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 男も女も、全国で未婚化が止まらない。50歳までに1度も結婚していない「生涯未婚率」は過去最高に。なかでも目を引くのが高知県。国の最新調査で、東京を抜いて女性でトップに躍り出たのだ!格差から寿命にまで影響する「おひとり様社会」の知られざるカラクリとは―。

『生涯未婚率』は男女ともに過去最高

 一生結婚しない「おひとり様」が増加の一途をたどっている。最新の2020年国勢調査によると、50歳までに1度も結婚していない人の割合を表す『生涯未婚率』は男女ともに過去最高を更新。1990年以降、うなぎ上りの状況だ。

 独身研究家でコラムニストの荒川和久さんが指摘する。

※小数点第2位以下は切り捨て。配偶関係・年齢不詳を除いて算出。2020年国勢調査より 独身研究家・荒川和久さん作成

2020年の生涯未婚率は男性25・7%、女性16・4%でした。つまり男性の4人に1人、女性の6人に1人が一生独身になるということ。

 
50歳を超えてから結婚する人ももちろんいますが、未婚人口の0・1%と非常に少ない。そのため、50歳の時点で結婚していないなら一生独身とみなしているのです」

 前述の国勢調査をもとに、荒川さんに都道府県別の生涯未婚率も算出してもらった。

女性の場合、生涯未婚率は1位の高知県をはじめ西日本で高く東日本は低い“西高東低”の傾向であるのに対し、男性は真逆。岩手県を筆頭に東北勢が上位を占める結果になっています。

 なぜ女性より男性の未婚率のほうが高いかというと、未婚人口は男性のほうが多いから。ただでさえ男が余っているうえに、岩手などの東北地方では若い女性が東京へ出ていってしまうため結婚難に陥るわけです」(荒川さん、以下同)

 未婚化と聞くと、つい「若者の恋愛離れ」「草食化」といった理由を連想しがち。しかし荒川さんによれば、家庭を持つのが当たり前とされていた昭和の時代でさえ、誰もが結婚に夢を抱いていたわけではないという。

※小数点第2位以下は切り捨て。配偶関係・年齢不詳を除いて算出。2020年国勢調査より 独身研究家・荒川和久さん作成

「40年前でも、結婚に前向きな人たちは男女ともに50%程度、実は半数ぐらいしかいないという調査報告があります。それでも多くの人たちが結婚できていたのは、お見合いや紹介など、地域や会社の中に出会いを提供してくれるお膳立てシステムがあったから。

 
ところが、お見合い結婚は1965年に恋愛結婚と逆転し、いまや全体の5~6%にまで減少。

 マッチングアプリという新たな出会いのツールも登場していますが、東北などの地方では若い女性が都市部へ流出してしまい、街の中にいません。そもそも出会えないのです

 荒川さんは、未婚率の上昇は今後も続くだろうと予測。

'40年に独身人口が47%に達してピークを迎え、人口の約半分が独身という社会が到来します。見合いもお膳立ても機能しない今、婚姻率を上げたければ、地域でも職場でもない第3のコミュニティが必要。それもなるべく同年代の社会人同士が知り合える学校のようなところが理想的ですが、整備されていません」

 おひとり様が増えると、どういった影響が表れるのか?

前回調査1位の東京を抜いた高知県

「興味深いデータがあります。独身男性は結婚している男性に比べ、寿命が短いことがわかったのです。いちばん短命なのが未婚男性、次に離婚した男性、それから配偶者のいる男性。最も長生きなのが当然ですが、配偶者と死別した男性という結果でした。

 
ひとり暮らしの独身男性は外食が多く、自炊や運動の習慣がない人も結構います。糖尿病や高血圧といった生活習慣病にかかりやすくなるためでしょう。

 反対に女性の場合、配偶者のいる女性が最も短命。続いて離婚した女性、未婚女性、死別女性と続きます。実は、女性のほうが孤独への耐性が強く変化への適応力もあるからではないかとみています」

 生涯未婚率ランキングでは、'15年の前回調査で1位だった東京を抜いて高知県が女性のトップとなり、衝撃を与えた。

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 その理由について、未婚化をめぐる問題に詳しい『ニッセイ基礎研究所』の人口動態シニアリサーチャー、天野馨南子さんはこう分析する。

「結婚が集中する年齢は20代後半。そうした若い女性の多くが故郷を離れ、東京などの都市部へ移り住んでいます。

 実際、高知県ではコロナ前の10年間で男性の1・5倍の女性が県外へ流出超過しているのです。適齢期の女性がいなくなるわけですから、当然、新規の結婚が発生しづらくなります。

 加えて高知の場合、離婚率も全国トップ。一家の長男がいちばん偉くて、女性は家事や育児をこなしつつ家計補助的に働けばいいという“長男文化”も根強く残っています。結婚に夢を持てなくても不思議ではありません

 若い女性が都会へ流出するのは、必ずしも華やかな暮らしに憧れているからではない。地元が好きで、子ども好きで、結婚願望も強い。それでも故郷を離れざるをえない事情がある。

「生まれ故郷を出ていった女性たち2300人にアンケートを行ったところ、転出理由は“やりがいのある仕事がない” “職種の幅が狭い”との回答が圧倒的でした。

 ある女性は、児童養護施設で働きたいけれど、地元には適当な大学がないので仕方なく県外に進学、そのまま就職したと話していました。

 人と接するのが好きで営業職に就きたかったのに、地元企業では“男の仕事だ。女性のメーカー営業職はいない”と言われ、やはり他県で就職した女性もいます。地元で働き、家庭を築く夢を描いても、それがかなわない仕事の実情があるのです」(天野さん、以下同)

 女性活躍が絵に描いた餅である限り、未婚率は上がり、故郷を捨てる女性も増え続けることだろう。その先に待ち受けるのは人口減少という名の「地方消滅コース」だ。

「未婚率上昇は少子化の主要因です。少子化で人口が減るにつれ、高齢者の支え手は減り、おひとり様は激増します。女性のほうが長生きですから、自分で稼いで老後を乗り切らなくてはなりません。国や自治体は表面的な婚活支援にばかり力を注がないで、根本的な原因究明と対策も講じるべきです」

荒川和久さん ●独身研究家、コラムニスト。ソロ社会とソロ文化および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、多数のメディアで活躍。