アドリブ封印で挑む頑固おやじ役の「吉田鋼太郎」

 軟併せ持った芝居巧者としてさまざまな作品で存在感を放つ吉田が、主演するコメディーホームドラマ『おいハンサム‼』(1月8日スタート、東海テレビ・フジテレビ系土曜夜11時40分~)で頑固おやじを演じる。

吉田鋼太郎も共感した父親イメージ

「ホームドラマといえば中高生のころに見ていた頑固おやじにみんなが手を焼く『寺内貫太郎一家』を思い出します。今回も無口だけど行動に娘たちへの思いと愛を伝える気持ちがあふれている昭和のお父さん像が全編に流れています。

 令和にあえて昭和のホームドラマというコンセプトもおもしろいと思います」

 主人公の伊藤源太郎は何かと融通が利かない父親だが、男を見る目のない3人の娘が心配でならない。

 父から娘への情愛に思い浮かべたのは、ドラマ化もされた向田邦子の名作エッセイ『父の詫び状』。傍若無人な父が、酔っぱらって家に連れてきた部下たちの粗相の後始末を娘にさせてしまったことを手紙で詫びる。

「娘に“ありがとう”“ごめんなさい”を面と向かっては言えないけど、別の手段で伝えようとしている姿は素敵だと思います。自分の祖父や父も同じだったので、思いを伝えられないシャイな姿というのは父親のイメージです。

 源太郎ももってまわった表現でしか娘たちに思いを伝えられない。泥酔して帰宅して前触れもなく娘に“愛している”と言いだすところは共感できます」

娘の相手は食事の仕方が美しい人を

吉田鋼太郎

 昨年3月に娘が誕生。自身は現代に応じた父親像を探る。

「伝えることはちゃんと言わないといけないと思っています。SNSで思いを吐露できる時代でもあり、言いたいことを言えないお父さんは少なくなっているのではないでしょうか。

 ドラマでは食事も重要な要素になっていて、私自身は食事の仕方、食べ方が美しい人は信じられます。まずは自分の娘にちゃんとした食事の仕方を教えて、それを素敵だなと思ってくれる男性が相手ならいいのではないかと思います」

吉田鋼太郎

「おっさんずラブ」がターニングポイント

 伊藤理佐原作の人気コミックをドラマ化。脚本・演出を担当する山口雅俊は『ナニワ金融道』『きらきらひかる』『闇金ウシジマくん』『新しい王様』シリーズなどの話題作を手がけている。

「天才といわれていて、こだわりが強い方。台本も抽象的な描写が多い。ト書き(セリフ以外の説明)に“何かしらの会話が行われる”とあったときはセリフを書いてくれよと(笑)。撮影現場ではト書きとまったく違うことがありますが、逆にやる気が喚起されて、監督のサプライズに応えようと思います」

 シェークスピア劇など舞台だけなく数々の映像作品でも活躍し、キャリアを積んでいるが今回封印したことがある。

「これまでは監督、共演者の了解のもとアドリブを入れるのが好きでした。でも今回は、監督が繰り出すさまざまな演出、要求ひとつひとつをクリアするとシーンがおもしろくなっている実感があってアドリブはなしで演じています。

 今回アドリブをやめることで違う自分、新たな発見があるんじゃないかと思っていてターニングポイントになるかもしれないし、代表作にしたいと取り組んでいます」

 部下に恋する上司を演じた人気ドラマ『おっさんずラブ』もターニングポイントになった作品として挙げる。

「どうやって演技したらいい、どうやって実感をつかめばいいのかと思った作品。束縛が多い役で、そこをどう打ち壊して、突破していくのかを常に考えながら演じていたことが、ひとつのスキルになりました」

 アドリブなしの令和の頑固おやじ。新境地となりそう。

吉田鋼太郎のハンサムな瞬間とイクメン

「娘はかわいいし、抱いていると自然に笑っている。いままで見せたことないような笑顔の自分はハンサムだと思います(笑)。娘が生まれてからはすべてが変わり、子ども中心になりました。仕事が終わったら一目散に帰り、お風呂は必ず僕が入れるようにしています。娘が成人する20年後といわず嫁にいくまで、あと30年は頑張って生きたいと思っています」

自身が演じる源太郎に共感するのは?

「年代が同じで、蕎麦屋やチェーン店じゃない居酒屋とか店のチョイスが似ている。目玉焼きの焼き方が半熟なのも似ています」

東海テレビ×日本映画放送共同製作連続ドラマ『おいハンサム!!』
(1月8日スタート、東海テレビ・フジテレビ系土曜夜11時40分~)“食べて、恋して、人は生きている……”恋と家族とゴハンをめぐるコメディーホームドラマ。吉田鋼太郎、木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈、高杉真宙、MEGUMI、浜野謙太ほか出演。