水野真紀

 1月中旬の昼下がり。冷たい風が大寒の到来を感じさせる中、都内の幼稚園から1人の女性が自転車をこいで出てきた。軽快なスピードで住宅街を走り抜けていく。すれ違う人たちも、彼女が水野真紀だということには気がついていないようだった─。

「水野さんは'18年に聖心女子大学現代教養学部教育学科に編入学しました。3年間の学生生活を経て、'21年3月に卒業。現在は週に1回のペースで、都内の幼稚園に保育参加しているんです」(スポーツ紙記者)

 水野の働きぶりは、保護者の間でも評判になっているという。

「クラス担任ではありませんが、子どもたちと園庭で遊んだり、園内の掃除をしたりと、積極的にお手伝いをされています。昨年秋に開催された運動会でも拝見しました。胸には『ごとうだゆき』という、すべてひらがなの名札をつけていて、子どもたちからは“ゆき先生”と呼ばれています。いつもにこやかにふるまっているから、親しみやすいみたいですね」(幼稚園に子どもを通わせる保護者)

自分のやりたいことも大事

自転車に乗り、幼稚園からの帰路につく水野真紀(2022年)

 水野は、'87年の第2回『東宝シンデレラ』で、審査員特別賞を受賞し、女優としてデビュー。現在ではバラエティーでも活躍している。なぜ人生の折り返しともいえる50歳を過ぎて、幼稚園教諭の道を目指したのだろう。

「水野さんは勉強好きみたいです(笑)。'98年にはロンドンに3か月ほど短期留学したことがありました。'90年のNHK朝ドラ『凛凛と』で本格デビューし、'92年からはパナソニック電工のCMで、初代“きれいなおねえさん”を務めるなど、芸能活動は順調でしたが、自分のやりたいことも大事にしたかったようです」(前出・スポーツ紙記者)

 留学先では趣味であるお菓子作りを学び、帰国後に服部栄養専門学校に入学。'02年には調理師免許を取得した。

「お菓子だけでなく料理や食全般についても知識が豊富。MBSのグルメ情報番組『水野真紀の魔法のレストラン』では、司会を務めています。今年の4月に21周年を迎える長寿番組ですよ」(テレビ誌ライター)

3歳児を担当した水野は

 仕事を続けながらの大学通いはなかなか大変だったようだ。'21年4月のブログでは、

《満員電車に揺られての登校、昼休みは図書館で突っ伏して寝て、帰宅すれば家の仕事。30年振りの第二外国語、ほぼ40年振りに向き合うピアノ、そして覚えてもすぐに忘れるお年頃。週六日登校の時期もあり、なかなかハードな日々でした》

 と、真剣に学業に取り組んだ日々を振り返っていた。幼児教育には、以前から関心を持っていたらしい。

仲のいい友人から、“子どもには教育しか残せない”と言われたことが、すごく心に残っていると話していましたね。表現者としての自分を顧みて、自分が受けた教育環境が大きく影響していることを感じ、教育が人を成長させる意義を深く考えるようになったそうです」(水野の知人)

 水野が編入したのは、教育学専攻。総合的に教育について学んでいたが、免許取得ができる『幼稚園教員特別プログラム』にも参加する。

最初は自分を見つめ直すための勉強だったんですが、幼児教育に関連する講義を受けるうちに、自分も資格を取ろうと考えたそうです。誰かの役に立ちたいという思いが、だんだん強くなっていったんですね」(同・知人)

 プログラム参加後、免許取得のために必要な4週間の教育実習に臨むこととなる。

水野さんは3歳児の担当をされていました。『やさいなんてだいっきらい』や『おおきなかぶ』など、よく紙芝居で読み聞かせをしてくださったと聞いています。最初は子どもたちの正直な反応に戸惑うこともあったようですが、一緒に過ごす時間が増えるにつれ、すくすくと成長する園児たちの吸収の早さに驚いていたみたいですよ」(前出・幼稚園に子どもを通わせる保護者)

水野真紀は女優をやめるのか

 昨年の春に大学を卒業した水野は、実習した園に戻り、保育参加を始めたのだった。

《園児さんと一緒のお弁当タイムではお弁当の中身を突っ込まれることがあるから油断出来ませんの》

《(エプロンの)結び目がないので背後から園児に襲われても(笑)着崩れることがありません》

水野の仕事着であるというエプロン。子供たちに大人気なのだという(インスタグラムより)

 などと、日ごろからSNSで園児との交流を話す様子からは、水野が日々見つけた“小さな幸せ”を大切にしていることが伝わってくる。このまま本格的に幼稚園教諭として第2の人生を歩むのだろうか。真相を確かめるべく、幼稚園から帰宅してきた水野を直撃した。グレーのパーカに黒のパンツ姿と、ごく普通の幼稚園教諭に見える。

─今後は、幼稚園の先生を活動の中心にされるのですか?

…………

 いくつか質問しても、無言で会釈を繰り返す水野。しかし、保育活動は楽しいですか、と記者が尋ねると、

もちろん楽しいですよ!

 と弾んだ声が。マスク越しでも、その表情と声色から幸せな日々を過ごしていることが伝わってきた。

 後日、水野の所属事務所にも同様の問い合わせをしたところ、

今のところ、女優を引退して幼稚園教諭になるという予定はございません。教育実習でお世話になった園への恩返しや、自分にできることをしたいという気持ちで、お手伝いに伺っていると聞いています

 との回答だった。

 昨年1月の『都私幼連だより』のインタビューでは、

《結局、演じる役も含めて、「人間」に対しての興味が尽きないのでしょうね。教育の場を通じて出会った人や学びが自分に反映され、役や仕事等、なんらかの形で伝われば嬉しいです》

 と語っていた水野。彼女の教育への思いは、きっと本物なのだろう。