水原希子

 女優・モデル・タレントとして、唯一無二の存在感を放つ水原希子。インスタのフォロワー数は、日本のインスタグラマーでは渡辺直美、ローラに続く第3位。その影響力は国内にとどまらない。そんな彼女は今年10月で31歳。守りに入るどころか、攻めの姿勢をますます崩していない。数々の“炎上”をくぐり抜けてきた彼女へのロングインタビュー。

──今年4月にスタートした水原さん企画・出演・監修による番組『キコキカク』(Amazon Prime Video配信)。亀甲縛りの実践あり、ゴスロリ風のコスプレありで、かなりインパクトが……女優やモデルの枠におさまらない活動をしようと思った理由は? 

 20代の自分を振り返ると、モデルの仕事だったり、俳優の仕事だったり、テレビだったり、映画だったり、いろいろな体験をさせていただいて、自分の知らなかった世界をたくさん見せていただいたと思っています。学ぶことも多かったですし、自分の意外な一面を発見して、「あ! 私、こんなこともできるんだ!」と自信もついたかな。

一方で、「私、本当にやりたいことができてる?」と思うこともないわけじゃなかった。そんな思いもあって、以前の所属事務所から独立したのは、28歳のとき。

好きなものを発信する楽しさ

 “守ってくれる人がいる”という意味では、以前のほうが楽という部分はありますけど、30代となった今は、「私って、本当は何をしたいの?」を自分自身の中でつきつめて、そして選ぶことができているかなと。

『キコキカク』は、もともとインスタで私があげていたプライベートな趣味や関心から発展した番組。だから、キコキカクで取り上げたテーマは、私が以前から興味があったことばかり。ファッション、アート、音楽、カルチャー、エコ……。それ以外の、一見、突拍子もないことも、全部(笑)。

 最初はインスタグラムに好きなこと、面白いと思っていることをアップして、それを一緒に面白がってくれる人がいるっていうことが、楽しくていいなって。そしたら、それを「企画としてやってみない?」と声をかけてもらって。

 そんな仕事の広がり方があるんだ、と目からウロコだったんですけど、せっかくなので「私がやってみたいことを全部やる!」というコンセプトで、すべて私自身のアイデアで、やりたい放題やらせていただきました。いつかシーズン2もできたらいいな(笑)。

──どんな「30代」にしていきたい?

 30代だからどうというより、20代の経験を経てのネクスト・ステージ。そして30代をしっかりと大切に過ごした先に、また40代、50代という新しいステージがあるという感じ。

 だから、この新しいステージに立ったタイミングで、これまでとは違う新しい活動ができたことは喜びでした。もちろん難しさもありましたけど「自分の好きなものを発信する」ことの楽しさや大切さを、改めて実感できたという気がしていて。

 自分の好きなことをやっているときって、ワクワクしている感じやピュアなエネルギーが、画面越しでも伝わるじゃないですか。それを受け取ってもらえることもうれしいし、私が好きなことを力いっぱいやっている姿を見てくださる人も楽しんでくれたら、うれしいですね。

 まずは、心から楽しいと思えるもの、愛しいと思えるもの、頑張りたいと思えるものにちゃんと出会うこと。そして、それにしっかり向き合って取り込んでいくこと。誰に何を言われようが、それを大切にすること。これが、充実した30代を過ごすために必要なことだと。

──言葉のはしばしに“インフルエンサー”としての強い自覚を感じます。時には“炎上”もありましたが。

「え! すごいことになってる!」とあとから気づいてびっくりすることが多いんです。当然、自分で意図して仕掛けたものではないので。ただ、何度か経験してみて、炎上にもいくつか種類があるのかなと、分析して対応するようになりましたね。

小学5年生での出来事

 ひとつは、私のいたらなさから、人に勘違いをさせてしまったり、嫌な思いをさせてしまったりしたとき。これは、もう本当に、指摘してもらって気づけることもあるので、きちんと説明をするなり、素直にごめんなさいということを伝えるなり、リアルな発信をしてくことが大事だと。SNSの場合、これもひとつのコミュニケーションだと思って前向きにとらえるようにしています。

 もうひとつは、私が何をどうしたって、止められないタイプのもの。例えば、私の国籍や育ちのこと、あと容姿のこととか、そういう変えられない部分を責められてしまった場合、どう対応したところでわかってもらえないし、相手の意見が変わるとも思えない。そういう時はしょうがないなと思って受け流すようにしています。

 あと、ときどき一種のキャンペーンというか、ある方向性に意見を誘導する目的で、私を叩くことが使われているんじゃないかと感じることも……あまり過度に反応しないようにしていますが。だから、炎上っぽいことが起きたときには、「私に対して、誰が、何を、どんな根拠で言っているのか?」を冷静に見極めて対応することが大切かなと。

 でも、そんなふうに理不尽に叩かれたりするのは、決して気持ちのいいものではない。私も人間なので、傷つきますし。全然“慣れ“とかはないし、受け流すようにしているとはいえ、落ち込みます。そういうときは、近くにいる人たちに支えてもらったり、なるべく悪い状況を早く忘れて幸せな気分になれることを努めてするようにしていますね。

