2018年『第51回内閣総理大臣杯 日本プロスポーツ大賞授賞式典』での森保一監督('18年12月)

 

 サッカーワールドカップアジア最終予選。グループ2位の日本は、首位のサウジアラビアを相手に2-0の快勝。さらにグループ3位のオーストラリアがオマーンに引き分けた。

 予選突破に向けて、日本に追い風が吹いていると言える。しかし、日本とオーストラリアの勝ち点差は3。次戦の直接対決で敗れれば、予選突破に再度黄信号が灯る。

森保一監督の采配に批判的

 熱く、ユーモアを交え、初心者にもわかりやすく、そして多少のミスなら目をつぶり、過剰と言えるほど“肯定”してきた男すら、批判側に回ってしまう。そんな状況だった。

ベテランもいいけど、ベテランはベンチで見てて、なんかあったらという感じで……

 サッカー解説者・松木安太郎(64)がこのような発言をしたのは、1月27日に行われたサッカーワールドカップ・アジア最終予選の日本対中国戦のこと。

 彼は日本代表の先発メンバーが固定化されていること、そのやり玉に挙げられているベテランの長友佑都(35)、そしてそれを選出する森保一監督(53)の采配について批判と取れる解説をした。

 同じ試合で松木と共に解説を務めたサッカー元日本代表の内田篤人(33)も、なかなか追加点を奪えない代表チームに対し、松木と同じく“批判”解説を展開。

チームとして(戦い方が)はっきりしているのかな? ハーフタイムでそういう指示があったのかな?

僕はドイツでやってた時は、こういうゲームをしたらいろんな物が飛んできましたからね。ベンチ内や監督から

 森保批判は、試合に解説者として臨んだ者だけではない。

 サッカー元日本代表で、現在は解説者などを務める城彰二(46)も、この試合について自身のYouTubeチャンネルで「左サイドが全く機能してない」「監督の問題もある」などと苦言を呈した。

“森保批判”のハッシュタグ

 視点を解説者から一般人に移せば、中国戦の試合後、いやこれは試合前から盛んに行われていたことでもあるが、SNS上では、“森保批判”の文面とともに、以下のようなハッシュタグが踊った。

《#森保解任》
《#森保やめろ》

 サッカーの代表チームにおいて、どの国の代表であったとしても、最も価値があり、そして結果が求められるのが『ワールドカップ』。

 日本代表は同大会に6大会連続で出場中だ。これは'93年にプロリーグが発足した“サッカー後進国”にあって、奇跡と言っていい結果だろう。

 もちろんその時々で予選突破に苦戦したり、監督が更迭されたこともあったが、解説者やサッカーファンらから、ここまで批判が及んだことはなかったと言っていい。

 しかもそんな批判は代表選手となり得る“現役選手”からも及んでいるのだ。

 筑波大学卒業後の'20年に川崎フロンターレに入団。プロ入り1年目からベストイレブンに入り、その切れ味鋭いドリブルで、Jリーグではほぼ“無双”状態にあった三笘薫(24)。'21年に渡欧し、現在はベルギーのクラブに所属している。

 ケガのため今回の代表チームでは招集外となっている三笘が、批判が殺到した中国戦のタイミングに行っていたこと……。

中国戦の試合中、一般のツイッターアカウントによる“ポイチは古橋と三笘怪我でも使わないやろ”というツイートに“いいね”を押しています。“ポイチ”とは森保監督の選手時代からの愛称。古橋こと古橋亨梧選手(27)は現在、スコットランドのセルティックに所属しゴールを量産しています。

 しかし、三笘選手と同様に所属クラブでの活躍に反し、代表チームでは森保監督が起用することは多いとは言えず、なかなか活躍できずにいます。そのような状況にあっての三笘選手の“いいね”は、一般人のツイートへの“賛同”と取れる、いや取らざるを得ない行為と言えるでしょう」(サッカーライター、以下同)

 現役選手の森保批判は、三笘だけではない。

「頻繁に三笘選手と同様のことを行っているのが、鈴木優磨選手(25)。昨年までベルギーのクラブに所属していましたが、今シーズンより古巣の鹿島アントラーズに復帰しました。鈴木選手も中国戦の際、一般人の“森保もうクビでいいよ”というツイートに“いいね”しています

「てめーなに様だよ」と意味深ツイート

 鈴木は'20年にも《イライラする部分が好きじゃない? てめーなに様だよ》《だったら呼ぶんじゃねーよ》と意味深なツイートを連続投稿している。

《イライラする部分が好きじゃない? てめーなに様だよ》とツイートした鈴木優磨選手(Twitterより)

意味深なツイートに対し、“もしかして、森保監督???”というリプライが付き、それに“いいね”したため、森保監督への不満と受け取られました。

 ツイートの1週間後に発表された代表メンバーに鈴木選手の名前はありませんでした。ちなみに鈴木選手は、気持ちを全面に出したプレーが特徴で、それを“イライラしがちな選手”と捉えるサッカーファンは少なくありません。ただそれによってラフプレーが多くなるような選手ではなく、単純に気持ちが強いだけだと思いますが……」

 逆に森保監督は、試合前の国歌斉唱で涙目になるなど、鈴木と正反対の意味でメンタルが心配されることも多い。そんな森保監督が漏らしていたこと……。それは'18年の代表監督就任から程ないころ、都内のイタリアンレストランでのことだ。

「サッカー協会、代表チームの関係者たちと森保監督が来店しました。森保監督はルックス的に目立つようなタイプではありませんが、自分がサッカー好きなのですぐに気づきました。食事をしているなかでボソッと森保監督が“自分は長谷部までのつなぎだから”と言っていて……。当時はまだ今ほどに批判されていたわけじゃないので、そんなこと言わずに頑張って結果出してよと思いましたが……」(レストラン店員)

 長谷部とはもちろん日本代表の元キャプテン・長谷部誠(38)のことだ。ドイツの『フランクフルト』に所属し、1月18日に38歳を迎えた現在も日本人でありながらキャプテンを務め、現地では“鉄人”とも呼ばれている。

 現在の所属クラブとの契約は、今年の6月30日まで。出場機会の減少もあり、昨年3月のクラブとの契約更改時には“99.9%、この夏に引退するつもりだった”とも話しており、引退はそう遠くない未来と言える。

 '22年の今年はワールドカップ開催年。基本的に日本代表監督はワールドカップ終了後に交代となるケースが続いている。現状、長谷部に監督のライセンスはないが、果たして森保監督はその“つなぎ”となるのか……。