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 女優やモデルなど、きれいな人たちが冷え対策として日々の生活に取り入れているイメージのある“白湯”。しかし「白湯をただ飲めばきれいになる」というわけではありません! さまざまな症状やトラブルを撃退する白湯の正しい、そして美味しいとり方を、東洋医学をベースに診療を行う内科医の石原新菜先生に伺いました。

必要な水分量は人によって違う

 白湯がいいというので、毎日飲んでいるけれど、むくんで仕方ない、たくさん水分をとっているはずなのに、潤うどころかますますカサカサで冷えもツラい……そんな方、いらっしゃいませんか?

 石原先生は「白湯とは人肌から約50度くらいのお湯のことですが、たくさん飲めばいい、というわけではないんですよ」と指摘します。

「水を飲んだら飲んだ分、身体の外へ全部出ていくと思っていませんか? 実は水分をとりすぎると、身体のいろんなところにたまってしまうんです。漢方では水がたまることをさまざまな不調が出る『水毒』と呼びます。人間は水を飲まないと生きていけませんが、植物に水をやりすぎると根腐れするように、水も毒になる。足りないのもダメですが、飲みすぎもよくないんですよ」(以下、石原先生)

 女優やモデルが白湯を飲んで健康状態を維持しているのは、運動や半身浴でたくさん汗をかいているから。日々家の中で過ごしている人やデスクワークが多い人は大量の水分をとってはいけないのです。

白湯

1日に必要な水分量は人によって違います。体温や代謝、運動量は人それぞれですし、その日の気温や湿度、季節でも変わる。また汗や尿として体外に出してから水分をとるのはOKですが、どうしても年齢とともに出にくくなり、不調につながることが多いですね。また現代医学は腹痛や頭痛といった身体のパーツで診察しますが、漢方では身体全体を診ます。

 特に『気・血・水』の3つがバランスよく体内を巡っていることが大切で、それが『健康』な状態です。なので1つでも滞ると、ほかに影響を及ぼします。血は血流のことで、身体の中の臓器が健康でいられるのは、血液が酸素や水、栄養などを運び、いらなくなった老廃物を排出する=代謝するから。つまり水を飲んだだけではダメで、身体が吸収し、血流に乗って身体のすみずみまで届かないといけない。気はメンタルのことで、不眠や気分が沈んだ状態。水も含め、どこが滞ってもダメなんです

いつ、どのタイミングで白湯を飲めばいい?

「日本人全体の体温が昔に比べて低くなっているのも冷えの原因」と石原先生。

「冷えとは平熱が36•5度に満たない状態のことで、女性が8割、筋肉量の多い男性でも6割、子どもは5割が冷え性というデータがあります。冷えが増えたのは水分のとりすぎに加え、食生活の変化で身体を冷やす食べ物をとるようになったこと、運動不足による筋肉量の低下、湯船につからずシャワーだけになったこと、そしてストレスの多い生活が原因です」

 身体が冷えてしまうと太りやすく、ダイエットしてもなかなかやせない、便秘や下痢といった腸トラブル、頭痛に肩こり、あらゆる肌トラブル(吹き出物、ニキビ、敏感肌、乾燥肌、オイリー肌、シワ、たるみ)、生理痛や生理不順、うつ、不眠といったメンタルの悪化など、もう悪いことだらけ! その予防のため、白湯がオススメとのこと。ではどう飲むのがいいでしょう?

朝は体温が下がっているので、温かい白湯を飲むのは効果的です。朝お湯を沸かすのが面倒だな、という方は前の晩に沸かしてポットに入れておけば、忙しい朝でも手軽にいただけます。また身体を温めて、水分をとったほうが寝つきもよくなるので寝る前もオススメですね。

 夜トイレに行きたくなるから飲まない、という方がいますが、のどが潤う程度で構いませんので、できれば飲んだほうがいいです。あとはのどが渇いたタイミングで飲む。これを繰り返して、自分に合った水分量を知ってください。『1日で必ずこの量を飲む』とルールにすることは、絶対にやめてくださいね!」

 のどの渇きに気づきにくい高齢者は「◯時になったら飲む」と決めて飲むようにすると効果的だそうです。

より効果的な白湯の飲み方

「でも正直なところ、白湯ってぬるくて、美味しくないですよね?(笑) また飲んだときは身体も温まって、水分をとることができますが、いくら温かいといっても、いずれは身体の中で温度が下がり、身体を冷やしてしまう原因になります。飲み方を工夫することで美味しく、しかも冷えを撃退する方法があるんです

 それが石原先生がオススメする、白湯への「ちょい足しレシピ」。しょうがやはちみつ、味噌、葛などを足すことで、いつまでも身体がポカポカする効果があるそうです!

