直撃取材を受ける三浦知良

プレーヤーとしては無理でしょうね。1シーズンで1点も取れないフォワード、あるいは出場試合数が少ない(ことは)責任問題じゃないですかね。雇っているほうのね

キングカズの価値と不利益

 “キング”がその王座から追われようとしている。いや、それは今に始まったことではなく、もっと以前からだったのかもしれない。

 “辛口”が評判のサッカー解説者・セルジオ越後は、自身のユーチューブチャンネルで冒頭のように語った。

ユーチューブでカズに苦言を呈した(セルジオ越後公式チャンネルより)

 プレーヤーとは、“キングカズ”こと三浦知良。真っ赤なタキシードに身を包み、Jリーグ初代MVPを受賞してから28年。その男の去就が今、揺れている。

リーグ通算139ゴールを誇るカズ選手ですが、54歳で迎えた昨季のリーグ戦出場はわずかに1試合。それも時間にして1分。最後に得点を決めたのは'17年までさかのぼります」(スポーツ紙記者)

 ここ数年は出場の機会は限られ、ベンチ入りすることも少なくなっていた。

「昨季終了後、'05年から長きにわたって所属している横浜FCからの移籍を初めて示唆しました」(同・スポーツ紙記者)

 カズ自身は移籍を考えたが、昨季の彼の所属チームである横浜FCは、引き続きの契約を打診。出場1分の選手が、なぜそれほどまでに求められているのか──。

「横浜FCの親会社は、『LEOC』という給食や企業の食堂などの運営を行う企業。そしてこのLEOCを傘下に持つのが『株式会社ONODERAホールディングス』。代表取締役会長は小野寺裕司氏。小野寺氏は横浜FCの運営会社の代表も兼務しています」(サッカーライター、以下同)

 この小野寺会長とカズの関係は長い。

小野寺会長のLEOCが初めてサッカー界に参入したのは'04年のこと。カズ選手がかつて在籍したヴェルディのユニフォームのスポンサーです。小野寺会長はカズ選手と同学年。

 かつてはサッカー少年で、日本代表やカズ選手をエースに据えて黄金時代を築いたヴェルディを見てきた。事業で成功した小野寺会長は、カズ選手が横浜FCに加入する直前の'05年6月に、第三者割当増資により横浜FCの筆頭株主となりました

 それから16年。LEOCは親会社であり、カズも所属し続けている。

カズ選手の獲得は小野寺会長の強い意向があってのものといわれています。そして“カズ効果”は移籍直後から表れた。

 カズ選手加入前、横浜FCの試合を取材に来る記者は2〜3人程度。カズ選手がベンチ入りすると、報道陣は50人を超えた。観客もそれまでの倍ほどの数が集まるようになったのです

キングカズがもたらす広告効果

 カズが試合に出れば、ゴールを決めれば、ダンスを踊れば……そのたびにメディアに取り上げられる。それはシーズンオフも同様で、年末年始に行うトレーニングキャンプは密着され、毎年2月に訪れる彼の誕生日には、記者たちからケーキが贈られ、当然その模様は報道される。

たとえカズ選手が試合に出なくても、チームにとってその“効果”は大きい。一挙手一投足がニュースになり、“横浜FC”の名前がメディアに載る。最近はベンチ入りも少ないので、なかなか見ることは難しいですが、“カズが試合に出るなら”見たいという人は、横浜FCファン以外にも多い。

 また、試合に出なくてもチームでもトップの人気選手であり、横浜FCの試合では、ヴェルディや代表での活躍を知らないような小さな子どもが“11番KAZU”のユニフォームを着ているのをよく目にします

 現状、カズのJリーグ最後のゴールを決めた試合を観戦したサッカーファンは次のようにカズを語る。

「横浜FCのファンではないのですが、友人とカズを見に行こうとスタジアムに行きました。まさかゴールを決めてカズダンスが見れるとは。

 でも、ゴール以上に心を奪われたのは、フォワードとして最前線にいる50歳のカズさんが、守備になったら自陣ゴール前まで戻って一生懸命守備をしている姿。

 自分も自分の仕事を頑張らなきゃって思いました(笑)。現代サッカーはフォワードも守備をするのが当然ではありますが、それでもやっぱりすごいなって」

スポンサー企業のHPに掲げられたメッセージ。カズの定年ははたして

 一方でセルジオ越後も言うように批判やデメリットも。

まず前提として試合に出場していなければ、選手としての価値はないという考え方。カズ選手の練習への取り組みやこれまでの経験は若い選手に大きな影響を与えるともいえますが、やはり選手は試合に出てこそ。

 そしてベンチ入りすればその分ベンチをはずれる選手が1人いる。監督が“カズを使おうと考えた”のであればそれが答えですが、昨季出場1分の選手に、どれだけ期待してベンチに入れたかは疑問。選手からの文句があってもおかしくない」(前出・サッカーライター、以下同)

 “ドーハの悲劇”で、ワールドカップ出場を逃したカズ。

'12年に特例的な扱いでフットサルのワールドカップ日本代表に選ばれ、念願の出場を果たしました。しかしそれまでフットサル選手としてプレーしていなかった選手の代表入りには疑問の声もあり、事実、代表経験もあるフットサル選手は“カズでひと枠なくなるじゃん”とボヤいていました

 カズの移籍先はJ1から数えて4部にあたるJFLの鈴鹿ポイントゲッターズが最有力。「ほぼ100%合意」とカズ自身も話している。監督は三浦泰年。カズの兄だ。しかし、このクラブは昨年末から大きく揺れている。

クラブの元執行役員がツイッターで内部告発しました。上層部より八百長として“試合に負けろ”という指示があったとしています。

 クラブは不正行為はなかったと声明を発表しましたが、事実の隠蔽が目的か、一度、その元執行役員に2500万円を支払っているなど、真相はいまだわからず泥沼化しています

 '22年、カズはどのクラブでプレーするのか。もう1度でいいから、あのダンスを見たいファンは多いはずだ。

カズにオファーを出しているクラブの元執行役員による告発