります。お漬物も減塩のものが売っていて、とても便利ですよ」

 成分表を見て食材を買う習慣のついた綾菜さんだが、『食塩相当量』と、成分表示がしっかりしているのがコンビニ。パンなどはコンビニで買うようになったのだとか。

「カロリー以外も、塩分量や糖質、脂質などしっかり表記されていて、とても助かります。買い物すら疲れる日は、市販の『減塩カップラーメン』で乗り切ります。手作りで頑張りすぎるより、時々は楽をする!これが挫折しないポイントだと思うんです

血圧だけでなく若返りを実感

「わが家は1日の塩分量を3~6gに抑えるようにしています!」と加藤綾菜さん

 以前は食後に、「眠い、疲れた」と訴えることもあった加トちゃん。胃のもたれやむかつきも感じることが多かったそうだが、減塩料理にしてからは以前のような症状は一切なくなった。むくみもとれ、目元がスッキリとして「すごく調子がいい」と言うように。

気になっていた血圧は、最高で上が196もあったんですが132と正常値になりました。また血液検査をしたときに、腎臓などの数値がよくなっていて、医師からとても褒められたんです」

 内臓の負担が減ったためか、加トちゃんの顔色は一段明るくなり、お肌はツルッと若返ったよう。身体も軽くなり、活力が出てきたという。

 
33歳と若い綾菜さんも、むくみがとれて体重が減り、すっきりとした身体に。

「減塩の効果をすごく感じられるので、今は私よりも、加トちゃんのほうが意識が高まっているくらい。仕事の途中で小腹がすいたとコンビニに行っても、裏の成分表をチェックしてから、買っているんですって(笑)」

 テレビ出演に加えて11月には武道館ライブをこなし、来年には舞台も控えているという。ますます精力的に活動する加トちゃんを支えているのは、妻の手料理とあふれるほどの愛情だといえそうだ。

【Column】
 成人男性の平均塩分摂取量11.1g。「しょうゆやみそ、ポン酢は減塩を使っています。マヨネーズやケチャップは塩分量が少ないので重宝しています。注意したいのが、カロリーオフのタイプ。普通のタイプに比べて塩分量が高いものが多いのでチェックしてみてください」

献立1 トータル塩分量1.4g(1人分)

から揚げは加トちゃんの大好物!添え野菜にはカレー粉も使って満足感アップ

献立1

とりのから揚げ(食塩相当量1人分0.6g)

 ・材料(2人分)
  鶏もも肉 180g
  かぼちゃ(1cm幅のくし形切り)  4切れ
  ししとうがらし 6本

A    しょうがのすりおろし 1/2かけ分
  にんにくのすりおろし 少々
  しょうゆ 大さじ1/2
  酒 大さじ1/2


  片栗粉 適量
  カレー粉 少々
  揚げ油 適量
  レモン(くし形切り) 2切れ

 ・作り方
(1)鶏肉はひと口大に切る。ボウルにAを入れて混ぜ合わせ、鶏肉を入れてもみ込む。
(2)1に片栗粉をまぶし、170度に熱した油できつね色になるまで揚げる。
(3)かぼちゃとししとうも、素揚げにし、カレー粉をふりかける。
(4)鶏肉と野菜を器に盛り、レモンを添える。

●トマトの青じそあえ(食塩相当量1人分 0.2g)

 ・材料(2人分)
  トマト 1個
  青じそ 2枚
  塩 0.3g
  オリーブ油 小さじ1/2

 ・作り方
(1)トマトはくし形切りにし、青じそはみじん切りにする。
(2)ボウルに1を入れ、オリーブ油と塩であえる。

●大根と葉とワカメのみそ汁(食塩相当量1人分0.6g)

 ・材料(2人分)
  大根 1/8本
  大根の葉 適量
  ワカメ 適量
  だし汁 1.5カップ
  みそ 小さじ2

 ・作り方
(1)大根はいちょう切りに、大根の葉は粗みじんに、ワカメは食べやすく切る。
(2)鍋にだし汁と1を入れて強火にかけ、煮立ってきたら弱火にし、やわらかくなるまで煮る。ワカメを加える。
(3)みそをとき入れ、椀に盛る。

