ビートたけし

 TBS系の報道・情報番組『新・情報7daysニュースキャスター』(以下、Nキャス)に“フリージャーナリスト”として出演するビートたけしが、2022年3月をもって降板することが明らかになった。

 12月15日には同局系の『THE TIME,』MCの安住紳一郎アナも「“さみしいなぁ”という気持ち」と吐露。14年間にわたって番組を引っ張ってきた“相棒”の勇退だけに、安住アナ共々、視聴者からも“たけしロス”の声が上がるのかもしれない。

「“たけし降板”の一報を打ったのは、『NEWSポストセブン』が12月15日に配信した記事。たけしさん自らが局側との“話し合いの結果、区切りを”と明かし、その理由を“そろそろ負担のかかる仕事をセーブしないと”と身体を慮ってのことだと。

 当人は“ピンピンしている”とはいえ74歳の高齢者なわけで、深夜に及ぶ生放送はさすがに体力的に不安を感じたのでしょう」(スポーツ紙芸能デスク)

 一連の流れから潔く身を引いたように見えるたけしだが、一方で翌16日発売の『週刊新潮』が報じたのが《お払い箱の舞台裏》という記事。何でも“年間2億円ほどかかるギャラ”がネックとなり、さらに同局が重要視する『ファミリーコア層』の視聴者からは“たけしは外れている”と判断。つまりは“降ろされた”のだという。

 そして同誌がTBSとたけしサイドに事実確認に動いたところ、翌日に件のポストセブンによる“告白”記事が配信されたとある。たけしとしては降板騒動を週刊誌に先に抜かれるよりも、ジャーナリストとして自らが“真実”を明かしたかった、といったところか。

“滑舌の悪さ”を指摘されていた

 降板理由はともあれ、大きな柱を失ったことで番組のリニューアルも図られるであろう。「少々ホッとしたところもあるのでは?」とは番組制作会社ディレクター。

「ここ数年の間、番組内でのたけしさんの発言が“聞き取りづらい”といった滑舌の悪さを指摘する声が、主にネット上で散見されるようになりました。特に政治関連の話題になると、熱を帯びてか捲し立るので余計に何をしゃべっているのか、と。

 年齢のせいなのか、それとも体型がふくよかになったからか……。小気味よく舌鋒鋭くニュースを斬るのが持ち味であり役割だったのが、たけしさんが話す際にはボリュームを上げて聞き耳を立てないといけなくなった。

 そういった視聴者の声は漏れ聞こえてきますからね。でも、大御所である、しかも番組の顔であるたけしさんを前にして“滑舌良くして”と言えるわけなく、スタッフも頭を悩ませていたと聞きます」

 テレビ局にとっても、SNSをはじめとしたネットツールは無視できない存在となり、ネット上の声を拾ったり、また意見を番組作りの参考にもしている。Nキャスの公式ツイッターにも、多くの“リプライ”が寄せられているのだ。

 それこそ、たけしも自分に対する視聴者の“声”を目にしていたのかもしれないーー。

「昔から口にしていたのが、“お客さんに求められなくなったら終わり”という美学」とはベテラン放送作家。人気芸人として長らく芸能界で主役を張りながらも、たけしは常に自身のあるべき“引き際”を考えていたのだという。

「例えば、1981年にスタートした『ビートたけしのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)。たけしさんを語るには外せない“生き字引”のような番組でしたが、惜しまれながらも約10年で幕を閉じました。

 高田(文夫)先生にもよく相談されたみたいですが、終盤は“自分の考えをうまく伝えられなくなってきた”と。“北野武”として監督活動にのめり込んでいた時期だけに、ラジオでスイッチを切り替えることが難しくなっていたのかもしれません」(同・放送作家)

お客に愛想を尽かされる前に

 また、“引き際”へのこだわりはたけしの本職である漫才にも見てとれる。

 ご存知、ビートきよしと組む漫才コンビ『ツービート』。浅草フランス座からスタートして瞬く間に売れっ子になる2人だが、人気を支えたのがたけしによる軽快なマシンガントーク。しかし、1980年代になるとたけしはテレビを主戦場とし、自ずとコンビで舞台に立つことは少なくなった。

「それでも、たけしさんの原点は“ツービート”なわけで、たびたび“復活”させてはきよし師匠と掛け合いを見せてきました。でも、その久方ぶりの漫才を披露したことで、昔のようにしゃべれなくなっていたこと。そしてアドリブがうまく回せなくなっていたことを実感したと言います。

 久々のコンビ芸だけにその場では笑いをとれたとしても、このまま続けていてはいずれお客さんに愛想を尽かされる。漫才師として求められなくなる前に、舞台から降りることを選んだのだと思います」(同・放送作家)

 つまりはNキャス降板も、生放送で視聴者が求める“しゃべり”ができなくなる前に、自ら降りる“美学”を貫いたということか。とはいえ、引退するわけではない。ポストセブンの記事では、

 《やりたいことはまだまだ残っている。映画だったり、小説だったり、自分が本当にやりたいことにきちんと時間と精力を注いでいかないと、きっと後悔する(略)これからは時間ができるぶん、もっと創作活動に力を入れられる。みんなをアッと驚かせるようなことをまだまだやっていくつもりなんで、引き続きよろしくね》

 と、今後は“しゃべり手”ではなく“作り手”に重きを置くことを明かしていたたけし。

「まだまだお客さんが求める作品を作る自信があるということでしょうし、もちろん、Nキャスを降板するだけで他のレギュラー番組は引き続き出演します。でも……、根っからのしゃべり師ですからね。例えばNキャスで特番が組まれた際には、“呼んだ?”とばかりにひょっこり顔を出すんじゃないですか(笑)」(同・放送作家)

 引退はまだまだ先になりそうだ。