「コズミックフロント」『地球科学者の先駆け 猿橋勝子』(NHKBSプレミアム・BS4K 12/16(木)22:00〜放送)NHK提供 NHKコズミックフロントHP:https://www.nhk.jp/p/cosmic/ts/WXVJVPGLNZ/

──先月、NHKのEテレで放送された『ハロー!生理 世界で聞いた5つのストーリー』では、司会をつとめつつ、自身の初潮体験も赤裸々に語っていて。

 女性に生理があること自体、全然、隠すようなことじゃないですよね? あの番組は、世界各地の生理にまつわる本音トークを紹介するというものだったのですが、日本でも気軽に「私、今日生理なんだ〜」って言えるようになったらいいのに! と。
その一歩として、というほどのものではないですけど、私自身の体験をお話ししたんです。

 私に初めて生理が来たのは、たしか小学5年生の夏休みのことでした。おばあちゃんの家に遊びにいっていたときで、なんとなく変な感じがしてトイレに駆け込んだらパンツが真っ赤っかになっていて、もうびっくり。自分に何が起きているのかわからなかったんですよね。

 でも、おばあちゃんは大喜びで。「女になったのね、おめでとう! 今日は赤飯だ!」って(笑)。でも食卓でお赤飯を食べながら、家族の男性たちにはその話はしないんです。なんだか暗黙の了解みたいな感じ。こんな経験をしている女性、けっこういるんじゃないかなあ。

 そういう自身の体験もあったので、私も、「男の人には生理の話はしないもの」「してもわかってもらえないだろう」って、思い込んでいましたね。でも、やっぱり、それじゃよくないなって。男性が持ちがちな、生理についてのいろんな誤解や勘違いも、よく知らないから起きるものですから。

「新しいチャレンジを見てほしい」

 私がテレビで初潮体験を話したということも、なんとなくタブーな話題という扱いになるんじゃなく「全然恥ずかしいことじゃないんだ」というメッセージになって、多くの女性たちにとってプラスになってくれることを願っています。

──12月16日には同じNHKの「コズミックフロント」『地球科学者の先駆け 猿橋勝子』の再現ドラマに出演されますね。

 猿橋勝子さんは、本当に偉大でかっこいい女性! すごく共感できるし、私が理想とする生き方をした人なんです。彼女を知ることができて本当によかったし、ぜひ、皆さんにも知ってほしい方です。

 猿橋さんが科学者としての道を歩み始めたのは、第二次世界大戦の真っ最中。だから、周りは軍国主義一色で、特に科学研究といえば、“お国のためになる”ものが強く推奨されていた時代でした。だけど、猿橋さんは「私は天気の研究をする」って、自分の興味がある天気の研究を諦めない。

「コズミックフロント」『地球科学者の先駆け 猿橋勝子』(NHKBSプレミアム・BS4K 12/16(木)22:00〜放送)NHK提供 NHKコズミックフロントHP:https://www.nhk.jp/p/cosmic/ts/WXVJVPGLNZ/

 あの時代からすると、また、当時の女性が置かれていた立場や環境を考え合わせると、ものすごいことですよね。結果として彼女の研究は、のちに地球科学の分野で世界的な貢献を果たすことになるのですが、当時の猿橋さんの姿勢や決して周りに流されない強い意志に惹かれましたね。

 やっぱり、生きていると人って何かと流されてしまいがち。テレビやSNS、その他のメディア、いろいろな情報がある中、気がつくと自分自身以外の誰かの意見に考えを支配されそうになることだって、誰しも体験したことがあると思うんです。でも、情報は情報として受け入れつつも、自分は本当にそれに賛成なのか? 自分はそれについてどう思うのか? それを考えていくことって、とても大切だなと思うし、私もそうありたい。

──この番組で、“ダンス”にも挑戦されたとか?

 そう! 科学番組で猿橋さんをやるにあたって、ダンスの要素はどこに必要なんだろう?と最初はちょっと戸惑ったんですが(笑)。研究への情熱や葛藤、また天気、雨、海水など、いろいろな要素をダンスで表現していくというのは、面白いアプローチだなと。大好きな“アート”にもつながるのですごく刺激的な体験でした。

 私自身は、こういうコンテンポラリーダンスは今までやったことがなかったので、独特な間の取り方、ステップ、動きなどにちょっと苦戦もしましたけど、最終的には心から没頭して踊ることができました。指導してくださったダンサーの森山開次さんも、「気持ちを大切に踊ってほしい」と言ってくださったので、それはしっかり込められたかなと。そういう意味でも私の新しいチャレンジ。ぜひ見ていただけたらと思います。


水原希子(みずはら・きこ)
1990年、アメリカ生まれ。2003年、ファッション誌『Seventeen』でモデル活動を開始。俳優としてのデビューは、2010年の映画『ノルウェイの森』。以来、テレビ、映画、CMに数多く出演、海外のハイブランドのアンバサダーも務める。さらにデザイナーとしても作品を発表、マルチに活躍中。日本語、英語、韓国語を話すトライリンガルで、インスタグラムのフォロワー数は627万人を超える。