減塩ポイント
「から揚げはにんにくやしょうがをしっかり利かせることで、減塩でも十分パンチのある味になります。スパイスを使うのも味に変化がついておすすめです」

献立2 トータル塩分量1.2g(1人分)

 魚は昆布の味をしっかりとつけてピリ辛の大根おろしでさっぱりいただく

献立2

●白身魚の昆布蒸し(食塩相当量1人分0.6g)

 ・材料(2人分)
  白身魚(タイ、メダイ) 2切れ
  まいたけ 1/2パック
  長ネギ 1/2本
  酒 大さじ2
  昆布(6cm角) 2枚

A  水 1/2カップ
  酒 1/4カップ


     大根おろし 大さじ2
  一味とうがらし 少々
  ポン酢しょうゆ 大さじ1

 ・作り方
(1)まいたけは小房に分け、長ネギは2cm幅の斜め切りにする。大根おろしは水けをきる。
(2)フライパンにAを入れ、昆布を敷く。その上に白身魚、まいたけ、ネギを重ねてふたをし、中火で8分蒸し煮にする。
(3)大根おろしに一味をふりかけ混ぜ合わせ、2とともに器に盛る。大根おろしにポン酢しょうゆをかけていただく。

●卵焼き(食塩相当量1人分0g)

 ・材料(2人分)
  卵 2個
  砂糖 少々
  サラダ油 適量

 ・作り方
(1)器に卵を割りほぐし、砂糖を加えて混ぜる。
(2)卵焼き器を中火で熱し、サラダ油を薄くひき、卵液1/3量を流し入れ、表面がかわいたら手前に巻き、奥にずらして再び1/3量を入れて同様の順で焼き、卵焼きを作る。

●ピーマン麺つゆ煮 (食塩相当量1人分0.6g)

 ・材料(2人分)
  ピーマン 5〜6個
  めんつゆ(3倍濃縮) 小さじ2
  酒 小さじ2
  オリーブ油 小さじ1

 ・作り方
(1)ピーマンは縦2つに切ってへたと種を取り、斜めに4等分に切る。
(2)鍋にオリーブ油を入れ中火で熱し、ピーマンをサッと炒める。めんつゆと酒を加えて、弱火にし、2~3分煮る。

減塩ポイント
「大根おろしには一味を入れてパンチを利かせると、少ないポン酢でも物足りなさはなし。すだちを搾ってもおいしいです」

献立3 トータル塩分量1.5g(1人分)

しょうがや味つきザーサイもお助け食材、しょうゆを少量加えて味に奥行きを

献立3

●しょうが焼き (食塩相当量1人分0.9g)

 ・材料(2人分)
  豚ロース薄切り 8枚
  キャベツ(せん切り) 2枚
  ミニトマト(半分に切る) 1個

A  しょうがのすりおろし 1かけ分
  しょうゆ 小さじ2
  酒 小さじ2
  片栗粉 小さじ1/4


  サラダ油 小さじ2

 ・作り方
(1)ボウルにAを入れて混ぜ合わせ、豚肉を漬け込み10分ほどおく。
(2)フライパンにサラダ油を中火で熱し、豚肉を並べ入れ、両面を焼く。皿に盛り、キャベツとミニトマトを添える。

●ワカメのごま油炒め(食塩相当量1人分0.3g)

 ・材料(2人分)
  生ワカメ 60g   
  白いりごま 少々
  かつお節 適量
  しょうゆ 小さじ1/2
  こしょう 少々
  ごま油 小さじ2

 ・作り方
(1)フライパンにごま油を中火で熱し、ワカメをサッと炒め、しょうゆとこしょうで調味する。
(2)器に盛って、いりごまとかつお節をかける。

●ミニトマトのザーサイあえやっこ(食塩相当量1人分0.3g)