 ではどのくらい継続すれば白湯の効果は出てくるのでしょう?

「クリニックに来ている方だと、早いと2週間で体温が0•5度上がったり、ちょっとした不定愁訴や不調は1か月もするとよくなってきます。体温が1度違うと、代謝が12~13%違ってくるんですよ。でも難しく考えず、水分に加えて食事に気をつけて、お風呂にもつかること。運動はちょっとハードルが高いですが、散歩したり、家でスクワットや片足立ちなどでもOKです。それから腹巻きをして、身体を冷やさないのもオススメ」

 漢方では「調子が悪いけれど、休むほどではない」という状態を“未病”といい、それが悪くなると病気になってしまう分かれ目なのだそう。

「未病の段階できちんと気づき、養生しましょう。そのために、毎日美味しく白湯をいただいてくださいね」

ちょい足しレシピ

■しょうが
 私のいちばんのオススメはしょうがです。生のしょうがには「ジンゲロール」という成分があり、血管を拡張させ、身体の表面を温めます。また熱を加えると「ショウガオール」に変化し、内臓脂肪を燃やし、身体の中から温めてくれます。

 ジンゲロールは皮の近くに多く含まれているので、表面をしっかり洗って皮ごとすり下ろすとより効果的。スプーン1~2杯ほどを白湯に入れて飲んでください。市販の乾燥粉末やチューブでもいいですよ。またすり下ろしたものを小分けにパックして冷凍保存もOK。私はティーバッグの紅茶に、すり下ろししょうがをたっぷり入れた「しょうが紅茶」を愛飲しています!

■はちみつ・黒砂糖
 甘さがあると、白湯はさらに飲みやすくなります。オススメははちみつ。混ぜものが入っていない、純度の高いものを選んでくださいね。またビタミンやミネラル、食物繊維が含まれた黒砂糖もオススメです。

■梅干し
 酸っぱさも白湯には合います。梅干しに含まれるクエン酸は、唾液分泌量を多くして、胃の働きを活発にしてくれます

■レモン
 ビタミンC、クエン酸が含まれるレモンは疲労回復や胃腸の働きを助け、美肌にも効果がある女性の強い味方。はちみつを足してどうぞ。

■大葉・ミント
 リラックス効果のある大葉やミントもいいですね。大葉はちょっとだけあぶって、細かくして白湯に入れて飲むとより香りが楽しめます。ミントもちぎって入れると、スーッとして鎮静効果がありますよ。

■味噌・昆布
 発酵食品である味噌にはアミノ酸が含まれ、ミネラルやビタミンもたっぷり。実は味噌汁を飲んでも血圧は上がらないという研究結果もあるので、栄養面、健康面を考えたら「味噌汁は最強の白湯」といっても過言ではありません! 私も昼食は味噌汁を飲んでいます。だしに使われる昆布もビタミンやミネラルが豊富。昆布だけを白湯に入れ、ほんの少し塩を足すと、美味しい白湯のできあがりです。

■シナモン
 漢方で「桂皮」と呼ばれるシナモンは、血行促進、整腸作用、鎮痛効果あり。白湯にパッとかけてどうぞ。甘さをプラスしても美味しいですよ(香辛料なので、とりすぎにはご注意を!)。

■葛
 風邪のひき始めのお薬「葛根湯」にも使われる葛は、漢方薬でもあります。とろみがついて、ポカポカと温まります。消化吸収がよいので、食欲不振のときにも。

■ハーブ
 ローズヒップやカモミールなどのハーブティーもオススメです。ビタミンCやリラックス効果など、目的に合わせて選んでみてください。ただハーブのとりすぎは身体によくないので、体調不良の方や妊婦さんはお医者さんに相談してくださいね。

教えてくれた、東洋医学をベースに診療を行う内科医の石原新菜先生
教えてくれたのは……石原新菜(いしはら・にいな)
内科医。1980年長崎県生まれ。帝京大学医学部卒。イシハラクリニック副院長。さまざまな病気・症状に合わせた漢方医学、自然療法、食事療法による治療にあたっている。近著に『メタボ&むくみを撃退! 血圧、血糖値を下げたいなら発酵あずきとあずき茶をとりなさい』(WAVE出版)『お医者さんがすすめる不調を治す10倍ショウガの作り方』(アスコム)など。先祖は種子島の御典医。2児の母。

(取材・文/成田全)