 ・材料(2人分)
  絹ごし豆腐 1/2丁   
  ミニトマト(みんじ切り) 5個
  味つきザーサイ(みじん切り) 8g
  ごま油 小さじ1/2
  粗びきこしょう 少々

 ・作り方
(1)ボウルにミニトマト、ザーサイ、ごま油を入れざっくりと混ぜる。
(2)豆腐に1をのせ、こしょうをふる。

減塩ポイント
「ザーサイの塩分は、しょうゆに比べれば控えめ。食感も風味もよいので、少量でも満足感があってお気に入り。お肉はしっかり漬け込んで調味料の味をしみ込ませて」

献立4 トータル塩分量4g(1人分)

 減塩でも満足感を出したい!わが家の大ヒットリピート料理

献立4

●チャーシュー(食塩相当量1人分2.6g)

 ・材料(4人分)
  豚肩ロース(かたまり) 500g

 A しょうがのすりおろし 1かけ分
  にんにくのすりおろし 1かけ分
  しょうゆ 大さじ2
  オイスターソース 大さじ1
  みそ 大さじ1
  砂糖 大さじ4
  はちみつ 大さじ3
  酒 大さじ2


  こしょう 小さじ1
  白髪ネギ 適量

 ・作り方
(1)豚肉はまんべんなくフォークを刺して、味をしみ込みやすくし、全体にこしょうをすり込む。
(2)食品保存袋にAと豚肉を入れ、味がなじむよう1時間以上おく。
(3)オーブンを200度に温める。オーブン用シートを敷いた天板に汁けをきった2を入れ15分ほど焼いて取り出し、裏返して保存袋に残っているたれをかける。オーブンに戻し入れさらに15分ほど焼く。1cm幅に切って器に盛り白髪ネギを添える。

●レタスハムとミニトマトのサラダ(食塩相当量1人分0.6g)

 ・材料(4人分)
  レタス 3枚
  ロースハム 1枚
  ミニトマト 2個

 A にんじん(すりおろす) 大さじ1
  ポン酢しょうゆ 小さじ1
  酢 小さじ1
  粒マスタード 小さじ1
  こしょう 少々
  オリーブ油 小さじ2


 ・作り方
(1)レタスは食べやすい大きさに手でちぎり、ハムは1cm幅に、トマトは半分に切る。
(2)器にAをすべて入れて混ぜ合わせる。
(3)器に1を盛り、2をかけていただく。

●ほうれん草としめじのポン酢あえ(食塩相当量1人分0.8g)

 ・材料(2人分)
  ほうれん草 1/2束
  しめじ 1/3袋
  ポン酢しょうゆ 大さじ1
  塩 小さじ1

 ・作り方
(1)鍋で湯を沸かし、ほうれん草、しめじをさっとゆでる。それぞれ水けをきり、ほうれん草は5cm長さに切る。
(2)ボウルに1とポン酢しょうゆ、塩を入れてあえる。

減塩ポイント
「減塩料理を意識して初めて作ったのがこのチャーシュー。塩分量はあまり低くないけど、とにかくおいしくって加トちゃんも大好き!3日は冷蔵保存できるので、作り置きおかずにも」

※献立内は、減塩ではないしょうゆ、みそで塩分量を計算しています

【Column】
朝食には玄米パンや野菜スティックが重宝

「トーストも実は塩分が多いものが多い。しっかり成分表示をチェックして。わが家は主に「玄米パン」。少しのケチャップとチーズをのせて焼けば、満足度もアップ。野菜スティックのディップにこだわって味変で飽きない工夫をしています」

朝食には玄米パンや野菜スティックが重宝

 教えてくれたのは...加藤綾菜さん ●タレント、夫はザ・ドリフターズの加藤茶。現在78歳となる夫の将来にそなえて、介護の資格を取得。自身のYouTube『加藤家の日常』では、「命のレシピ」と題して減塩料理を披露している。

〈レシピ・調理/加藤綾菜 取材・文/樫野早苗〉